神主

 エステが『局で報告』した翌日の午後、隆一とマキはエステと共に『局』に居た。

「あなた達が高度の技術をもち、別の星から来ていることは理解しました」

神主のゼータが厳かに答えた。

「しかしあなた方が、前回調査隊の正当な後継者なのか、悪魔の使いなのか、私には判断できません。このため本部に出向いて下さい。混乱を避けるために、準備が出来るまでの間、他の場所に訪問しないようお願いします」


ゼータとの話は、拍子抜けする位、事務的で簡単なものだった。

マキが尋ねた。

「事務的ですね。もっといろいろ質問があると思いました」

ゼータは笑いながら続けた。

「私も個人的には質問したいです。しかし、私たちは、何度も訪問者が来た時の対応を検討しました。その結果、できるだけ早い段階で本部の最高司祭と直接面談することが望ましいという結論に達しました」


隆一が確認するように尋ねた。

「ずっと、私たちが来ることをシミュレーションしていたわけですね。それにしても簡単ですね」

「私に判断する資格がありません。それに、あなた方が悪魔の使いであったとしも『調査隊です』と答えるでしょう」

「確かに」隆一も納得して、続けた。

「では、何故、私たちと会いたいと言われたのですか?」


「理由は、いくつかあります」

ゼータは自分の意見を言いたかったのか、嬉しそうな顔をして話し始めた。

「まずは、私の主観的な感想を最高司祭に報告する必要があること。私はエステと同じく、あなた方を正当な調査隊だと思っていますが、最高司祭に私の個人的感想も報告する必要があります。

第二に住民にあなた方が来たことが事実だと知らせる事。当たり前ですが住民もあなた方に興味を持っています。あなた方と住民一人ひとりを会わせることは物理的に不可能なので、少なくともここで実際に会っていることを事実として、全住民に認識させるためです。

第三はついでですが、私も直接話がしたいと思っているからです。それが最大の理由かもしれませんね」


ゼータは淡々と話していたが、隆一は驚いた。

「住民はみんな私たちのことを知っているのですか?」

「無論です。エステから話しているはずですが、前回の調査隊のことは学校で習います。私たちの現在は調査隊が色々教えてくれたことを実践した結果です。今回の調査隊で今後どの様に変わっていくか、この星の全住民が期待を持っています」

「こっそり来たつもりでしたが、全員私達に注目しているのですか?」

ゼータは、笑いながら応じた

「この世界の全住民が興味を持っています。ここで、私一人が先走りする訳には行きません。多分、最高司祭と話はライブ放送になるでしょう」


隆一が再び驚いて質問した。

「ライブ放送って? 放送網ができているのですか?」

「惑星規模の放送網はすでに完成しています。今現在は音声のみですが、アナウンサーが外で放送を行っていると思いますよ」

「それでは、最高司祭との会合はライブの音声放送ですか?」

「調査隊は動画像放送の技術まで教えてくれていました。最近やっと、動画対応の設備を構築し、動画放送を実現できるようになりました。私達全員が、あなた達と最高司祭の会合を楽しみにしています。本部での会合は動画放送になるでしょう」

隆一が独り言のように言った。

「何かとんでもないことになりそう」


ゼータは、そのまま微笑みながら続けた。

「エステはすでにとんでもないことになっています。彼はプロメテウスと共に、この星で一番の有名人です」

「どういうこと?」

隆一とマキは同時に発して、エステを見た。

エステも、きょとんとして、ゼータを見ていた。

「エステくん、今日の早朝、インタビューを受けたでしょう」

エステは、話の進展が分からないまま答えた。

「はい。地元局のインタビューを受けました」

ゼータは面白そうに応じた。

「インタビューが放送されました」


プロメテウスが割り込んで補足した。

「三時間程前に、惑星全体に放送されました」

「放送されたって、三時間前だろ。まさか……」

「そのまさかです。言語統一されていますので、一瞬の間に惑星全体で認識されました。母船で江崎先生も驚いています」

神主のゼータが悪戯イタズラ小僧のような目をしながら言った。

「その放送のことで、私からお願いがあるのですが……」

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