第29話 邪神と女神と魔神

「なんで死んだ俺らが神になんてなっちゃうかなー?」


死んですぐ、真っ白い世界で沢山の人に囲まれて、俺はレンと共に目を覚ました。

周りにいた人は神だと名乗り、俺らも神として生まれ変わったと言った。

しかも、俺らは創造神ですら知らなかった新しい神……イレギュラーらしい。


神ならちゃんと管理して欲しいものだ。

そんなだから、俺らがいたような世界ができるんだよ。


「仕方ないでしょう?トゥレラ。さっさと壊してよ、私が創るから」


レンは何故か俺と同じくらいの歳に成長していた。

でも、相変わらずあの世界で育ったとは思えない純粋さは健在……まあ、本当に俺と同世代になるまで歳を取ったわけじゃないから、それも当たり前か。


レンが成長した姿が見れた事と、こうして何不自由なくレンと共に過ごせる事は大変嬉しいが、正直こうして勝手に神として生き返らせられると、こうー何と言うか、ムカムカイライラとするものがあるな、うん。


「ほいほい……神権【壊世の神】」


「神権【創世の神】【記録の神】」


壊れかけていた世界を俺が壊し、レン……今はクレアーレンという名前がついてるけど、俺にとってレンはレンだから、呼び方はレンでいいだろう。

俺が壊した世界の代わりにレンが新しい世界を創り、ことわりを記録する。


神になってからも見た目は変わらないが、力と名前は宿った。

レンが「クレアーレン」という名前を俺らを神にした“ナニカ”から貰ったように、前は名無しだった俺も「トゥレラ」と言う名前を貰った。


正直、神を生み出せるほどの上位者なのであれば、死ぬ前に俺らを助けてくれりゃぁ良かったのにと思わずにはいられない俺は、与えられた意味のわからない名前すらも忌々しく感じるわけだが……レンもそれに関しては同じそうに感じてるんだろうな。


“ナニカ”について一度も触れようとしない。

それも、神になってから随分経つ今の今まで、ずぅーーーーっと。

レンは怒ると大抵その事象について触れなくなる。……まるで忘れたみたいに。

それを超えると復讐に走るだろうから、今はまだ怒っている程度に収まってるみたいだけど。


「レン」


「なに?」


あの灰色の世界を管理し……ようとして出来てなかった神を俺が殺した時に、近くに居合わせた事もあってか、レンは“復讐を裁定する神”になった。

そして神殺しの力を持つ俺とレンは“邪神”や“魔神”と呼ばれて、レンが拾ってきた“鬼神”と共に【悪神】と呼ばれる存在になっていた。


「レンさぁ、何でそんなに眷属多いの?俺は一人でシュクリスはゼロと、まあ五十歩百歩みたいなもんだけど、お前だけ七人とか多すぎじゃね?」


「拾ったら増えちゃったんだよ……私だって別に増やそうと思って増やしたわけじゃないし」


「レンは拾い癖えげつないからなぁ……」


【悪神】と呼ばれる俺らは、信仰によって力が増減される事がない。

力の強さは俺、レン、鬼神シュクリスの順で強い。それは揺るがないだろう。

だが、今のレンと俺が戦ったらどちらが勝つか微妙なところだ。


何しろ、レンが眷属にした奴らは全員一人でも神に匹敵する力を持つ者達。

そんな存在が七人、そしてシュクリスも恐らくレンにつくだろうからな……。

いくら俺でも少ししんどい戦いになるだろう。


まあ、俺がレンと敵対するなんて事がそもそもあり得ないから、こんな想像は無意味なわけだが。


「トゥレラ、帰ろうよ……一気に二つも世界を創って、設定したんだよ?疲れた」


「ん?そうか、なら帰ろう。あんま遅くなるとシュクリス達もうるさいからな」


「ほんと、シュクリス達も自分達の所に帰ってくれれば良いのにさぁ……何で私の神域にいつくんだろうね……?」


俺もその一人だと言いたげなジト目を向けてくるレンを適当にあしらって、レンの神域へと帰る。

俺がレンと離れると思ったら大間違い‼︎他への執着が薄い分、「大切」、「唯一」と判断したものにはのめり込むのがこの俺だもんね‼︎


他の奴らはつまらないし、やっぱりいつまで経っても一緒にいて楽しいと思えるのはレンだけなんだよなー……神になってからは特に。

だって、急に何か拾ってきたと思ったらそれが神にも等しい力を持つ存在だったり、鬼から神に成り上がった青年だったりするんだから、退屈しないんだよな。

それが可愛い妹なんだから、もう文句のつけどころがない唯一の存在だよ。


「そういえば、最近最高神の娘が生まれたらしいね」


「へー……ま、関係ないしさっさと帰ろうぜ」


レンや俺に手ぇ出さないんだったら、興味ないし何でもいい。

基本好奇心が強い俺だが、あんまりそそられないんだよな……最高神老害絡みだし。


「……うん、そうだね。さっさと帰って寝よ」


ま、怒りは数千年前に俺らの世界の神元凶のクソ野郎にぶつけたから、程々に仕事をしながら人として生きてる時に送れなかった幸せで平穏な生活というものを、兄妹二人で送るとしますか‼︎







「見つけた……私の運命の人王子様


白銀の綺麗な髪とルビーの瞳の、かっこいい人。

敵などいないというように不敵に笑う、私よりも遥かに強大な力を感じられるお方を見て思わず、うっとりと見惚れてしてしまう。


「フォルフール、急にぼうっとしてどうしたのだ?」


「見つけたの‼︎私の理想の方を‼︎」


一目で分かった。

私の運命の人は彼だ‼︎


「フォ、フォルフール?」


「お父様、白銀の髪の方のことを教えて下さいな‼︎彼は私の運命です‼︎」


「そ、そうか、そうか‼︎いやぁ、お前が言うならそうなのだろう‼︎

トゥレラは強いからな、縁が出来て味方になるならそれほど嬉しい事はないぞ……」


トゥレラ様?あの方はトゥレラ様と言う方なの⁉︎


「待っていて下さいね、旦那様‼︎私が必ず迎えにいきますから‼︎」

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