その後のお話 王都の結婚式から一年後のおはなし


 元王国・王都での盛大な結婚式からもう1年がたった。

 商業都市に居を構えた俺はアスモディエスと夫婦仲良く、時にはケンカもするけれど割と仲睦まじく暮らしていると思う。つい先日1人目の子宝にも恵まれたし、新婚生活は順風満帆なのではないだろうか?

 意外だったの敵として交戦していた時とは違ってアスモディエスが滅茶苦茶に甘えたがりなのと、それと同じくらい俺を溺愛してる事だけれど……まぁ夫婦仲が良好なのは良い事だと思う。


「……よう、待たせたなエリオット」


「トール!いや、俺も今来たところだよ。半年ぶり位か?」


 半年ぶりに見る親友の顔は変わっておらず、喜びと共に抱擁を交わす。 


「あー、それぐらいだな。一仕事終えたから俺達もまたしばらくこの街で落ち着けそうだぜ」


 奥さんの仕事に付き合ってこの街を離れていたトールが奥さんと一緒にこの街に帰ってきたので、今日は男同士2人で呑みにいこうと誘ったのだ。

 俺がアスモディエスと結婚して程なくして、トールもまた身を固めていた。

 トールが認めた最大の好敵手でもあるインパクターの娘、サリィ嬢とトールは結婚をしたのだ。変身魔術が得意でネトリック王子の奸計について潜入捜査をしたのもサリィと聞く。アスモディエスとも親しい友人なのでお互いの家を行き来しているので今では俺もよく知る相手となったけれど、流石魔王十将の娘だけあってその変身魔術は凄まじい。本人曰く、変身にかけては魔王随一と絶対の自信があるけれどそれもあながち嘘じゃないと思う。

 そうして馴染みの飲み屋に移動し倒れ達は席に座り、酒が届いたら盃を打ち合わせた。


「「―――乾杯」」


 そこからこのお互いこの半年に在った事を酒の肴にしながら、だらだらと話す。


「そうか、お前のトコ一人目が産まれたか!いやー、めでたい!任務中ですぐに会えなくて悪かったな」


いや、気にしないでくれよ仕事だったんだし。……あの王子の残党だったんだろ?」


 トールはこの半年ほど、王子の残党狩りをしていたのだ。人魔連合が掴んだ情報から王子の残党がこそこそ隠れ潜んでいるという事が発覚したのでサリィ嬢が潜入をして尻尾を掴み、そこから兵を率いて一網打尽にしたらしい。

 事が事だったのとアスモディエスからも行ってやってくれと言われたが、トールに止められたので俺は同行せずこの街で留守番になった。


“身重の奥さんが居るならそっちを優先しろ、残党ぐらい俺でも余裕だって!―――すぐに帰ってくるからよ、帰ってきたら一杯やろうぜ”


 そんな言葉を残して残党軍の掃討に向かって行ったが、無性に不安になるメッセージすぎて内心結構心配だったが無事に帰ってきてくれて本当に良かった。


「ああ、残党はクズの集まりだったよ……女子供を攫ったり、まぁ一通りゲスでクズい事やってたよ。無辜の民を恐喝(ガジ)ったり貴族を沈殺(しず)めたり児童臓物(ガキモツ)を売捌(トバ)したり、さすが王子の息のかかった連中って感じで社会道徳だとか無かったわ。残党は滅ぼさなきゃいけない悪なんだが―――けどお前の方も港を襲撃した海竜、しかも黒い亜種を1人で討伐してたんだろう?そっちの方が凄いよ」


 この間港を海竜が襲撃したのでそれは俺が討伐した事を言っているのだろう、普通の海竜と違って黒い亜種で通常種よりもはるかに強かった。

 ちなみに討伐した海竜の素材から作った武器はすごく性能が良いものが出来るというので今は片手剣と盾を武器に使わせてもらってもいる。


「一人じゃないさ、街の兵士たちもバリスタや大砲で援護したり爆薬詰めたタルを設置してくれたりと協力してくれたしな。

 それにトールが考案した竜種迎撃用の大槍の防御機構がトドメの一撃に活躍してくれたし。でもあの大槍起動するとなんか勇壮な……ファンファーレと共に何かどこか英雄っぽいイメージが湧く音楽が流れだすのなんでなんだ?」


「そこはお約束ってやつでな、歌は気にするな。結果としてお前がまちにのこっていてくれたおかげで街の被害が最低限度ですんだのは幸運だったよな、お疲れ様」


 ……しかしまぁ残党軍の所業は聞いているだけで嫌な気分になるな。無事トールたちが殲滅してくれて本当に安堵しかない。この平和が続くように俺も一層身を引き締めねば、と思う。


 トール夫妻が兵を率いて滅ぼした残党軍は、その場で死ななかったものは捕縛されて拷問にかけられて情報を吐き出させるらしい。

 拷問と言えば結婚式の後、ネトリックやマルールを拷問している拷問官と会ったが2人は精神が折れたり復活させられて無限の責め苦を受けてきちんと罰を受けているらしい。悪い事したら天罰が当たるんだよね。人間はね、真面目に生きるのが一番なわけよ。


