最高の解決策

 隆一たちは、連絡艇の中、一言も発せず、母船に戻った。

隆一は、時々オメガたちと連絡を取ったり、地上で会ったりしていたが、それ以外の時間は部屋に入ったまま、他の調査隊のメンバーとも話さずにいた。ほかの乗員たちも重苦しい雰囲気のまま過ごしていた。


数日後、隆一から、解決策が見つかったので、前回と同じメンバーの江崎副隊長、マキ、真司の三名で前回と同じ場所に来るように指示あった。

現地に着くと、そこに四方にステージが作られ、観客が座っていた。真司は放送の操作応援で離れが、江崎とマキの席が用意されており、二人はそこに座った。



 しばらくすると、隆一が真っ白な衣装で現れ、ステージに座り話し始めた。

「皆さん、地球から来た伊藤隆一です。皆さんに謝らねばなりません」

江崎とマキの二人は、隆一が何を言おうとしているかわからなかった。

「ご承知の様に、前回調査隊は、事故で地球に帰れなくなり、地球との連絡手段がありませんでした。地球では行方不明になった調査隊の場所が分からず、探すことができませんでした。孤立無援になった調査隊をあなた方は暖かく向かい入れ、調査隊のメンバーはその人生を全うすることが出来ました。新たに来ましたが、同じ調査隊のメンバーとして、あなた方に感謝します」


江崎は、感謝は分かるが、何を謝罪しようとしているかわからなかった。しかしながら、何とか同じ調査隊と思わせようとしていると感じていた。


「前回調査隊は、あなた方に色々なことを伝えました。それはあなた方への感謝の気持ちでもあったと思います。そのことであなた方の生活は大きく変わりました。多くの場合、改善されたと思います。しかし、前回調査隊も人間です。ミスをしました。正確には誇張して伝えた部分があります。

それは、私達地球人類を含むこの星系の以外に存在する人たちの認識です。全てが悪魔の使いではありません。確かに悪魔と思えるような星系人はいます。しかし、多くは善良です。残念ながらその善良な星系人であっても、何人かよくない考えを持つ人がいます。割合の問題です。前回調査隊の中にもそのような考えを持った人がいたかもしれません。実行できなかったとは思いますが。

前回調査隊がこの星に来た時、あなた方は他星系の知識がないため、他の星人について考えも及ばなかったと思います。だから、調査隊は誇張して伝えたのだと思います。将来、地獄を見ない様に。

しかし、今、あなた達は、新しい考え方、新しい技術をお持ちです。無論、今、悪魔のような星系人が戦いを挑んできたら、厳しいでしょう。私達、地球人類も一度、滅亡しかけました。しかし、対応を誤らなければ勝てます。

そのためには、前回調査隊が行った過ちを訂正しなければなりません。そして間違えをお伝えしたことを謝らねばなりません。私は、その謝りが本物であることを証明するため、切腹します」


マキは意味が分からず聞いた。

「セップクってなに?」

隆一がこともなげに答えた

「昔、武士が行っていた腹切りだよ」

江崎も声を荒げた。

「隆一くん何を言っている!無茶苦茶むちゃくちゃな話だ」

隆一は微笑んで、目の前に置いている短刀をつかんだ。

マキはやっと隆一が何を行おうとしているかを理解して叫んだ。

「リュウやめて!」


隆一は、無造作に短刀を下腹に突き刺した。

隆一は、その激痛で声を出しそうになったが、我慢した。

(こんなに痛いのか。初めてだからな)などと思っていると腹が熱くなって来た。

腹筋が収縮して体が前かがみになった。

床が迫って来た。目の前が真っ暗になった。

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