今日の夢日記#1

@anchor1no1

【読み切り】

───Aの生態はね、私も色々握っているが、あまり深くは関わりたくないね。───


おじさんはそう言って、自分で入れた熱いカフェラテをひとくち口にした。


おじさん:雨の日だった。カラスは肉がむき出しのたぬきの死骸に目を向けず、真っ直ぐ上を飛び去った。雨の日だったかというのもあるかもしれない。たまたまかね?そして死骸のちょうど真上で糞をしていたのをみたんじゃ。


私:(あのゲリラ豪雨の中、よく観察してるな。)


おじさん:次の日たぬきの死骸は消えた。記録的な豪雨だったからかね?どこかへ流されたのかもしれない。


おじさん:その狸はAとして蘇ったんじゃないかね?と思うくらい、見覚えのあるたぬき【A】はすごく人間を観察し、1度で物事を覚える。


私:ほんとによく観察されてますね。私ほんとに何も知らないんだなって思い知らされるな。。


おじさん:ある日居眠りした人間を見つけると…

目が一瞬で充血しながらものすごい速さで駆け寄ってくる。しかし周りの人の目を察してか、獲物とした人の意識を悟ってか、手前で立ち止まり、キョロキョロ見渡し、どこかへ走り去った。


おじさん:Aに気づかない人間に向かってあの突進はなんなんだ?まだその理由は知らない、考えたくないな。動物に詳しい身としては、あれは狩りの一環としか思えない。


おじさん:そして奇妙なことに、Aはまるで剥製にされたように、えぐれた背中の怪我が、継ぎ接ぎのように毛皮を覆いかぶせて隠してある。毛が再生したというよりは全く同じ素材を上から被せてあるようにみえたんじゃ。


おじさん:Aは奇妙だ。人に見つかると気味が悪がわれることもある。そのせいもあったじゃろうとは思う、わたしはAに凄い殺気を向けたことがあった。


私:珍しいですね、おじさんもそんな感情に駆られることあるんだ……?


おじさん:あぁ、次の瞬間仲間のイタチ?の巣に慌てて逃げおった。こっちだよ!と匿うようにイタチは目配せ、いや、何か鳴いていた。それ以降そのまわりを1度もうろつかなくなった。イタチと狸が顔を合わせて助け合うなんて、独自の進化を遂げることがあるかね?(この回想のとき、おじさんと思われる人は、普段とは似ても似つかないほど筋肉質な背中と腕をしていた。まるで別人のようだ。)

その後しらばらく苛立ったのを覚えておるよ。巣穴の近くでウロウロしながらやつらの首根っこをとっ捕まえてやろうと奮闘の時間を過ごしたが、結局二度とわしの前に現れることはなかった。


おじさん:ある昼、ボロボロに汚れたAが目を真っ赤にしながら、威嚇をするように顔をグルグルとしかめて、じりじりと私に歩み寄ってきた時が1度だけある。他の人の気配を察知するとまたどこかへ走り去った。(また、ということは何度か走り去ったことはある。怖い人間の気配に察知して去った。)(そしてAがそのとき察した気配はその筋肉質で怒っ早いトラウマのあの人だ。)


私:(あれ…?さっき二度と私の前に現れなかったって言ってたような…?聞き間違えか?)


恐らくAの器が限界を迎えていたのだろう。やつの身体が薄汚れてボロボロだったことと、何か関係があるのか?それともただ気が立ってただけなのか?


私:(この人…どこまでAのことを知ってるんだろう……?そしてたまに考えられないほど若々しくてアクティブな日があるんだな。。)


おじさん:次の日からAは消えた。私は死体も見つけることができなかった。とにかくこの島では動物の死骸は次の日の朝には綺麗に消える。

Aもまた例外ではなかったのかもしれない。


………………今日は、いい夕焼けだよ。


いきなり窓の時に顔をやって、おじさんはそう言った。


私「……?(まだ昼だけど、天気予報が今日はそうだと、言ってたのか?)」


おじさんは太陽を見つめながら、何か虚空を眺めているようでもあった。


おじさん:あのゲリラ豪雨の日以来だな、こんなに綺麗な夕焼けは……


私:まだお昼ですよ……?


おじさん:あの雨、冷たかったな。その日散歩してたら、タバコ屋の前で急に降ってきたんじゃ。(最初のカラスが夕焼けに向かって飛ぶシーンの背中からのカット、同時刻、たぬきが空に目もくれず、虚ろに食べ物を探しながら地面を嗅ぎ、タバコ屋の前を歩いていく風景。次の瞬間、急に空色が怪しくなり、轟音と共に大雨が降りしきり始めた街のカット。予測できなかった豪雨に襲われる体格のよい青年のカット。最後に、その日このおじさんは夕焼けから豪雨に変わる時間、ずっと家の中でその天気も知らずに目を瞑っていたカットで終わる。)



【タイトル】不気味な桂を被り始めた博識おじさん


おじさん・・・島では有名な博識の靴屋さん。何故か昼寝していた時間帯、外で起きてたことを知っている。


私・・・島の住民。不気味な谷現象を思わせる、剥製のような雰囲気のたぬきAを島でよく見かけていた。このおじさんなら何か知ってるのではと靴屋に足を運んだ。

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