第2話 僕がやったのこれ!?

どうもどうも。

突然ですが、『自己紹介』をしたいと思います。

なんでかって? …………



「アイツ一人で何言ってんだ?」


「なんかアレらしいぜ、ボードゲーム部の先輩に誘われて、まだ入部するか分かんないけど

『自己紹介』の練習を一応してんだとよ」


「そうなのか、まぁトイレ行こうぜーー」



…………という動機の元自己紹介をやります。


見ての通りココは学校。

そしてこの時間帯は、僕のようながとっくに帰っているはずの『放課後』である。

加えてほとんどの人は、部活にいそしんでいる。


この時間帯なら僕が一人で練習しているところを誰にも見られることはないのだ! 完璧ッ!!


でもわざわざ人がいない時間帯に頑張って残っているので、でもそれはとしてまあまあ失態なので、はやく『自己紹介』をやって行きたいと思います。


この通り、台本も書いてきました。

それでは参る!!


—————————————————————

ボクの名前は『ルカ・ジークレイン』高校一年!

『好きなもの』はゲームと漫画、アニメなんかもダイダイ大好き!

『嫌いなもの』はスポーツ全般。あと——、気が強い人は苦手です。

そんな僕が通っているのは、『チェルリン高校』入学したての新米高校生です!

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あ、一行飛ばしちゃった…………



「今日ジーク君、?」


「なんか自己紹介してない?」


「また乗っ取られたのかな……」



僕の耳がピクピク動いた。

ここではマズイ、場所を変えよう。


僕は家で練習することにし、玄関に向かう。



———そういえば最近さ、『変な事』が立て続けに起きるんだよね。

ほんとかどうか分からないけどさ、

思い出したらなんかイライラしてきた。


はいここで問題です!!

僕が今から『マッジで』意味わかんないこと言うので、それを『誰が言ったか』当ててください。

はい行きます!!


は『ルカ・ジークレイン』というのか……」


の席はどこだ、


「先生……? 誰だ


「友達…………? 、名前は??」


「サッカーやりたい」

「サッカーやりたい」

「サッカーやりた、……」


フンッ!! 僕は勢いよく、下駄箱に靴を押し込んだ。


「 あ、僕ですはい。

  僕ですけど?? 

 『俺の席はどこだ、お前』

  とか言ってたの僕です!!!!!!!

  なんだよ『俺』って、

  そんな一人称つかわないです!!!!

  それに一切記憶にないんですけど??

  クソクソクソクソクソクソ!!!!! 」


そして再び、フンッ!! と僕は勢いよく、靴を地面に置いた。


「ア、アイツ大丈夫か……?」

「さ、最近なんか変だしな……ま、まぁ、そろそろ部活行こうぜ……」

「そ、そうだな、行くか……」


僕の耳がピクピクと動いた。


「 それをさぁ!!

  話したことない女子から言われて、

  僕は、なんて返したと思う?? 」


「お、俺たちか……? わかんねーよそんなの……」

「おう、そうだな……早く行こうぜ……」


「 いや僕が!? ないない、ありえナチョス!

  って言ったんだよ!!!!!!! 」


「ヒィッ……」

「やべーよアイツ、い、行くぞ……」

「 …………。

  ほんとなんで言ったの??

  なに、ナチョスって!!!

  ああもうなんでっ!!!!

  普通に学校生活を———、

  送るはずだったのに!!! 」



自虐しながらも、玄関を出た次の瞬間———



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ゴツン!!

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『 すまーーん!!

  ボール取ってくれないかーー!! 』


「痛ったぁ、もう何!!」


なにかが勢いよく顔にぶつかった。


「絶対許さん!! 絶対シバく!!」


太い声のする方をよく見ると、ガタイのいい男が手をあげながら走ってくるのが見えた。


「げ、ゴリラじゃん……」


怖いから、でシバくことにした。


僕は一刻も早くこの場から立ち去るため、真横に落ちているボールを拾おうとすると———、


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足でボールをすくい上げ、かかとでリフティングした後、なんか蹴り返しちゃう。

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「 ななな、なにしてんのボク!!!!!

