二つの月

 第四惑星の二つの月は大きい方はアルファ、小さい方の月はベータと名付けられた。

予定通り、惑星から見てアルファムーンの陰になるラグランジュポイントL2で、宇宙船を急減速させて、調査が始まった。


惑星調査の前にアルファの地表調査を行った所、金属反応があった。何らかの施設ではないかと推測され、アルファの調査を行うこととなった。


その結果、前回調査隊の施設があった。残念ながら三百年間放置されていたため、ほとんどの設備は壊れていたが、保管されていた情報が多く残っていた。急ぎ、その情報の復元作業が行われていた。



 ブリッジで航海士のトーマスが、モーガン船長と話していた。

「調査の連中は、部屋にこもりっきりですね。うろついているのは、伊藤隊長だけですね」

「ケンくんも渡辺くんに付き合っているみたいだな」

「私は、部屋で資料あさりが一段落ついたので、ブリッジではなく展望室としてのここへ遊びに来たのですが、船長もやることがなくて暇みたいですね」

「船の乗員は航行が主な仕事だからな。私は船長として乗客の安全を確保するという多少の仕事があるが、トーマスくんは本当に暇そうだね」

「私は、趣味の戦記や戦術の研究ができるのでありがたいですよ」

「研究しても使うべき戦いがないのではないかな」


「確かに今のところ実戦はありません。戦争はいやですが、ヴァルラス星人が来るかもしれない。前の戦いから二百年間、戦いはありません。私も戦った経験はありません。しかしヴァルラス星人は戦いが当たり前。いわゆる平和は彼らにとって休息でしかない。二百年間も休んでいるが、いつ戦いになるかもわからない。また、ヴァルラス星人以外の星人との戦いが起こるかもしれない。だから勉強しているのです。船長は、どうですか?」

「私もこの船と同じ予備役だが、戦争は嫌だ。嫌だからといっても軍人である限り周りが許してくれるはずもない。必要なら、老体に鞭打って戦うよ。だからこそ平和を享受したい。なにもなくて暇なことを楽しみたい」


「『暇を楽しむ』ですか? じゃなぜ、この調査隊に? 何も起こらないと予想してですか? 」

「予想はしていないが、何も起こらないことを期待している。ま、この船と同じく、最後のご奉公といったところか。準備して何もなく終わる。それが理想かな」

「準備してもそれが使われずに終わることが理想。分からなくはないですが、なんか納得できないですね」

よわいを重ねないとむりかな」


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