第3話 ごめんなさい。大丈夫でしたか?

「足痛ったぁ!!!!!!!」

「おい、あんま動かないでくれ……」

僕は相手チームの補欠選手にタンカで運ばれて、コートを後にした。


そして今、病院にいます。はい。


「体が勝手に動いたんです信じてください!!」


『とりあえず足は大丈夫だから、てか関節柔らかくてよかったね。それとも突発的に足への負担を減らしたのかな? それほど足に問題なしだよ!

お大事に!! ドバァん!!!』


「あ、はい。ありがとございました」


ひどい。痛い。なんで。クソクソクソクソクソ。

はぁ、サッカーなんて死んでもやりたくなかったのに!


ジンジンする足を眺めながらふと、蹴ったボールの感触を思い出す。

それと同時に、過去の記憶が脳裏に蘇ってきた。


僕は昔、正確には物心ついた時からサッカーをしていた。

その頃は僕って才能あるんだなと思っていたけど、年齢が上がるに連れてそれは間違いだったと思い知らされる。

肉体的にも精神的にもあたり負けする毎日。


サッカーしてる人はみんな気が強いから、僕みたいに気が弱いやつはプレッシャーから呪いにでもかかったみたいに緊張して、プレーが固まる。


僕は操り人形で言われるがまま動くだけ。

恐怖の感情が僕のプレーを制限した。


その影響もあってか、人だけじゃなくスポーツも嫌いになった。

中学校に上がった頃にはサッカーを辞めて、高校も地元からは少し離れた『チェルリン高校』に進学したんだ。


そんなどうでもいい回想トラウマを思い出しながら家に帰ると、食卓の上に見知らぬ紙が置かれていた。

内容は『チェルリン高校・サッカー部・入部届』と書かれたものだった。


まさかサッカー部が僕の家に……

てか紙が置かれてるってことはお母さんに直談判じかだんぱんしに来てるわこれ。


それにウチのサッカー部は、1軍、2軍と続いて、5軍まである強豪校だから少しでも可能性のある選手にこうやって、紙渡しているんだろうな。僕が奇跡的にスーパーゴールを決めちゃったから…………クソォ!


もし今から入部したとしてもいちばん下の5軍、いやその玉拾いと言ったところか。


「誰がやるかこんなもん!」


ただでさえ最悪な思いをしたのに、これ以上はゴメンだった。

机の上にある紙を無視して僕は眠ってしまった。



「そういえば、サッカー部に新しく入った一年生知ってる?」

『なんだっけ、金髪の子でしょ!?』

「そう! 普段は前髪おろしてるのに、部活になると髪かきあげててさ、しかもめっちゃ顔整ってるの!」

『普段から髪かき上げてればいいのに!』

「あとめちゃくちゃサッカーうまいらしいよ! 友達のマネージャーが言ってた!」

『まじギャップやばいね!』


最近、妙に疲れが取れないんだよなぁ。

「イテテテテ……」

なんか足も筋肉痛だし、何もしてないはずなのになんでぇ。


そう思いながら歩いていると、ドスドスとどこからか足音が聞こえてくる。足早に立ち去ろうと重い足をえっせこ走らせると、突き当たりの廊下に” 突如 ”サッカー部が現れた。


「ヒェッ! ゴリラだ……」


まるで標的発見! の如し、鋭い目つきでコチラを睨むゴリラ一行。

数秒ほど目が合うと、何やらゴニョゴニョと話しているようで、ようやく踏ん切りが付いたのかうなずき合うと、再びコチラを向いてきた。


「……お疲れ様です!! ジークさん!!」

「お疲れ様です!!」


「は?」


バッ! と、物凄い早さで一斉いっせいに頭を下げてきた。え、僕? それにジークさん!?

訳もわからず戸惑っていると綺麗に列を揃えて去っていった。まじなんだったのあれ。


ニ度あることは三度ある、三度あることは……と無限に続いて行くように最近は不思議なことがたくさん起きる。

「まあなんでもいっか」とゴリ押して歩いていると、廊下の曲がり角で何かがぶつかる。


「うわぁっ!?」

「きゃっ!!」

『……!!』


驚いた反動で、前髪がふわっと上がってしまった。何事!?


状況を整理すべく前を向くと、尻もちをついた女子と、必死に目を逸らす女子生徒ふたり組がいた。先輩だろうか?

すぐさま謝ろうと二人の様子を伺うと、顔が真っ赤になっている。慌てて尻もちをついた女子が口を開く。


「ご、ごめんなさい私の不注意で!」

『……』


「こちらこそごめ……」


女子の持っていた水が顔にかかり、サッパリしないので、仕方なく僕は前髪をかき上げる。

——ふさっ しずくが飛び、少量の水が顔にしたたる。


「ごめんなさい。大丈夫でしたか?」


僕は優しく手を差し伸べた。女子とか普段は苦手だけど、今は申し訳ないと言う気持ちが強いので精一杯親切を演じた。

すると「……!!」と言わんばかりに女子は目をそむけて、僕の手だけをしっかり掴んだ。


「好き……じゃ、じゃなくて!! お名前、教えてください……」

『……』


え、僕の!? 僕は口を開いたが、ふとゲームの『限定イベント時間』が迫っていることを思い出し、焦る。

優しく女子を起き上がらせて、僕はその場を去った。ごめんなさい。どうしてもこのイベントだけは逃せないんです!


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投稿時間が遅れてしまい申し訳ないです。

お詫びとしては難ですが、

  【第1回 辰巳匡のウワサコーナー‼️】

と言うことで軽く、ジークに転生する前の匡選手についてウワサ程度にお話しようと思います!

名前 辰巳匡たつみきょう

年齢(転生直前)30歳

身長 185cm

所属 ヴァールセイロナ

特徴 銀髪

   かき上げヘア

   灰色吊り目(感情のない目)

   普段はメガネをしてたり、なかったり……

転生したきっかけ

海外の家でかつての録画を見ているとテロに巻き込まれ、爆弾によって死んでしまう。

「もう一回サッカーがしたい」という思いが届いて、転生したのかも。


また時間があれば、別の回で書いていこうと思います!

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転生10番 爽せき @Natsume7777

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