第24話 説明会は盛大に‼︎

眷属達やシュクリスと再び顔を合わせ、彼らに計画の説明が終わったところで、私は最高神とクソ女神以外には【魔神クレアーレンが復活した】と一斉連絡で知らせた。


この時点で天界の時間では私が復活してから四日、箱庭の時間では既に一ヶ月経っている。箱庭からは、クソ女神に向かって祈る似非エセ英雄や住民の声が聞こえて、クソ女神への祈りの盗聴をしたのは私だが、とてもとてもイライラとしている。


すぐに盗聴はやめたが、どうしてもイライラが消えないので他の神々に追加で連絡を入れて、最高神やフォルフールに復讐をするのは決定事項で、その上で神々へ今後どのように動くかの説明をする会を開きたいという意を伝えた結果、連絡を入れた全ての神から参加、あるいは忙しくて行けないが眷属を行かせるなどという色良い返事をもらった。


想像よりもずっと参加率が高かったので、私は復活と招集の連絡を入れた日から二日後に天界の隅で説明会を開く事にし、その為に眷属達にも手伝ってもらって準備を進めた。こういう時、丁寧で穏やかそうな見た目とは裏腹に作業はガサツなシュクリスは当てにならないし、トゥレラは作業は丁寧だがすぐに面倒臭がるので同じく当てにならない。

眷属でもジロソニア、ヤーマルギーア、オクニリアの三人は細かい作業が嫌いなので、頼りになるのは眷属の中で丁寧な作業が苦にならないタイプのアラゾニア、アフィスティア、オリギー、ラグニアの四人だったりする。


仕方がないので魔法が使えるとはいえ、私含めて五人で数十の神が来る会場の準備をする事になってしまった。


「レヒトさん、お久しぶりです‼︎」


何とか準備を間に合わせた説明会当日、会場に来た初老の男神を見てつい反射的に声をかけてしまった。


「おやおやこれは……クレアーレン殿、久しいですのう。千年前、じいは無力で申し訳なかった」


彼は最高神が神々の争いの調停を行う際にその判断の元になる書類を作ったりもする、法を司る神々のトップであり、私達【悪神】と共に神が守るべき禁忌の作成を行なった、関わりの深い神でもあったが、何よりも本当の祖父のように私達兄妹とシュクリスの事を気にかけてくれていた神だったから。


「謝罪なんてやめて下さいよ‼︎私としてはお礼を言いたいくらいですよ⁉︎その後は随分尽力してくれたと聞いてますからっ‼︎」


最高神に隠してフォルフールの監視をしてくれていたからこそ、私の正当性が主張しやすくなったし、フォルフールの罰を緩くする為に、最高神パドレモが色々と働きかけていた事は他の神から先ほど聞いていたから、その中でも負けずに中立ながら限りなく私寄りの判断の書類を書いてくれたレヒトさんには、本当に感謝しかない。

そんな相手に、誰もどうしようもなかった事で謝られても困ってしまってワタワタとするしかできなくなってしまう。


「そうは言ってもトゥレラ殿も、クレアーレン殿も、シュクリス殿も、三人とも皆が爺にとっては孫のようなものですからなあ。孫のために動くのは当然でしょうに」


「レヒト様、クレ様が困ってるっすよ。クレ様の周りには、レヒト様みたいに善良な人が少なすぎてそういうのに免疫がないんじゃないっすか?あ、クレ様お久っす。クレ様がいなくて寂しかったっすよ」


「アフェール、久しぶり。相変わらず元気だね」


「うす‼︎」


良く言えば朗らか、悪く言えば能天気な口調で私とレヒトさんの間に割って入ってきたのは、商売を司る神アフェール。


彼女は司るものの関係上、好き嫌いがハッキリとしていて交友関係が狭い事が多い神の中では珍しく、多くの神と信頼関係を築いている。

私やトゥレラ、シュクリスは他の神とは違う過程を踏んで生まれた事もあってか、神というくくりの中で異質な存在なので多くの神と交流があるが、そうでない神の中では彼女はダントツで交流を持っている神の数が多いだろう。


「あの駄女神ちゃん、人間を守りたいっていう気持ちだけは評価出来たのに、やっぱそれ以外がマイナス過ぎて私ですら仲良くなろうと思えないっすね」


「それで正解。あんな自己中心的で、神なのに人間を害するものは自分の手で排除してしまうような神失格のやつと仲良くなるのは、いくらアフェールでも無茶だよ。

あれとは多分、ゴブリンとかオークみたいな奴しか分かり合えないと思う。そう思う位には話が通じないし、理解も出来ない存在だよ」


「相変わらず辛辣っすね〜‼︎クリ様、回復したそうで良かったっす」


見た目と口調は若いが神の中でも古参の方にあたるアフェールは、多くの後輩神を褒めて伸ばす方針で支える人気の神だが、そんなアフェールでもフォルフールを辛辣に評価し、シュクリスが飲み物を私に差し出しながらそれ以上に辛辣に評価し直した。


「うん、ありがとう。……レア、全員がそろったからそろそろ始めて良いって、トゥレラさんとアラゾニアが言ってたよ」


シュクリスはアフェールが続けた言葉に控えめに返しながら、私の耳に口を近づけてトゥレラとアラゾニアからの伝言を耳打ちした。


「ありがとう、シュクリス。じゃあ、始めるね」


「うん、行ってらっしゃい。僕はみんなと下で待ってるから」


シュクリスの言葉に頷き、会場の一段高くなっているところに赤ワイン風のぶどうジュース片手に立って、神々を見下ろす。ザワザワとしていた会場が、私が壇上に立った事で静かになっていき、視線が私に集まる。

この緊張する状況下で行う私の説明が失敗に終わった場合には、計画を修正する必要が出てきてしまうかもしれないのだ。


「皆さん、急な話だったのに集まってくれてありがとうございます。今からする話は私、魔神クレアーレンが九百九十七年前……ほとんど千年前のあの日に女神フォルフールに殺されてから今までどのように生きてきたかと、これからどのような事をしようとしているかの話です」


緊張を力にしろ。失敗した時など考えるな。何が何でも、のだ。


そう決意した私は多くの神々の視線の中、復讐の第一歩を踏み出したのだった。

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