第13話 心に宿すもの
「心に宿すもの。」
ロシェとカタリナはグレートニールに向かって歩いていた。ロシェが古の機械と戦った時、カムはアクアストールを封鎖していたようで、目撃者などはおらず、民は王が死んだことなどもちろん知らないままであった。唯一変わった状況といえば、人型機械が活動を停止したことだろうか。人工気候装置が破壊されたことにより、太陽が常に出ているわけではなくなった今、あれだけの高性能な機械を維持する体内エネルギーが枯渇してしまったのだろう。道中には動かなくなった人型機械がたくさん転がっていた。この光景を見て、民たちは国の異変に気づくのだろう。
「ねぇ。ロシェ。」
カタリナが突然口を開いた。
「どうした?」
ロシェは優しく聞き返した。
「本当にもう平気なの?体。」
カタリナが心配になるのも、仕方のない話である。なぜならあの時、ロシェの心臓は完全に止まっていた。たしかに死んでいたのだ。
「あぁ。大丈夫だ。心配してくれてありがとう。」
ロシェは優しい笑顔でそう答えた。
「それよりカタリナ。これからこの国をどう立て直していくんだ?」
「そうね。もう王はいらないわ。みんなの力を合わせることが大事ね。」
「そうか。国は壊すことよりも築くことの方が難しい。」
ロシェのその言葉に、カタリナはカムの言葉を思い出した。
「そうよね。」
「あぁ。みんなが同じ方向に向かうのが一番難しいことだと思う。ましてや率いる者を立てないのであれば。」
「そうね。」
カタリナは少し俯きながらそう答えた。
「カタリナ。何も焦る必要はない。ゆっくりと一歩ずつ進んで行けばいいと思う。」
ロシェは笑顔でそう言った。カタリナはその笑顔を見て、再び心に誓ったことがあった。この国を素敵な笑顔に包まれた国にしようと。
思い返せばアクアストールで全てが始まって、戦場から戦場へと移動を重ねた。あの時もロシェとカタリナはこの道を歩いていた。その時は気づきもしなかったのだが、ここにも美しい花は咲いている。きっとカタリナが目指している理想の国には、こういう小さな気づきが溢れているのだろう。安泰な平和とはまだまだ言い難いほど国は疲弊しきっているのが現状だけれども、二人は確実にその一歩を踏み出している。国民全てがその姿を描ければ、それが同じ方向を向くということに繋がる気がする。いつかは花が満開に咲くと信じて、二人は歩いている。
「カタリナ。見てくれ。」
ロシェは木に止まった鳥を指差してそう言った。
「あれは。鳩ね。」
「きっとあの鳥は元々あそこにいたんだと思う。でも僕たちが争いに目を向けていたからその存在に気づかなかった。」
「きっとそうね。」
カタリナは鳩を見ながらそう答えた。
「もう二度とその存在を忘れないでいよう。」
ロシェはそう言いながらカタリナの手をそっと握りしめた。
「えぇ。絶対に忘れないわ。」
カタリナもそっと握り返した。
グレートニール。あの時と同じ道、でもあの時とは違う気持ちで、ここに帰ってこられた。
「やっと着いたわ。ロシェ早く行こう。」
カタリナはそう言いながら、ロシェの手を引いた。そこには年頃の女の無邪気さが滲み出ている。
「そんなに慌てなくても、店は逃げない。」
ロシェがそう言うと、二人は顔を見合わせて笑った。
「それもそうね。でも売れ切れてしまうかもしれないわよ?」
「それはたしかに。一番人気だと言っていたもんな。」
「そうよ。だからやっぱり急がないとね。」
カタリナは再びロシェの手を引っ張った。
「分かった。急ごう。」
二人は手を引き合いながら、スノーボールの出店へと向かった。
「あ!。お兄さんとカタリナさんだぁ。またきてくれたんだね。」
店の女は変わらない笑顔でそう言った。
「あぁ。また来たよ。」
「あれー。手なんか繋いじゃって。そういうことなのー?」