  体が勝手に動いたんですけどーー!!

  なんでやねーん!!

  ……え、ほんとに意味わかんない。

  オイ足!! お前、貴様、何者だ!! 」


三回も別の言い方で、何者かを問うてしまった。

ドタバタする僕を見て、男が口を開く。


『その足捌き!! ちょっとアンタ、着いてきてくれ!!』


「は?」


まだ答えていないのに、何処どこかに連れて行かれるボク。


「あのーー、手はなしてくださいよオラァ!!」


心の中でそう言ってやった。

多分バレてないはず。


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そして着いたのは、すぐそこのグラウンド。

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「え何すんの無理無理」


それに運動部の視線って何かこう、見られてるだけで怖いんですけど。


「あ、こんちわっす……」


一応軽く挨拶をした。そして、

「ゴリラしかいないけど此処はジャングルかな?」

と内心そう言ってやった。


『おお来たか!! ウチ怪我人多くてさ、はいコレ着て……』


サングラスをした髭オジに、赤色のユニフォームを着させられる。


「 ちょちょ、ちょっと待ってください!?

  ボクまだ、なにも言ってないですよ!? 」


「早くしろや」と言わんばかりの目で見てくる

ゴリラたち。


「あ、これダメなやつだ……」

 

僕はゴリラのフィジカルに挟まれて、

『サンドウィッチ』になるんだきっと。


僕は諦めて、嫌々ながらコートに入って行く。


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『残り3分、ゲームカウント0-1! 選手交代!』

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失点したばかりなのか、ボールは『コート中央』に置かれていた。



「誰だアイツ?」

「ガリガリじゃねえか」

「帰宅部つれて来んなよ」

「足引っ張るだけだろ」


「 うん、なんかめっちゃ悪口言われてない?

  気のせいかな?

  僕だって好きでコートに入ったわけじゃ、

  ないんだよ?

  なんなら今すぐにでも帰りたいよ? 」


『アンタはフォワード頼んだぞ!!』

「キャプテン! ゴボウが……ですか!?」



ゴボウって言った、はい罰金——。


てか、『フォワード』っていっぱい点取る

ポジションだよね。

絶対に無理だよね。

神様、僕をどうかお助けください!! ……



『はい君、はやく始める!! 時間ないよ!!』


「オイ早くパス出せ!!」


「サーセンッッ」



どうやら試合に負けているようで、ピリピリした雰囲気が伝わる。

早くパス出さないとまずい! とそう思い、

センターサークルのど真ん中で、味方に向かって足を振る。




しかし、次の瞬間——————、



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ボールのわずか横で、足が空振る。

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なっ!? と思っていると、体が急に反転した。

   


 

グリィッ、バコンッッ!!!!!!!!!!!!




「は?」


「ひ!?」


『ふ!!』


「へ?」


「は!?」



「なっ!?」



足の関節を余裕で無視し、後ろに反転して蹴ったボールは、相手のゴール左上を目掛けて一直線に突き進む。


ポリポリと頭を掻いていたゴールキーパーは見たことのない弾丸が向かってくるに気づき、目が飛び出る。


「ハァア!? ちょ、ええぇぇ!!!!!!!」


腰を抜かしてその場に崩れ落ちた。



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「……」

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今、勝手に口角が上がったのを感じた。

体が喜んでいる??



一瞬、僕が僕じゃなくなった気がしたが、

ふと我に帰って思う。



「 ちょえぇぇぇええぇええええ!!!

  僕がやったのこれ!!

  それに足、痛ったぁ!!!!!!! 」


「嘘だろ……ありえない」


「アイツ、助走してなかったぞ」


「それに足の関節がこう……グリィって!!」



—————————————————————

『ピーー!!! ゲームカウント1-1 !!!!』

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サッカーコート全体が、大きな歓声に包まれた。

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