道のメモリー 🛴

上月くるを

道のメモリー 🛴



紫陽花に傘さしかけて内気な子

軒先で見送る母やがくあぢさゐ


立ちのぼる道のメモリー鉄線花

稲荷ずし食べたくなりぬ黄蜀葵


プロレスの覆面暑し湖の風

ラグビーの夏合宿や活火山


雨脚や雨にもボルトゐるごとし

日曜の駅前にゐるアロハシャツ


一花得てカサブランカの匂ひ立つ

惜しみなく花を撒き敷く虞美人草


山鳩のデデ―ポポーや山法師

翳の濃き帽子の顔や草むしり


勇み足とがめられたる蝸牛

本虫も迷ひ迷ひの道をしへ


空垂れてビルに落下の五月雨

或るときの犬の仕草や走馬灯


茅葺きの鬼出る里の新たまねぎ

新じやがの鍋に押し合ふ厨かな


蕎麦打つて辛みに添へる夏大根

アンデスの陽に燦燦とトマト熟る




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