接触

 連絡艇は数分で水面に飛び出した。

真司が叫んだ「接触!」

「何?」

衝撃がないので隆一には何が起こったかわからなかった。

「地元民の船を跳ね飛ばしたみたいです。生体反応一名、弱まっています」


「助ける!」

状況を理解した隆一は叫ぶと同時に、デッキに向かった。

真司も応じた

救命ロボットRBを向かわせます」

隆一とRBにより、湖面に漂っていた現地人を救助し、デッキに待機していた緊急医療ポッドEMBに現地人は収容された。


「隊長、すみません。生物汚染の安全確認ができないので、隊長もデッキに留まって下さい」

「俺のことは後でいい。まずは助けることだ。母船で治療にあたろう」


モーガン船長の声が割り込んできた。

「母船が汚染される危険性があります。現地に留まって下さい」

「いや。現地人は救わねばならない。治療室を密閉すれば済むことだ」

「しかし……」

「隊長としての最優先命令。プロメテウス実行しろ」

「プロメテウス確認。実行します」



 連絡艇が母船に到着し、現地人は医療ポッドに収容され治療が開始された。

隆一は、連絡艇から降りはしたが、母船のデッキに一人取り残されていた。

「プロメテウス タオルくれ」

「了解、手配します。江崎副隊長崎からコンタクトがありますので、繋ぎます」


「江崎です。彼は大丈夫です。脳挫傷ですが、命に問題ありません。視聴覚神経が切れていますので、バイオナノマシンで修復予定です。ただ神経再生に時間がかかるので、渡辺くんが視聴覚バイオモニターを神経中継装置に改造予定です。元が視聴覚のモニターですので、彼が見聞きすることを、そのままこちらでモニターでるはずです。二三日すれば、プロメテウス経由で彼と会話できるでしょう」

「有難うございます。むちゃなことをしてすみません」

「確かにむちゃでしたね。モーガン船長とも話しましたが、彼を助けるという判断は正しいと思います。しかし、緊急とはいえ最優先命令はむちゃでした。おかげで船長も私も、あなたの隊長資格適合に関するレポートを書かねばなりません」

「ご迷惑をかけてすみません。隊長資格適合と言うことは、私は隊長を首になるのですか?」

隆一は期待を込めて聞いた。

江崎は隆一の意を察して、笑いなが答えた。

「残念ながら、今しばらくは隊長のままです。マキさんが来たので、代わります」

「いや、ちょっとまって……」


「リュウ、最優先命令なんか出して。みんなテンヤワンヤよ。医療系にサポートロボットが足りなくで、私も生物汚染の安全確認に駆り出されている所よ。暇なのはあなただけ」

「ごめん仕方なかった。『生物汚染の安全確認』と言うことは、いつここから解放されるか分かる?」

「検体評価の結果しだい、一週間くらいね」

「検体評価って……俺のこと」

「ほかに対象者はいないでしょ。だから体調不良にならないでね。なると面倒だから」

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