『追放エースは女子サッカーコーチから成り上がる』レビュー
── 信頼と戦術で、再起のピッチに立つ──
レビュアー:ひまえび
ジャンルの中でしっかり地に足のついた内容を描きつつ、青春・再起・師弟ドラマをバランス良く混ぜ込んだ佳作です。
王道的な導入でありながら、読み進めるごとに物語が熱を帯びていく。その“期待に応えてくれる安心感”が、本作の魅力の一つだと感じました。
何より印象深いのは、試合描写の熱さとリアリティ。追放の“誤解”や“理不尽”が物語の底流にあり、読者の共感を引き寄せる。
単なるスポーツ描写にとどまらず、選手たちの葛藤や成長、そしてコーチである主人公自身の人生再起が、ピッチの上で交錯していく様はまさに“群像劇”です。
女子サッカーという舞台設定も新鮮で、登場人物たちが自分たちの足で勝利を掴み取ろうとする姿は、読んでいて素直に応援したくなります。
たとえば、実力の劣る選手に対しても「切り捨てずに育てる」ことを選ぶ主人公の姿勢は、かつての挫折を乗り越えたからこそ見せられる“信頼の証”であり、読者にもじんわりと温かさが伝わってきます。
そこに“ハーレム要素”があったとしても、それは決して浮ついた印象を与えず、むしろ物語に柔らかさと人間味を加える良いスパイスになっています。
ライトノベル的な軽やかさを持ちながらも、中身は意外と骨太。
指導者としての矜持、選手との信頼関係、逆境を跳ね返す力──そういったテーマが確かに作品の芯を支えており、読み応えは十分です。
「追放された男が、今度は人を導く側へ」
その転換のドラマが、まっすぐで、とても気持ちいい。
読み進めるほどに評価が上がっていく、そんなタイプの作品でした。
貧乏から脱出するために選んだサッカーの道。
努力の末に得たものは、よく分からないまま、篭絡によって失ってしまった。
絶たれたはずのサッカーの道。
だが、そんな主人公を仕組まれたかのように救ってくれたのも、またサッカーだった。
常に全体が動いているサッカーは、小説とは相性が悪い気がします。
でも、コーチとして俯瞰し、必要なところを緻密に描くことによって、それを覆そうと努力されています。
とは言いつつ、あまり出てきませんが、個人的には序盤の主人公視点の試合描写がいい。
テレビでサッカーの試合を見ると、やっぱりボールを追いがち。
でも、実際にはいろんな思惑のもとに個人が動き、ボールを挟んで『個』がぶつかり合っています。
小説の強みは、なんと言っても人物の内面が書けること。
アニメのように派手な映像でごまかせない分、試合中、どういうことを考え、自分の行動で、敵・味方をどう動かしていくのか。そんな様子がよくわかります。
やっぱり、サッカーは『駆け引き』が面白い。
そんなことも思わせてくれました。
専門用語、例えば、ダブルタッチやルーレット、クライフターンなどが分からなくても大丈夫!
無理に脳内でイメージできなくても、丁寧な描写があるから、小説の流れから何がしたいのかは分かるはずです。アニメでも、ニュースが流す1シーンでも、『何をするか』の該当シーンを適当に脳内にぶち込んでおけば話はつながりますよ。
そう呼ばれているテクがある、複数を使い分けているって感じで読み進めるのがコツです。
しかし、サッカー業界って、なかなかドス黒いんだな……(^^ゞ
サッカーに関してはあまり詳しくないので(観てるのが少林サッカーとかのレベル)詳しい方が読んだらきっと胸熱な試合と展開がまっていることでしょう。
私が保証します(何様)
そして一話目は順風満帆だった主人公。
サッカーも上手く恋人も出来てこのまま進めば楽しい生活が待っていたはず。
しかし二話目には、その天国のような世界から一気に地獄へと叩き落とされます。
契約の件がお義父さまにバレてしまい彼女とも別れサッカー人生も絶たれてしまいます。
一体誰が仕組んだのか、そして主人公の復讐は成立するのか。
サッカーを軸に渦巻く謎とハーレムに心躍ること間違いなし!