暗部組織・光のガーディアン

海咲 希利花

第1話 暗部組織「SARZ」の一少女の正体とその初仕事

突然だが、あなたは、シナリ・ダーヴィングという少女を知っているだろうか。彼女は普段、イルデン学園高等部の二年生で優しいと学園内で有名なメイコ・ウェッバー教官のクラスの人。だが、学園の一歩外に出ると彼女は学園の生徒ではなくなり、裏の顔を出す。

黒髪ロングヘアをたなびかせ、口元には真っ赤なリップ。普段のメガネをかけ三つ編みで一本にまとめている地味な女子とは変わり、手元には銃を持っている。そう、彼女こそ帝都フェナンシェにある犯罪者を罰する治安維持の為の暗部組織「SARZ」の中で一番最強であるA班の超一流ガーディアン、「闇の狙撃士」シナリーだ。班構成は四人なので、シナリーの他に、高位魔女のミツキ、剣術に長けてるモーリス、接近戦に長けてるハルトで構成されている。ガーディアンでもトップを争うくらいの実力班だ。


私はシナリ・ダーヴィング。イルデン学園高等部の二年生でメイコ教官に師事しているが学年で一番成績が振るわない人…というのはあくまでも私の仮の姿。本当の私は、帝都暗部治安維持組織「SARZ」A班隊長で「闇の狙撃士」と呼ばれており、学業も運動もかなり出来る。

私がガーディアンになったきっかけは、五年前に急にいなくなった親友のミツキを探すためだった。小中学生の頃、乗馬を習っていた私は、そこで知り合ったミツキとすごく仲良くなった。あくまでも師弟関係だったが、それを気にしないほど最終的には打ち解けたのだが、ある日、急にいなくなった。その時はすごく大変で乗馬センターで働いている全ての人に聞いても理由をはぐらかされた。なので、私自身の足で探すことにした。

そして一年前、高校の新入生歓迎会の時にレストランで勤務していたミツキと奇跡的に再会し、ミツキの本当の職業であるガーディアンについて色々教えてもらった。その時に、ミツキから、

「シナリ、私はガーディアンだ。暗部組織だが治安維持に努めている。シナリの敵になる可能性はないが、またいつシナリの元を離れて別の支部へ飛ばされるのかわからない。だから、選択してほしい。ガーディアンになるか否か。」

と言われ、最初はガーディアンになるべきかどうか分からなかった。街でも良い噂は全く聞かなかったし、何より、すごく楽しい学園生活を送れなくなる可能性もあるから。だけど、街の治安を守っているミツキを想像し、

「私、ガーディアンになります。そして、みんながいる学園や街を守りたい。だけど一番は、ミツキともう二度と離れたくないから。あの時、すごく寂しかったのよ。」

とミツキに伝えた。

それからというもの、合格率1%の選抜試験を首席で合格し、将来有望のガーディアンと周囲で噂され、ミツキの班員になった。その後、三週間で「黒の狙撃士」という異名とともに、ガーディアンという二つ名を名乗れるようになり、その功績故に、ミツキの班の班長になってしまった。今では、副班長のミツキとともに、ガーディアンの仕事を頑張っている。

そんな私の仕事内容から説明する。まず、「SARZ」の人々は、日々街を襲う魔獣や魔物を倒す事もあるにはあるが、町の連続強盗事件を対処したり、時には犯人と対峙したりすることの方が多い。そして犯人はその場で問答無用で殺すことはないが、殺人やその未遂など、街を脅かす凶悪犯罪の犯人はその場で殺されるので、一部の犯罪者からは、「殺し屋」だの、「清掃屋」とかで呼ばれることもある。普通の人から見ると、警官とは別の組織なので呼ばれ方は色々あるが、多くの人は「清掃屋」と呼んでいる。そして組織の中の一部の優秀な人に与えられる二つ名、それが、「ガーディアン」と呼ばれる人だ。ちなみに、私が所属している支所は帝都でかなり有名なレストラン・アンディーにあり、そこが依頼の受付になっている。その「SARZ」での初仕事から私は殺人未遂事件を対処し、犯人と対峙することになった。被害者はまさかのメイコ教官。「まさか結構武道も強いメイコ教官でも気絶して重傷を負うなんて…なんて残虐で恐ろしい犯人なんだ」という考えが頭の中を一瞬よぎったが、「ここはひとまずメイコ教官を回復魔法で助けて、それから犯人を捕まえないと」という思考になったので後は速かった。

