第25話 愚かな神と還らぬ魂
「クレ様、魔王さん達、復活させてあげないんすか?確かちゃんと輪廻の輪に還れるようにしてましたよね?」
説明会は成功に終わり、全ての神が(眷属の場合は眷属が代理で)、今後クレアーレン達が行う行動に関して自身の創った世界や自分達に損害が無い限りは邪魔しない、また可能であれば支援するという誓いを立て、十分に酒を堪能した神々が帰った後、最後まで残っていたアフェールが私にそっと訊いた。
私が復活したのはバエルさん達を殺されたことがきっかけだと知って、【再生】の力を持つ私が彼らを生き返らせないのが不思議だったのだろう。
「そう、私はそう設定してた。だから、通常なら魂から生き返らせることが出来たはずなんだよ……」
「通常なら?何かあったんすか?」
彼女には話しておいた方がいいかと判断した私は、後片付けを眷属達に任せ、アフェールと会場の端の方に移動する。
流石に四人での片付けは大変だろうから、他の眷属やトゥレラとシュクリスにも、「お礼は何でもしてあげるから、片付けを手伝って」と伝えてちゃんと片付けをしてもらえるようにしておくが、ちゃんと手伝ってくれるだろうか。
一抹の不安を抱えながらも、端の方に置かれたままだった椅子に腰掛けた私はアフェールにも椅子を勧め、彼女が座ったところで再度話を進めた。
「あの世界はフォルフールが作った物だけど、あの無能がちゃんと世界の
「うす。千年前の事はそれも原因の一つっすし、世界を創った神が設定する事が出来ないなんて前代未聞っすしね」
「あの世界はフォルフールが過剰に神力を注いだせいで、内包されているエネルギー量が異常に多いの。だから私は、魔族という人間以上に生産必要エネルギーが多い種族を作り出して、世界からエネルギーを消費させていた。人間と共存出来るように他国への侵略を考えない温厚な性格にして、人間と同じように輪廻の仕組みにもきちんと組み込んだんだよ」
「ああ、ああ……そういえば、そんな感じの
「そうだよ」
内包するエネルギーの大きさに耐えきれなくて、近いうち(約二年後程度)にでも崩壊するだろうというのが、あの世界について知る神々の共通認識だ。
千年前、私はその危険性について忠告して、その解決策として設定した理についてもフォルフールに説明した。
まあ、あの無能は一つも聞いていなかったからこうなったのだが。
「それはまあ、私でもわかるんすけど、何で生き返らせるのは無理なんすか?」
「魔王と大半の魔族の人達は、女神が授けた神器と女神の神権で魂ごと消されたから。そうじゃない魔族の人達は、女神が魔族の人達は輪廻の輪から弾かれて魂が消滅するように設定を弄りやがったから。私の【再生】の力は、強力な分縛りが多いから、魂が手に入らないと流石に無理なの」
正確には魂がなくても何とか力は使えるけど、蘇生は不可能だ。
その人と近い肉体を持っていても、その人としての記憶はないし、その人とは全く違う性格や能力の人物になってしまうから、蘇生とは言えない。
「うわ〜…………あの馬鹿、魂ごと消去とかアウトすぎるっしょ。神に逆らった
そう、魂を消滅させるのは、よほどの罪を犯したものに対してしか許されていない。
なのに、あの女神はやりやがったのだ。
だが、この件に関して流石に魂に関してここまで詳しく知れるのは私くらいだから、レヒトさん達もフォルフールが犯した禁忌として記録出来なかったのだろう。
「バエルさん達……魔族の人達はもう還って来ないから、私はあんな復讐を決めたんだよ」
「なるほどっす。いつから動くんすか?」
「今から数えて、天界で二ヶ月後……あの世界で十ヶ月ちょい、フォルフールの天界追放処分が終わって異世界人と接触を図るであろう頃に動き出す予定。この計画では女神と最高神が一緒にいて、異世界人と連絡をとっている事が条件になるからね」
「大切な世界が瓦解していることにすら気付かない愚かな神に、華々しく散る機会をあげるとはクレ様、随分優しいっすね〜‼︎協力は惜しまないんで、天から楽しく見させてもらうっすよ」
「楽しみにしててよ。絶対、面白いよ」
「うすうす‼︎……んじゃ、そろそろ帰るっす。また何かあれば呼んでくださいね〜」
抱えていた疑問が解消されたからか、満足げに手を振りながら帰って行くアフェールの姿を見送った私は何故か以上に張り切って片付けをしたトゥレラ、シュクリス、眷属のみんなに気圧されて「何でも」と気軽に言ったのは失敗だったかもしれないと感じながら、天界から自分の神域に帰った。
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