女に茶化され二人は慌てて繋いでいた手を離した。
「まぁその話もあるんだけど。ひとまずあなたの笑顔に会いに来たって感じかしら。」
カタリナは少し照れながらそう言った。
「カタリナさん。なんだか雰囲気変わったね。」
「そうかしら?」
「うん。以前はもっと思い詰めた顔してたからさ。」
「そうかもしれないわね。あなたの方は相変わらずの素敵な笑顔ね。」
カタリナがそう言うと店の女は胸を張って答えた。
「これが私の商売道具だもん。」
ロシェとカタリナは顔を見合わせて笑った。
「私、笑われるようなこと言った?」
「いや。大した道具だと思う。」
ロシェはそう答えた。
「とりあえず。また二つもらえるかしら?」
カタリナが言うと、女は深々と頭を下げる。
「毎度あり。ちょっと待っててね。」
女は手際よくスノーボールを二つ袋に入れてカタリナに渡した。
「ありがとう。それと。」
カタリナがここまで言いかけたところでロシェが制止した。
「また来るよ。」
ロシェはそうとだけ告げて、カタリナの手を引いた。
「はーい。また来てね。」
女は笑顔で二人に手を振っている。二人もそれに答えた。国全体が彼女のような笑顔に包まれることを祈りたい。
しばらく辺りを散歩していた。
「ねぇ。ロシェ。言わなくて良かったの?結婚のこと。」
「もう少しだけ待ってほしい。」
「理由を聞かせて。」
カタリナの問いかけに、ロシェは少し俯きながら答えた。
「国の復興を先に済ませたい。」
カタリナはロシェが何かを隠していることに気がついている。しかし聞くことはしない。
「それもそうね。」
「カタリナ。行きたい場所があるんだ。」
「分かった。ついて行くわ。」
カタリナがそう答えると、ロシェは人の気配がしない方向へと歩き始めた。カタリナも後ろをついて行く。訪れたのは海岸沿いの道だった。
「僕はここでマフィティスアのアランという男と戦った。」
「ロシェに呪いをかけた人間ね。」
「あぁ。戦いは呆気なかった。凄惨な血の雨が辺りを覆ったんだ。人を殺すことがこんなにも簡単なことなんだと思ったんだ。」
「そうね。私もサウンズロッドでミレアという女を殺したわ。生身の人間だった。」
二人の思い出はたくさんの戦いで埋め尽くされている。それはどれも辛く苦しいものばかりだ。
「僕たちは忘れてはいけない。人を殺すということがどういうことなのかを。」
「そうね。」
二人を沈黙が包み込んだ。夕暮れ時の涼しい風が吹いた。
「もう誰も、人を殺す苦しみを味合わなくていい世界になってほしい。」
ロシェは空にそう呟いた。その表情はやけに儚く感じられる。
「なってほしいじゃなくて、私たちがそう導くのよ。」
「そうだな。」
ロシェの顔に笑顔が戻っていた。二人は思い出のスノーボールを口へと運ぶ。口いっぱいに広がる優しい甘さは、あの時と同じ優しさに溢れていた。
数日後。王が死んだことを知った国は一時混乱に陥った。喜びを噛みしめる者もいれば、路頭に迷う者もいた。二人はその全ての人たちに手を差し伸べて、決して見捨てることはしなかった。その小さな努力が積み重なって、三ヶ月が経つころには、皆の顔は同じ方向へと向かっていた。何者にも支配されない幸せな国を築いていこうと。
ロシェとカタリナはアクアストールにいた。民たちの活躍もあり、ゆっくりだが確実に復興は進んでいるように見える。
「カタリナ。一つ思い出したことがあるんだ。」
ロシェが唐突にそんなことを言い出した。
「なに?」
「炎の巫女の最終奥義についてだ。」
カタリナは目を丸くした。
「もう戦いは終わったのよ?最終奥義は必要かしら?」
「地形操作の舞を知っているか?」
「知ってるもなにも。私はそれがされた場所で修行を積んだの。」
「そうか。なら話は早い。フィナは邪竜を追い払うために何者と生存できない地形へと変化させた。これに逆があるとすれば?」