私の武器は、世の中では、「黒の銃弾」と呼ばれている魔法銃である。「黒の」と書いてあり殺傷能力しかないと思う人も多いと思うが、回復魔法の「ブレスシンフォニー」も強力だ。心臓に銃弾が当たっても、後遺症が少し残るくらいで意識は基本的に回復する故、三発くらい追加で使ったらその後遺症も回復するくらいだ。なので、とりあえずブレスシンフォニーでメイコ教官を回復させ、攻撃弾で犯人を攻撃。というのが一連の流れになる。さて、ここからが本題。

まずメイコ教官を回復魔法で回復させた。気絶はまだしているが、とりあえず死は回避できたので、すぐに魔法銃の中身を一発当たったら即死レベルの痛みに襲われる「ガーディアンブレッド」という攻撃弾に替え、犯人を追いかけることに。犯人はどんな人だろう?私がすごく好いているメイコ教官を死ぬ寸前まで傷付けた人だ。よっぽど残虐で強いに違いない。だけど……クラスや学園内で強い人はいない気がする…多分。

そうやって追いかけているうちに、無線で連絡が入った。その犯人は、いやいや絶対ないと思ったが、クラスメートのナンシー・ワクソンだった。出席番号も遠かったお陰で関わることはそこまでなかったが、私の以前目指していた夢である看護師を目指しており、特別実習で病院希望が通らなかったのに、サクラとヒカリで一緒に病院に行ったことで、私個人の怨念もあるが、メイコ教官のことを「優しすぎ。」と評し、あまり良い態度を取ってなかったっけ。こういうことを考えてたら、本部から通信がきた。「今回の犯人は怨念で事件起こしたから、後よろしく。」と無線で受付のアヤさんに言われて、「うん。ガーディアンブレッドを使える」と心の中で言った。

ちなみに、こういう自己の恨みで起こした殺人未遂事件や殺害事件の犯人は組織の人は理由聞いた後に殺している。この事件をこれ以上扱いたくないのと、自己の恨みが別の人に向いてしまった時に、別の関係のない人が無差別に危険に晒されるから。それは私たち、暗部の人間にさえ恨みを持って、もし暗部組織の人達が殺傷されたら今のガーディアン達が保っている平和な世界がいつまで続くかわからなくなり、無差別殺人事件の件数が圧倒的に急増してしまうから。

ついに犯人のナンシーに追いついた。私はまず、ナンシーに問いかけた。

「あら、メイコ教官を殺そうとした犯人さんのお出ましだ。さて、なんで殺そうとしたのか、教えて。」と犯人のナンシーに問う。もちろんナンシーは卑怯者なので、

「あなたは誰?って、何でメイコ教官を殺したことを知ってるの。」と私に向かって問いただしてきた。私は怯まずに、

「ガーディアンの、「闇の狙撃士」。犯人さんもガーディアンという名称は聞いたことないからどういう組織か教えるわ。俗に世間でよく言われる、清掃屋―。いわゆる暗部組織ね。とりあえず、殺そうと思った理由を教えて」と本名は言わずに理由を催促した。そしたら、ナンシーがいきなり怒り口調になり、

「ウェッバー教官に酷い仕打ちをされたからよ!あの総合特別実習の後からシナリーとかいうクラスメートのことばっかり気にかけている。私のことなんてつゆ知らず。だから殺そうと思った…だけど殺すのは流石に怖かった。アンタなんかに恨みの気持ちが分かる?わかるわけないよね!ガーディアンや清掃屋がなんなのか知らんけど、誰からも気に入られていそうなアンタなんかに。……殺す、アンタを殺してやる!」とナイフを向けた。私は動じず、

「あらあら、随分幼稚すぎて鼻で笑ってしまいましたわ。普通一度の恨みでそこまでやる?だけど、怨念を持っているのは本当のようね。そうそう、多分貴方の方から殺されるから一言言っとくわ。誰からも気に入られていそうとか言ってたけど、暗部の人間って逆に嫌われるのよね。本当に治安を守ってるのは私たちなんだけど、まあ政府や警官からは嫌われてるし。さて、最後に何か言い残すことは?」と挑発気味にナンシーに問いかけた。そしたら、「殺されるのはアンタの方なのに、今更何か言い残すことは?とか、まじウケるんだけど〜。まあ何もないけど。」と言ってナイフを持って私の心臓付近を刺そうとした瞬間、

バーン!と、けたたましく響く銃声。私の銃から出された黒い銃弾「ガーディアンブレッド」はナンシーの心臓を貫いた。もちろんだが、ナンシーは倒れた。一応非殺傷弾を使っているが多分即死だろう。とりあえずあとは私の相棒であるミツキ達に処理を任せ、とにかくメイコ教官の元へ。ミツキによると、「ウェッバー教官は病院で眠っているとのことで、命に別状はないみたい。シナリのおかげ。回復魔法がなかったら、後遺症が残ったんだって。」と言ったから、私はメイクを落とし、髪を三つ編みに結び、眼鏡をかけてメイコ教官がいる総合病院に向かった。