 最近はネトリックの余罪が増えるたびに処刑ノルマが増えるので死ななければいけない回数があまりにも多くなりすぎたので、処刑回数のペースをあげるためにネトリックに分裂魔法をかけてゆるくて簡単な感じの見た目になった生首だけのネトリック、「なまくびネトリック」という魔法生物を生成する技術を開発したらしい。

 「おちついていってね!」「ねんやー」「ぷきゅー!」等と簡単な人語を話し、痛めつければブサイクな顔で泣き叫び、無力で簡単にひねりつぶせるなまくびネトリックはその受けたすべてのダメージがネトリック本体にフィードバックするという習性があるため一切の無駄がない。

 ネトリックの被害に遭った被害者や遺族、他にもネトリックに恨みを持つ人には家までなまくびを出荷してくれるようで手のひら大から両手持ちサイズまで、虐待しやすいサイズ・お好みの虐待に最適のサイズを提供してくれるとかで、大人気で順番待ちだとか。一部ではなまくびネトリック虐待、“な虐”と呼ばれるブームも密かに起きているらしい。

 犯した罪の償いとして、公共のサンドバッグとして、ネトリックはこれからもふるぼっこにされて痛みと苦しみを与え続けられるのだろう。終わりがないのが終わり、それがネトリックの罰。

 マルールの方も色々とエグい余罪が出てきているのでマルールもどうなるかなぁ……。

 ……しかしまぁ、魔王軍の拷問官有能すぎる案件だよなー。

 終戦以降、拷問官が大活躍し続けているので地位や処遇改善してるみたいだけどまぁ、そうなるな。フェクターっていったっけ、あの拷問官。

 今度また挨拶に行こうかな。“な虐”がどういうものかちょっとみてみたい好奇心もあるし。


 それから今後の事について色々と打ち合わせたりもした。残党軍というのは不思議で何度潰しても末永くどこからか湧いてくるとトールは語った。

 ネトリックのはた迷惑なところは性格や性癖が外道のクズというのは差し引いても自身の手腕で犯罪の流通網や各地に集団をつくったりする実務面では有能だったこと。おかげで王子の残党軍という厄介集団を遺していったことだ。

 公共の敵にあたるのでそれらは人魔が協力して都度滅ぼしていく事になるだろうけれども、それでも完全に潜伏されていると中々みつけれないらしい。

 トールは終戦の3年後くらいに都市に隕石おとしたりするデカい事をやりそうな集団が湧いたりしそう、残党軍だしと言っていたが何か心当たりがあるのだろうか?トールは時々不思議な事を口走るのだ。


「なぁ、トール。お前って何者なんだ?」


 酒の場ということと勢い、雰囲気もあったので改めてトールに聞いてみると、トールは瞳を閉じて優しく笑った後、じっとこちらをみて言葉を返してきた。


「江戸川コ……オフン、探偵さ!!って冗談はさておき。

 俺は元々この世界の人間じゃないのさ。別の世界で死んで、女神さま……に頼まれた不思議なお嬢さんにお前やこの世界を助けてやってくれって頼まれた異世界転生者なのさ」


「異世界からの、転生者……そうか、だからトールは色々な事を知っていたんだなぁ。で、その故郷がニホンノトウキョー?なんだな」


 トールが嘘をつくとは思わない。だからそれは真実なのだろう、そう理解できるくらいにはトールとの間には絆があるし、トールを信頼しているからその言葉をそのまま受け取る。


「あっさり信じられても拍子抜けだけどまぁそういう事さ。でもこの世界に来てお前と友達になれてよかったと思ってるよ」


「……俺もさ、トールに会えて本当に良かった」


 トールと2人になるとついついこそばゆいことを言ってしまうなぁ。

 ―――それからお互いの家の事を話したが、アスモディエスは早速2人目が欲しい、子供は10人くらい、一家で十将そろうぐらいは産むから!!というのでン=ナギのカヴァー焼きとかナグァイモとか精力のつく食べ物を毎日用意されては搾り取られていることを話たりした。別にン=ナギ自体は嫌いじゃないが毎日ン=ナギばっかりたべてるので股間がビンビンですぐ反応するようになってしまうのでもうちょっと手心加えて欲しいと思ったりもする。俺も自炊していたので俺が料理を作ろうとすると交渉したりもするが、勢力の付く料理からは逃がしてくれません……フフフ……。


「あー、うちも討伐が終わって落ち着いたから1人目が欲しいって言っていて似たようなもんさ……っていうかサリィとアスモディエスが仲良いし日中お茶会とかしてるからからうちもン=ナギ生活になりそうな気がする」


 これからの搾り取られる生活、もとい性活に遠い目をするしかなかった。―――王子が残していった面倒くさい火種は残ってはいるが、平和な世界を護る為に頑張ろうと決意を新たにするのだった。

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