第28話 誘拐されました 2
「皇帝陛下!?」
「ヴァル」
ヴァレンスは剣を抜き、ミューゼオ侯爵に突きつけた。
「全て聞いていた。おまえがタウゼントに命じてティナを誘拐したことも、タウゼントにティナを犯せと命令していたのもな」
ミューゼオ侯爵は後退り、タウゼントの身体に躓いて転んでしまう。
「こ……皇帝よ、私のおかげで継承権争いに勝利したことを忘れましたか!私がいなければ、あなたは第二王子に勝てなかった。今のあなたがあるのは」
「そう、おまえのおかげだな。だから、選ばせてやる。ここで俺に殺されるか、民衆の前で処刑されるか」
「ひッ……」
剣を首筋に当てられ、ミューゼオ侯爵はヴァレンスの覇気を浴びて失禁してしまう。
「わ……私は……」
そこに扉から騎士達が雪崩込んできて、ミューゼオ侯爵を取り押さえた。タウゼントもまだ息があったのか、騎士に抱えられて連れて行かれた。
「私は!裁判を要求する。正当な裁判を!」
「裁判か。それもいいが、おまえの罪状だと、家門の人間全てが連座することになるがいいか。ここで斬り捨てれば、おまえのみの罪にすることも可能だが」
「裁判を!」
裁判をすれば助かるとでも思っているのか、ミューゼオ侯爵はしきりに裁判を求め、ヴァレンスは剣を鞘に戻して騎士に指示を与えた。
「ミューゼオを連れて行け。貴族用の牢屋ではなく、最下層の牢屋に投獄しろ」
騎士達に引きずられるようにミューゼオ侯爵が連れて行かれ、クリスティーナはベッドから下りてヴァレンスに抱きついた。
「助けに来てくれてありがとう」
「当たり前だ(もう二度とごめんだ。ミューゼオの野郎がとんでもないことを言った時は、怒りで頭が沸騰するかと思った。いくらミューゼオを捕まえる為だと言っても、ティナを囮にするような真似は、金輪際したくない。二度と、こんな提案をするなよ。)」
ヴァレンスも抱きしめ返してくれ、一見言葉数少なく感動の再会のように見えて、心の声で盛大に非難される。
「わかってる。もうしないから、ね?ヴァル」
ヴァレンスにギューと抱きついて上目遣いで見上げると、ヴァレンスは大きなため息をついた。
「(そんな可愛い顔をして。騎士達に見られたら、みんなティナに惚れてしまうじゃないか。ああ、もう!可愛いな。こんな場所じゃなきゃ、今すぐにベッドに押し倒すのに。ドレスを脱がせて、身体中にキスをして、☓☓☓を△△△△して……)」
「ちょっと、ヴァル!」
クリスティーナは、真っ赤になってヴァレンスの心の声を止めようとする。
「帰ったらわかってるよな(今晩は☓☓☓が〇〇〇〇して△△するまで寝かせないからな。それで……)」
ドロドロに愛される様子をエンドレスで聞かされ続けたクリスティーナが宮殿に戻った後は、ヴァレンスは心の声を忠実に再現したのだった。
★★★第一部完★★★
冷徹陛下の脳内溺愛が止まりません! 由友ひろ @hta228
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