病院について、メイコ教官の病室へ向かった。「メイコ教官、大丈夫でした?聞けば殺人未遂事件に巻き込まれたと聞きましたが…」私は必死だった。いくら犯人が殺されたからと言って、追ってに殺されていたら元も子もないから。

「大丈夫です。誰かが私に向かって来て、そして刃物で腹部を刺されて、そこから……」意識を失ったせいで、記憶喪失を起こしているのだろう。「だけど、これだけは覚えてます。夢の中で、黒髪ロングヘアで、かなり流麗な人が助けてくれたような…」その人が回復魔法を使ってメイコ教官を助けた後、犯人を殺したというのは内緒だ。

「って、なんで私が殺されそうになったのを知っているの?だって、犯人と私しかいない場所で殺されかけたのに…」と、ようやく動揺したのか聞いた。

「たまたま図書館に行く時だったから、近くを通りかかったの。多分犯人がメイコ教官に恨みを持っていて、いずれ殺すことを知っていたから、誰にも気づかれないように。…私がもし早く殺される寸前に気づければ、もっと早く助けることができたのに、ごめんなさいね。」と私が謝ると、

「とんでもない。だけど、…ダーヴィングさん、何か隠し事してない?ナンシー達、先月の特別実習で病院行ったけど、貴女は超がつくほど帝都内で有名なレストランに行ったっけ。そのご縁で働かせてもらっているとか…」

「ないない。私の学力と運動神経は知っているでしょう?」学校では何も取り柄がない女子として過ごしているので、成績は最底辺、持久走は最下位だ。ちなみに、ガーディアンの成績は学科も実技もトップで入っているので、学力も持久力もある方。だけど、勘づいてしまう人がいるので学校ではわざと悪い成績を取っているのだ。…まあこのまま行けば、進学できないのが確定してしまうので、いずれはメイコ教官に「SARZ」に所属していて、一流ガーディアンであることも知られると思うが。

「当分は学校休むことになると思うので、ゆっくり休んでくださいね。ではまた。」とメイコ教官に挨拶をし、支部に戻るのだった。


翌日―

学園に行くと、突然教官達が体育館に来て緊急集会があるということを知らされた。…多分、昨日のことが私以外の誰かによって学校に伝わったらしい。

「昨日、二年の女子生徒がウエッバー教官を自身の恨みで殺そうとしました。女子生徒はその後、何者かに射殺されました。」と学年主任の教官が言った瞬間、全員が凍りついた。何故かって、メイコ教官は恨まれる人ではなく、むしろ慕われる人だったから。そして、学年主任の先生は言った。「なので、ここ数日はとある組織の人が来てくれてます。」と付け足したので、私の同僚が来るはずだ。…多分。

集会に入って来た人、それはミツキだった。

「初めまして。事情聴取に来たミツキ・ツィガーンと言います。部下と一緒にこの事件を捜査しています。しばらくこの学校にいるので、見かけたら声をかけてくださいね。」と優しそうな口調で挨拶をした。

「どうも、モーリス・カルヴィアです。」

「同じく、ハルト・ラングフォードです。」とミツキに倣って二人も挨拶した。その瞬間、集会場所である講堂で、生徒達はざわめいた。

「そういえば、ミツキさん達ってなんで所属と階級を言わなかったんだろう。もしかして…」と勘づいている生徒もいた。

休み時間はクラスやらナンシーに関わってる人を中心に聞き込みをしていて、放課後、私はミツキ達に呼ばれて、会議室で話した。シナリー目線でも、「闇の狙撃士」目線でも。

「ミツキ、モーリス、ハルト、進捗状況は?」と尋ねると、「なぜ皆さんの名前を呼び捨てで呼んで…って班長⁉︎いつもとかなり雰囲気が違うからわからなかった…」とミツキが驚き、

