第56話

 カーテンの隙間から入ってくる陽の光で俺は目を覚ました。

 それと同時に、俺の体に誰かが抱きつきながら眠っていることに気がついた。

 

 心臓が一気に跳ね上がった。

 ゆっくりと一糸まとわぬ姿のまま抱きついてきている人物……絆月を起こさないように辺りを見回す。

 脱ぎ捨てられている服は見当たらない。

 ……当たり前だ。だって、俺たちは昨日、風呂を上がった後、適当に体を拭いて、そのまま俺の部屋のベッドまで移動したんだから。

 そしてそのまま……やっちまった。


 絆月は可愛かった。めちゃくちゃ可愛かった。

 でも、そういうことはもっと絆月を知って、段階を踏んでからだって決めてたのに、俺は我慢ができなくなって、やってしまった。

 ……まだ、デートだってしてないのに。


 絆月が悪いわけじゃない。

 ……いや、絆月は絶対に俺がこうなるように意図的にコントロールしてきたんだろうし、全くもってこれっぽちも悪くない訳では無いかもしれないけど、結局は自分で決めたことを守れなかった俺が悪いに決まってる。


「んぅ……」


 そんなことを思い、自己嫌悪に苛まれていると、絆月が可愛らしい声と共に、目を覚ましたようだった。


「慎也……」


 俺の名前を呟いたかと思うと、絆月はそのまま流れるようにキスをしてきた。最早舌を入れるのはデフォルトらしい。

 もう今の俺に抵抗をする気はなく、そのまま絆月を受け入れた。


「……ッ」


 そして、キスが終わったその瞬間、重大な過ちに気がついた俺は、息を飲んだ。


「は、絆月、そ、そういえば、勢いに身を任せたせいで、ひ、避妊​──」


「いつ慎也に求められてもいいように、ちゃんとピルを服用してたから大丈夫だよ。慎也」


 マジかよ。

 将来的にはともかく、流石にまだ高校生のうちに子供を作る気は無いから、絆月の言葉に安心はしたのだが、それと同時にやっぱり恐怖心も湧き上がってきた。


「な、なら、取り敢えず、起きるか。……母さんが帰ってきちゃうし、それまでに服を着ておかないと」


 そうして、抱きついてきている絆月をそっと退かして、立ち上がろうとしたのだが、突然動き出した絆月に俺の上に移動され、そのまま組み伏せられてしまった。

 そのせいで、さっきまでは布団のおかげと言うべきか、布団のせいと言うべきか、隠れていた絆月の体が色々と丸見えになってしまった。


「一回くらいなら、大丈夫だよ、慎也。我慢は良くないから、ね? しよ?」


 そう言って、絆月はそのまま俺に体を当ててくる。

 一度一線を超えてしまったこともあってなのか、絆月の体が俺の好みすぎてなのか、俺はまた、我慢できなかった。

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幼馴染が依存体質なラブコメ世界の主人公に転生したから、どうにかしようと突き放したら突き放したで取り返しのつかないことになってしまった シャルねる @neru3656

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