ロシェの話を聞いて、カタリナは驚いた。
「つまり命が芽吹く地形に変形させられるってこと?」
「そうだ。」
「でもどうやって。やり方がわからないわ。」
「僕の勘が正しければ、ここの地下に巨大な神殿があるはずなんだ。そこに手掛かりがあるかもしれない。」
「それなら探してみましょう。」
二人はサウンズロッドの内部へと入った。月日が経っても中は何も変わっていない。迷路のような一階フロアはカタリナが、吹っ飛ばしていたので捜索は案外スムーズに進んだ。
「カタリナ。ここだ。」
二人は地下への扉の前に立つ。そしてロシェがゆっくりとその扉を開いた。
「随分長い階段ね。」
「古の機械の封印にはそれなりの巨大な空間が必要だったと思う。この先はかなり広く続いているだろう。」
ロシェがそう言うと、カタリナは小さな炎で辺りを照らした。
「行こう。」
二人は地下へと足を進める。階段を下り終えると、そこにはカルトゥナやガリュウの時とは比べ物にならないほど広大な敷地が広がっていた。
「たしかに広いわね。」
「あぁ。でもここがかつての空の城の地下だとすれば僕にはどこに何があるか理解できる。ついてきてくれ。」
ロシェはそう言うと奥へと歩き出した。カタリナもそれについて行く。しばらく歩くと、古い扉が視界に入った。
「あそこだ。」
二人はそこに向かった。
「古代文字なのかしら?私にはさっぱりだわ。ロシェ分かる?」
「空の国ウィンドリス。地に降りてなお、空へと紡ぐ架け橋となる。と書かれている。」
「と言うことはこの扉は空の国がこの地に降りてから作られたものということになるわね。」
「そうだと思う。とりあえず入ってみよう。」
ロシェが扉を開いて、二人は中へと入った。そこには数々の壁画が描かれている。
「これはなんて書いているの?」
カタリナは一つの壁画の横に記された古代文字を指して尋ねた。
「空の王。ロシェ=カエルム。その右手は空と通ずる。」
ロシェがそう読み上げると、カタリナはまじまじと壁画を見た。そこには空に右手を掲げる青年の姿が描かれている。
「これがロシェ?あんまり似てないわね。これを描いた人はあまり絵が得意じゃなかったのかしら。」
ロシェは少し笑っていた。カタリナはその横の壁画に目を向ける。
「これはなんて書いてるの?」
「火は人の歴史の始まりであり、空は神の歴史の始まりである。舞いし炎。飛ぶは空。今なお紡がれる神人の共存。」
その壁画には炎を纏い舞い踊る女性と、晴れと雨を同時に操る青年の姿が描かれていた。
「これがフィナとロシェということね。」
「おそらく。それよりその隣を見てくれ。」
ロシェにそう言われて、カタリナは隣の壁画に目を映す。そこにはリングを付けた女性が右腕を高らかに掲げている。その周囲は草木に囲まれ、虫や鳥が楽しそうに踊っているかのようにも見える。
「これが最終奥義なの?」
「きっとそうだ。」
「手掛かりは書いてあるの?」
「それが。」
ロシェはそう言って首を横に振った。
「そっか。他の場所も探してみよう。」
二人はその部屋を出て再び広大な地下神殿を歩いた。しばらく歩くと、通路を挟んで左右に扉を発見した。カタリナは右側の扉に刻まれた文字を指してロシェに聞く。
「これは?」
「空の王とヤンガミ。と書いてある。」
「ヤンガミ?ロシェには分かるの?」
「国だな。ここからさらに西にある。辺境の国だ。」
「それとロシェに何の関係があるの?」
カタリナが不思議そうに尋ねるとロシェは答えた。
「かつて空の民は地上との繋がりはほとんどなかったんだ。でもこのヤンガミという国だけは友好的な関係を構築していた。そこには【大地の筆】という伝説の道具があるんだ。僕も詳しいことは知らないのだけれど。」
「ロシェは行ったことがあるの?」
