第8話 怖くない、怖くないったらない‼︎
勇者達が見当違いの決意を固めているのを自身の持つスキルで覗きながら、私は
あの方だ‼︎あの方だ‼︎我が
探し求めた存在が目の前にいる事に、私は珍しく冷静さを失っていた。
早く、早く行かねば……でも、昔と違って怯えたようにキョロキョロと辺りを見回している主人に今のままの姿で会えば、怖がられてしまうかもしれない。
どうしよう……あの方に嫌われるなんて耐えられない。
一刻も早くあの方に会いたい。けれど、今のままでは会えない。
極限状態で必死に頭を回した私は、一つ解決策を見つけた。
『そうだ‼︎これをこうすれば……』
ふふふっ‼︎
昔忌々しい同類が使っていた手を思い出して思わず笑いが漏れる。
『待っていて下さい、主人様』
今、会いに行きますからね‼︎
◇
夢見が悪くて眠れず、まだ満月が高く昇っている時間に起きるといつも一緒に寝ているバエルさんがいなかった。
冷たくなった布団が心細くて一人で眠るのはどうしても怖く、バエルさんを探す為にベッドから降りて冷えた空気の廊下を歩く。
先の見えない真っ暗な廊下。
ぺたん、ぺたん、ぺたん。とスリッパが鳴らす音が廊下の端で反響するのが怖い。
あ、いや、怖くなんてないけど……。
ほんと、バエルさん、どこ……?
もう、この際アガレスさんとかウィサゴさんとかロクトお兄さんとかでもいいから、誰かいないの……?
「カア〜」
「ふゅわっ⁉︎」
大きな音に驚いて思わず変な声が出る。
大丈夫。怖くない、怖くない、怖くない、怖くない、怖くない。
私は十六歳の高校生だ。怖くなんてないんだからっ‼︎
トンッ。
「ぅきゃあ‼︎」
何かが私の肩を叩いた。
バ、バエルさん、助けて‼︎
「すまん、レン悪かった」
振り返るとそこには手を出した状態で固まっているバエルさんと、その後ろで私を覗き込むロクトお兄さんがいた。
なんだ、さっき肩を叩いたのはバエルさんか……。
「まさかそこまで怖がるとは……」
こ、怖がってなんかないもん‼︎ちょっとビックリしただけだもん‼︎
怖くないったら、怖くない‼︎
「ああ、ほらレンちゃん。
涙目でプルプル震えながら睨んでもちっとも怖くないですよ?」
涙目になんかなってない‼︎
ロクトお兄さんなんか、抱き上げてくれたって許さないんだから‼︎
背中をトントンしたって、許さ、ないん、だからね……。
「カア‼︎」
「ひゃあ⁉︎」
さっきよりも大きな音が聞こえて、また変な声が出る。
「レンちゃん、そこまで怖がらなくても大丈夫です。カラスですよ」
ほら。と促されてロクトお兄さんが指差す方向を見てみると、音がした窓枠には月明かりに照らされた黒い身体と真紅の目を持った大きなカラスがいた。
さっきから聞こえた音はカラスの鳴き声だと言われて納得する。
散々私の事を
「もしかして、開けてほしいの……?」
何度かコンコンと突いたところで私が訊くと、カラスはまるで私の言葉に頷くようにして首を振る。
バエルさんに開けてもいいか確認して、ロクトお兄さんに頼んで窓を開けてもらうとカラスは城に入ってきて私が伸ばした腕に
何がしたいのか見守っていると、カラスが口を開き……
『驚かして申し訳ありません。怖がらせるつもりはなく……』
しゃ、喋ったああああああ⁉︎
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