5.寂詩鎖


 夜もすがら 梅花香ばいかこうに酔いしれて

 呪縛のおぼろ月へ 手をのばす


 腕に絡まる毒のイバラ

 切りつけて 血も滲んで

 凍りついた爪

「愛にとらわれるのは 罪なのか」

 と声がする


 この世界のすべてが ニセモノに変わってしまって

 凍れる海に沈んだ愛は どこに向かうの?


 たとえ最後の夜だって

 消えかけた光は 答えを探してさまよっている

 寂寞せきばくは誰かに とらわれた証拠で

 わたしの輪郭は ぼやけたままよ




 朝ぼらけに 月の影が閉ざされて

 呪縛の雪月花せつげつかで 蜜を飲む


 喉に絡まる死の移り香

 染みついて 舌も枯れて

 震える指先

「愛は情熱か 憎悪なのか」

 と声がする


 この世界のどこかに ホンモノが輝いたって

 流れる空に吸い込まれた愛は どこにあるの?


 やがて最後の日を迎えて

 忘れられた時は あなたを呼んでも気づかないでいる

 青い鳥がおりから 逃げ出せたならば

 わたしは間違いなく 後者を選ぶわ



 黄昏の時間 時雨心地しぐれごこち

 埋もれ木に崩れ落ち 呼吸もできないまま

 言葉も忘れて 後悔に立ちくらむ



 これが最期の声だって

 傷つけられたうた 寂しさの鎖に縛られている

 それでも誰かに 愛を与えられるのは

 あなたを愛していると 信じられるから


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