実際はホラーかも!
崔 梨遙(再)
1話完結:1800字
うちの父と母は再婚同士です。互いに結婚していましたが、互いに離婚して結婚したんです。なので、僕は兄姉とは腹違い、僕だけ母親が違います。
母は、かわいそうでした。母の父(祖父)が某大手電鉄会社の設計技師長でしたので、橋やトンネルを作る度に転勤。母は、小学生の頃、1~2年おきに転校させられていました。それだけでもかわいそうなのですが……。
祖父が42歳の若さで亡くなったんです。毒殺でした。祖父は毎晩、心臓の薬を服用していたのですが、その中に青酸カリが入れられたのです。犯人は、大勢の前で叱責され、恥をかかされたと逆恨みした部下でした。
警察は、もう証拠を揃えていました。でも、祖母は不起訴処分にしました。亡くなった祖父は帰ってこない。残されたのは祖母、母、叔母(母の妹)、女性ばかりなので釈放されてからまた逆恨みで復讐されるのが怖いということになったのです。
一気に貧しい母子家庭になった母一家。母は勿論、大学など行けず、高卒で某大企業に就職。祖母からは、“残業して、残業代を稼ぎなさい”と言われた母は残業続き。母は美人で有名だったらしいです(息子の僕にはわかりませんが)。そこで、祖母は玉の輿作戦を実行しました。
「金持ち以外と結婚したらアカン!」
プラトニックながら相思相愛だった、早稲田卒の貧乏家庭の男性ではなく、お金持ちの息子との結婚をすすめられました。
着る物からアクセサリーまで、格の違う結婚。母は旦那家族から冷たく扱われたらしいです。ずいぶんと恥もかいたと言っていました。母は、その頃のことをあまり話してくれませんでしたけど……。悔しかっただろうなぁとは思います。
で、ハネムーンベービーを授かります。ところが、旦那は堕ろせと言ったらしいです。そして、喫茶店を始めてそこで働けと母に命じました。
喫茶店は繁盛しましたが、幾らお客さんが来ても何故か毎月赤字だったらしいです。経理をやっていた祖母が売り上げから抜いていたのでは? と、めっちゃ怪しいのですが、証拠が無いので何も言えません。
叔母は、母の旦那の家のお金で大学を卒業しました。旦那は、勿論、いい気分ではなかったらしいです。母は或る日言われました。
「身分相応というものを考えろよ!」
そこで、母はこのままではいけない、旦那の家のお金を、自分の家族達が食いつぶす。なんとかしなければ! と思ったらしいです。
そんな時に父と出会いました。お互いに結婚していましたので難航しましたが、最終的には結婚できることになりました。
ところが、母は急に慢性の膀胱炎になりました。その時、耳元で年配の男の声を聞いたというのです。母は、あれは元旦那さんの先祖だと言っていました。
「代々、呪ってやるぞ! まずはお前だ! 一生苦しめてやる!」
母は見えないものを見たり、聞こえないものが聞こえる霊感体質でした。代々、母方は霊能者の家系なのです。曾祖母は政界や財界の大物からお忍びでアドバイスを求められたほどの人でした。そして、男が42歳で亡くなる女系家族でした。
或る日、小学生だった僕が霊能者の店の前を通りました。
「坊や、ちょっとおいで」
「あの、霊能者さんに用は無いんですけど」
「いや、あんたみたいなのは特別や。守護霊もいてるし、守護霊も多い。守護霊の大名行列やで」
「ほな、僕は幸せになれるんか?」
「人並み外れたパワーとエネルギーに満ち溢れてる。せやけど、同じくらい強い敵が現れる。もしかしたら人生が上手くいかんことがあるかもしれへん。でも、あんたは人から好かれる、人望がある、助けてくれる人が現れる。せやから頑張りや」
結論、不愉快でした。真面目に話を聞いて損をしました。強敵が現れる人生なんて喜べるわけがない。ですが、そこで、母の元旦那一族の復讐かな? と思いました。
母は50代半ばで亡くなりました。
僕は、42歳で統合失調症になり入院しました。入院中、退院後働き始めてもしばらく耳鳴り(幻聴)がしました。“死ね、死ね、死ね、死ね……”という言葉を聞き続けながら働いていました。今は、医師から処方された薬のせいか止まっています。
僕は母と同じように呪われているのかもしれません。
僕も42歳で死にかけましたし。
と、言いつつアニメを見ながら笑っていますが笑。
本当に呪われていたらホラーですね?笑
実際はホラーかも! 崔 梨遙(再) @sairiyousai
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