現状報告

 数日後、全員を交えた会議が開かれた。

まずは、AIのプロメテウスから、電波傍受の結果が報告された。

「音声放送がメインですが、映像放送も試行段階ですが行われています。学習された語彙は増えました。やはり言語は統一されています」


江崎が補足する。

「三百年前は、集落単位で言語も異なっていたらしい。前回調査隊の影響だろう」

これを受けて、再度プロメテウスは発言する。

「言語は自然発生ではなく、人工的に作られたものの可能性が高いです」


「具体的には?」

「単語の格による変化がありません。また、強調による発音の変化もありません。文法は非常に簡素化され明確です。あやふやな表現がありません」

マキが尋ねた。

「『あやふやな表現がない』ってどういうこと? 不明確な内容は言わないということ?」

「不明確な内容では、それなりの修飾語で対応しています。『あやふやな表現』というのは、『できなくもなくはない』といった多重否定の表現です。この多重否定のため、私の言語ブロックの負荷が大きいです。可能なら地球の言語が全てこれに統一してほしいです」

トーマスが笑いながら反応した。

「やっぱ、APの再評価が必要だな」



 江崎が話題を変えて発言する。

「肉体的にも特徴がある。地球人類とほぼ同一だ。さすがに前回調査隊の影響で肉体が変わった訳ではないが」

モーガン船長が尋ねた。

「今回の調査隊にそれによる影響はありますか?」

「直接的にはないと思われますが、現地人が何らかの感染症にかかるとその影響を受ける可能性があります。その他の細菌感染の危険性を考慮する必要がありますが、今のところは、現状計画のままでよいと思われます」


続いて、技術担当の真司から惑星質量異常の報告がなされた。

「異常の原因は、高密度のアルミニウムです。正確な埋蔵量は分かりませんが、惑星には相当量埋蔵されていると思われます。また、この物質は通常状態に戻る際、エネルギーを放出するようです。これも詳細は不明ですが、ベータムーンで行われた実験の結果から見て、核反応に匹敵するエネルギー放出です。ただ、現時点で惑星に高密度アルミが長期存在していることから、エネルギー放出の条件は特異条件下でないと起こらないと考えられ、調査に影響ないと思われます」

彼には珍しく、専門用語を交えず一気に説明した。



 真司はそのまま続けて埋蔵量調査の話をしようとした時、江崎が意を決して、話始めた。

「やはり、言わざるをえないな。実は、隆一くんのお父さんから高エネルギー物質がある可能性を聞かされていた。今まで黙っていたのは、情報は不明確だったためだ」

隆一が唸る様につぶやいた。

「オヤジ!なぜ黙ってたんだ」


隆一は、江崎に顔を向けて聞いた。

「先生、何故、今になって話したのですか?」

「エネルギー物質についてヴァルラス星人に知られれば間違いなく戦いになる。だからトップシークレットになった。一年前に調査隊の船が地球に来て高エネルギー物質存在が分かった時から、極秘情報になった。この船が選ばれたのは、万一ヴァルラス星人と戦いになった時のためだ。モーガン船長が選ばれたのは、この船での戦いになれてるからだ。」


ケンがびっくりして尋ねた。

「船長は戦いに参加していなかったのでは?」

「すまん。二百年前、この船で戦っていた」

今後は、全員が驚いた。

「私の体は、サイボーグだ。脳も一部置き換わっている。今回のプロジェクトのため、それらしい体つきにしている。しかし今回で引退なのは事実だ。あと十年もすれば、この体も脳も寿命になる」

皆がモーガン船長の告白に驚いて発言出来ないでいると、真司が間延びした声で発言した。

「あの~ 何とか高密度アルミを入手することはできませんか?」

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