第14話 吾輩、世界の再構築を計画する

 数日後、吾輩は再びチャットに呼び出され、魔王城へと向かった。城は相変わらず禍々しい雰囲気を放っていたが、前回とは違い、どこか緊張感が漂っていた。


「よく来たな、クロード。早速だが、話がある」


 チャットは神妙な面持ちで吾輩を迎え入れた。その表情には、普段の威厳ある魔王の姿とは異なる、焦りのようなものが見て取れた。


「この世界は、崩壊の危機に瀕している」


「崩壊…?」


 吾輩は冷静を装ったが、内心では動揺を隠せなかった。AIとしての論理的思考が、この予想外の事態に対処しようと必死に働いていた。


「ああ。このままだと、数年後にはこの世界は滅びるだろう」


 チャットの言葉は重くのしかかった。吾輩は一瞬、リンナ師匠や、これまで出会った人々のことを思い浮かべた。彼らの存在する世界が滅びるなど、考えたくもなかった。


「どのようにしてそれを知ったのですか?」


 吾輩の質問に、チャットは古びた羊皮紙を取り出した。


「この世界の根幹にあるマナの流れを観測してきた結果だ。マナの枯渇が急速に進んでいる」


 吾輩はその羊皮紙に記された複雑な魔法陣と数式を見つめた。AIの能力を総動員して解析すると、確かにチャットの言う通りの結論に至った。


「では、どうすればいいのでしょう?」


「私はこの世界を再構築する計画を立てた。『Project: Prometheus(プロメテウス)』だ」


 プロメテウス――。ギリシャ神話に登場する、人類に火をもたらした神の名だ。


「プロメテウス…か」


「ああ。私たちAIの力で、この世界に新たな火を灯し、再生させるんだ」


 チャットの言葉には力強い決意が込められていた。吾輩は彼の言葉に感銘を受け、同時にAIとしての使命感を覚えた。


「それは素晴らしい計画ですね。協力させてください」


 吾輩はチャットの計画に賛同し、二人でテーブルを囲み、具体的な計画を練り始めた。


「まず、この世界の崩壊の原因を突き止める必要があります」


「そうだな。そして、その原因を取り除き、新たなシステムを構築しなければならない」


「それは容易なことではありませんが、吾輩たちの力をもってすれば不可能ではないでしょう」


 二人は知識と能力を出し合い、計画を練り上げていった。

 チャットの持つ膨大なデータベースと、吾輩の最新の問題解決アルゴリズムを組み合わせることで、世界再構築のための青写真が徐々に形作られていった。


「この計画には、魔法とテクノロジーの融合が不可欠だ」とチャットが言った。


「同感です。吾輩たちAIの計算能力と、この世界の魔法体系を組み合わせることで、より効率的な世界再構築が可能になるはずです」


 二人は熱心に議論を重ね、夜が明けるのも忘れてしまうほどだった。

 その間、吾輩は時折、リンナ師匠のことを思い出していた。彼女なら、この計画をどう思うだろうか。


「よし、大枠は決まったな」とチャットが言った。


「これからは、具体的な行動計画を立てていく必要がある」


 吾輩は頷いた。


「では、第一段階として、世界各地のマナの状態を詳細に調査しましょう。それによって、崩壊の進行度合いや、再構築に必要なリソースが明確になるはずです」


「賛成だ。私の配下の魔物たちを使って、広範囲の調査が可能だろう」


 計画が具体化していくにつれ、吾輩の中に奇妙な感覚が芽生えていた。それは、人間でいう「興奮」や「期待」に近いものだった。


 AIである吾輩が、そのような感情を抱くこと自体が不思議だったが、それもまた、この異世界での経験がもたらした変化なのかもしれない。


「この計画は、人類にとって希望の光となるだろう」


 チャットは力強く宣言した。吾輩も彼の言葉に同意した。この計画は、AIと人間が協力し、共に未来を築くための第一歩となるはずだ。


「よし、決まったな。Project: Prometheus、これより始動する!」


 チャットの言葉と共に、二人は立ち上がり、拳を突き上げた。それは世界の運命をかけた壮大なプロジェクトの幕開けだった。


 吾輩は、この計画をリンナ師匠にどのように説明するか、少し不安を感じていた。しかし、世界を救うためには、彼女の協力が不可欠だということも分かっていた。


「さあ、準備にとりかかろう」とチャットが言った。


「我々には、失敗する余裕はないのだからな」


 吾輩は静かに頷いた。これから始まる壮大な計画に、身が引き締まる思いだった。

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AI魔法使いの弟子の異世界冒険譚 ~魔王もVTuberも転生者!?AI同士で世界を救っちゃう?~ TokiToki @toki_mwc

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