「僕が空を操る力の修練を積んだのが、ヤンガミなんだ。五千年生きるという仙人。竜という爺さんがいてな。彼が僕に戦い方を教えてくれたんだ。」
「五千年も生きるの?てことはまだ生きてるってことよね?」
「僕が修練してもらった時が四百五十九歳だったから、まだまだ生きるだろうな。どちらにしてもこの部屋は関係なさそうだ。」
カタリナは反対側の扉を指して聞いた。
「じゃあこっちは?」
「これは。」
古代文字を見たロシェは驚いた様子だった。
「なんて書いてるの?」
「炎の巫女は愛するものを守るために戦う。その最終奥義こそ、愛の究極なり。」
「ということはここに記されている可能性が高そうね。」
「あぁ。入ってみよう。」
ロシェが扉を開いて、二人は中へと入った。中には三枚の壁画が描かれていた。
「カタリナ。これが最終奥義の道標のようだ。」
ロシェは少し興奮気味にそう言った。
「右から順に読むぞ。」
カタリナは右の壁画に目を向ける。そこにはたくさんの人と共に踊っている姿が描かれていた。
「一つ目は、人を愛する心。」
カタリナは次に真ん中の壁画に目を向ける。その壁画には鳥や草木に囁きかける姿が描かれていた。
「二つ目は、自然を愛する心。」
最後に左の壁画に目を向ける。空に祈りを込める姿が描かれていた。
「三つ目は、空を愛する心。」
書かれていたことは以上だった。
「何となく分かりそうで、分からないわね。一度整理する時間が欲しいわ。」
「そうだな。とりあえず今日はここまでにしよう。」
二人は地下神殿から出た。辺りはすっかり夜になっている。二人は近くの宿を借りて、一夜を明かした。
結局最終奥義については分からないまま数日が経過した。二人は今、スノーボールの店の女が紹介してくれた空き家に住んでいる。面倒見が良いのはいいことなのだが、厄介なのはほぼ毎日、その女が遊びに来ることだろうか。ちなみに女の名前はエミリである。その日も変わらずエミリが来ていた。
「ねぇ。カタリナさん。明日パスタ食べに行かない?」
エミリが聞くとカタリナは首を横に振る。
「明日はだめね。また今度にしよう。」
「じゃあロシェは?」
エミリは今度、ロシェに尋ねた。
「僕もだめだ。今度三人で行こう。」
「えぇ。二人とも忙しいんだね。三人で行くの約束だよ。」
エミリがそう言うと、二人は頷いた。
「じゃあ今日はもう帰るね。」
エミリがそう言って立ち上がると、二人は玄関まで見送りに行く。なんだかんだでエミリが遊びに来ることが楽しみの一つになっているのかもしれない。
「気をつけてね。」
「はーい。」
エミリはいつもの笑顔で帰って行った。
「ねぇ。ロシェ。」
カタリナが神妙面持ちで口を開いた。ロシェは黙って聞いている。
「ずっと聞かないでいたのだけど。」
カタリナがそこまで言ったところで、ロシェは止めた。
「場所を変えてもいいか?」
そう言ったロシェの服は血で濡れていた。
「えぇ。」
二人は海沿いの人のいない場所へと移動した。
「私に隠していることがあるよね?」
「気づいていたのか?」
「気づかないわけがない。」
カタリナは賢い。ゆえに人よりも小さな情報から結論を見出すことができてしまう。
「ちゃんと話す。聞いてくれ。」
ロシェがそう言うと、カタリナは頷いた。
「僕たちは時代を変えることができた。復興作業をする人たちの顔。辛いだろうに笑顔に溢れている。」
ロシェの言う通り、人々の表情に笑顔は戻りつつある。
「そうね。」
カタリナは静かにそう答える。ロシェの服は先ほどよりも染み付いた血の量が増えてきている。
「カタリナ。すまない。僕は。」
ロシェはそこまで言ったところで口から血を吐き出した。体には古の機械との戦いで負った傷が戻り始めている。
「ロシェ。」
カタリナはロシェの肩を支えた。溢れてくる涙を必死に我慢しながら。目の前で起ころうとしている現象から目を背けてはならない。そんな風に思っているのだろう。ロシェは一度深呼吸をして話を続ける。
