現状確認

 会議室で、現状報告が始まっている。

「第四惑星までまだ四十万Kmありますが、大量の電波が出ているので間違いないと思われます」

技術担当の渡辺真司が発表している。

「現時点で周囲に人工衛星らしきものは見当たりません。また、ハイパードライブ、次元航法の痕跡も見られません」

副隊長で文化学顧問の江崎雅史が質問した。

「文化レベルは判断できるか?」

「まだ不明です。電波で送っている内容が分かればよいのですが、電波の発信源が多すぎ混信していてわかりません。外挿判断になってしまいますが、熱量の発生状況から見て、地球の十九世紀から二十世紀あたりと思われます」

「そうか、私の出番はまだみたいだな」

続いて、モーガン船長が真司に質問した

「恒星や惑星に特異な点はなかったのですか?」

「まずは第四惑星に大小二つの月があります。これに関しては江崎博士の方が詳しいかと思います」

江崎が我が意を得たとばかりに、再び発言した。

「知性体刺激発生論は正しいようだ。知生体の発生は銀河中央部が多いが、その理由は不明だった。地球もこのエンデュラスも、月がある。発生した生命体に月などの外部刺激で知性が芽生えるという仮説の信ぴょう性が高まったな。しかし今回の調査には関係ないな。他に異常な点は?」

「第四惑星の直径は約4000Km。地表での重力加速度は0.9G」真司はここで言葉を切った。

真司がなぜ言葉を止めたか、みんなが理解できない中、隆一が発言。

「0.9Gじゃ、スポーツで良い成績を残せるね」

この言葉を受けて、お目付け役を自負している園部マキが隆一を叱った。

「リュウ、そういったことじゃないでしょ!」

「そうか、重さか!」機関士のケンが叫んだ。

「直径が4000Km、つまり地球の三分の一程度。地球と同じ密度なら九分の一の質量のはずが、重力加速度がほぼ地球並みということは、質量は地球並みということか?」

「はい、惑星の中心から地表までの距離を考えても、平均密度は立法センチ当たり約15グラムにもなる。多分、密度20を超える物質が大量にあるはず」

「それって、地中に鉛が大量にあるってこと?」マキが聞いた。

「鉛どころか金の可能性もある。無論ウランやプルトニウムの可能性もあるが、放射線は検出されていないし、発生熱量から見ても、その可能性は低い」と真司が答える。

「それが、今回の調査に影響するのか?」副隊長の江崎博士が心配そうに尋ねた。

「不明としか言えませんが、詳しく調査するべきです」

「軌道を変えるべきでしょうか」隆一が、初めて隊長らしい質問をした。

「私としては変える必要性はないと思います。予定通り現状の非周回の彗星軌道を維持して惑星の月の後ろで減速してパッシブで詳細調査。その結果を見て惑星周回軌道に移るか判断すべきと思います」

「江崎博士はどう思いますか?」

「真司くんと同じく、現状計画通りで良いと思う」

「モーガン船長はどうですか?」

「現状通りで良いと思います。ただし、調査は用心して行って下さい」

「ということで、一応現状通り。他に問題がなければオヒラキにしたいと思います」

隆一は隊長らしく会議を閉めた。

参加者がいなくなってから、マキが隆一に一言。

「今回は一応及第点だったね」

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