「シナリーさん⁉︎任務の時と全然雰囲気違うからわかりませんでした。」と同じくモーリス達にも言われた。

「この姿で会うのは初めてだし、わからなくて当然。だけど、学校の人には内緒。流麗な格好で、残虐な犯人を殺す仕事をやっていることは。さて、情報共有しよっか。」

「犯人のナンシーはとっても性格が悪いって本当?」

「ええ。特別実習の時も、私は組織に行って一日ガーディアン体験をしたけど、本来行きたかった場所は病院で看護体験をすることだったの。希望者が多くてジャンケンになったわ。最後まで勝ち抜いたんだけど、最後の最後にナンシーに負けた。その時、ナンシーは行きたい気持ちが度を越したのか、後出ししたのよ。公平勝負のジャンケンで。当然、私は泣いた。今回はみんな私を擁護してくれたわ。それだけじゃない。私の名前を書くとき、シナリーと書かずに、シーリーと書いたのよ。そこからナンシーの評価が下がって、メイコ教官に冷たくされたことが原因だと思う。…ごめん、話逸れたね。こんなことをする卑怯者で社会的に不要な人なの。」

「そっか。みんなに嫌われていたのね。」

「だから私は、SARZの規約に基づいて、心臓あたりにナイフが刺さりそうになったので正当防衛としてナンシーを殺した。そして、死にかけたウェッバー教官を助けたのよ。もし中途半端に生きていたら、今度は私の命が狙われ、組織の皆に迷惑をかけてしまうから。初仕事がこんなことになるなんて…意外と勉強になったから良かったし、班員が理解ある人たちでよかったと思う。」

「私も、班長がシナリで良かった。一見クールに見えるけど、意外と優しいし。それに、ここまでやりやすい班長は初めてだから。」とこんな内容で班員と情報共有をした。

こうして私の初仕事は終わりが近づいた。後はメイコ教官に、情報交換の内容を伝えるのみだ。いまだに入院しているので、昨日も行った病院へ向かった。

「こんにちは。メイコ教官。体調はどうですか?」と聞き、

「ダーヴィングさん…まだ少し傷は痛むけど、だいぶ元気になり、明後日に退院になりました。そういえば、今日の学校の様子、どうだった?」

「……騒然としてました。クラスは学年主任の先生が見てくれましたが、動揺が隠せないといいますか、授業どころではなかったです。ナンシーの友人は勿論のことながら泣いており、「闇の狙撃士」を許さないという怒りも出てきていました。そして、私みたいに恨みを持っている人は悲しさを演技しながら、心の奥底では喜んでいたり。まさにカオス状態でした。」

「そっか……私は彼女に殺されかけそうになったから分かる。「闇の狙撃士」が誰かわからないけど、本当に殺されて良かった。動機が何かミツキさんというガーディアンから聞いたけど、ダーヴィングさんばかり気にかけているかららしい、だけど、私が気にかけたのは、特別実習の行き先決めじゃんけんで、後出しされたことでダーヴィングさんが負けたから。だからサポートして、レストラン「アンディー」を勧めただけ。ナンシーに冷たくしたのは、素行があまり良くないし、あの時後出しした瞬間、私の中で冷めてしまったの。何を言っても無駄だ、温かい心で接するのはやめよう。と思ったから。」それを聞いた私は、

「そうでしたか。まあ、彼女が悪いから自業自得ですかね。」

「そうだね。シナリーさんは大事な生徒だし、何ならあの時、本当は助けたかったの。特別実習、行きたかったんでしょ。帝都フィーデル病院に。私も交渉頑張ったからさ、絶対行って欲しいです。多分次の実習の時は優先して入れたいと思ってるんだけど…できなかったらごめんね。」

「大丈夫です。多分時が経ったら行きたい場所も変わると思いますし、次の特別実習の時は、多分別のところに行くと思いますから。この話を聞けてよかったです。メイコ教官、特別実習の本当のことを伝えてくれてありがとうございます。」

とお礼を言い、本当の私を見せる事なく、この日のお見舞いは終わった。まだ内緒にしておこう、本当はすごく伝えたいし、どんな反応を見せるのか少し気になるから。

―数日後。

メイコ教官が退院し、学園に戻ってきた。ちなみに、入院中にこっそり会っていた(そして、そこでまた回復魔法を使ってほんの少し退院を早めた)のはみんなには内緒だ。それを知られたらナンシーのことを嫌ってる人は良く言う人もいるけど、少しまずいことが起きるのだ。それはナンシーの友人に睨まれ、こんなことを言われそうだから「何でメイコ教官が殺されずに、ナンシーが殺されたのか。」って暗部の人間だと一言もいってないのに、私が憎まれ口を叩かれるから。そして、その日に家宅捜索があった。

「え…これって、銃?規制法があるのに、なんで持っているんだろう?」と気づいたのだ。

何にせよ、私の初仕事は、とりあえず成功と言う形で幕を閉じた。これからは超がつくほど平和な学校生活になるだろう。私にとって、嫌な人がいなくなったから。だけど、その人が銃を持っていたという事は、これからやばい事になるかもな…とりあえず、レストランで闇サイトを調べてみるか

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