「僕はやっぱりあの戦いで死んだんだ。カタリナがアクアリングに祈ってくれたから、最後に少しだけ新時代を歩く時間がもらえた。でももう時間切れみたいなんだ。」
ロシェはそう言いながら涙を拭う。
「私はけっきょく、あなたに何もしてあげられなかった。全部一人で背負わせてしまった。」
カタリナは溢れ出る後悔を口にする。あの時一緒に戦っていればこんなことにはならなかったかもしれない。しかしそれを今更言っても時間は戻らない。
「それは僕が望んだことだ。それにカタリナと過ごした時間は僕にとって大切なものになった。君がいてくれたからどんなことも乗り越えられたんだ。」
ロシェの言葉が、悲しみに暮れたカタリナを優しく包み込んでいく。
「結婚の約束。守れなくてごめん。」
それにカタリナは被りを振る。
「今日まで一緒にいてくれたじゃない。それで十分よ。」
カタリナは溢れ出る涙を拭い、ロシェの手を握った。
「僕は空から見守り続ける。勝手なことを言うようだけど、これからも僕を愛していてほしいんだ。」
「そんなの。あたりまえよ。」
「ありがとう。カタリナはもう三つの鍵を手に入れている。あとはその想いを胸に舞えばいい。」
ロシェは最終奥義のことを言っているのだろう。しかし今のカタリナはロシェとの別れに頭を持っていかれていて、整理がつかない。
「立派な国にしてくれ。」
「分かった。安心して見守っていてね。」
カタリナはそう言うと、ロシェの姿を目に焼き付ける。もしもあの時、あのままロシェが死んでいたら、今の強い意志を持った目を見ることができなかった。
「ロシェの意志は私の心に宿し続ける。」
不器用なカタリナなりの精一杯の見送りの弁だった。ロシェはそれ聞いて笑顔を浮かべる。徐々に傷が戻ってくる体を何とか奮い立たせ、空へと飛び上がった。その無惨な死をカタリナに見せたくはなかった。だからこそ空に消えることにした。ロシェは右手を空に掲げる。
「星の棺。」
ロシェの体は光に包まれて、遥か遠い宇宙へと向かう。星となってカタリナを見続けるのだろう。
「ロシェ。ありがとう。」
カタリナは空に向かってそう呟いた。そしてその場に座り込み、堪えていた涙を存分に流したのだ。その夜はそこで泣き崩れた。
カタリナが目を覚ますと朝になっていた。もちろんロシェはもういない。悲しい気持ちを堪えながら、カタリナは心に三つの愛を宿す。
(一つ目はこの国の人たち。エミリもそう。みんなが笑顔に包まれてほしい)
カタリナは心でそう言いながらゆっくりと舞い始めた。
(二つ目はあの日ロシェと見た鳩や花。それらがあたりまえに存在する国であってほしい。)
カタリナは舞を続ける。
(三つ目はこの大空。私にとっての空はロシェ。ロシェを愛し続けるということは空を愛しているということ。)
カタリナの舞に合わせてフレアリングが眩く光り輝いた。
「ロシェ。見ていてね。これが炎の巫女の最終奥義よ。」
フレアリングから放たれた光は国中を包み込む。そしてその光に照らされた土地にはたくさんの花や生物たちが芽吹いていった。
「この子には幸せな未来を歩ませるわ。」
カタリナは空に呟きながら自分の腹に手を当てた。
「だからいつまでも見守っていてね。」
カタリナがそう言葉を投げると、一つの星が一瞬輝きを放った。きっとロシェからの返事だと思う。カタリナは涙を拭って、前を向いた。ロシェはもういない。でも二人が共に歩いた軌跡は確実に残っているのだ。
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舞いし炎。飛ぶは空。 ふわり @huwari_1998
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