第8話 かっこいい!(盲目)

 女二人、しばし歩みて、

 つひに最後の地点へと辿り着きぬ。

 

 その竹の中に、

 もと光る竹なむ一筋ありける。


 
あやしがりて、


 寄りて見るに、筒の中光りたり。


 さらに寄りてて見るに、

 男四人、女一人現れたり――――――――






「誰が誰だか全然わからない!!」


 カノが叫んだ。


 最後の地点で2、3、4、5番目の求婚者たちが、一斉にかぐや姫を襲っていたのだ。


 慌てて間に入るはいいものの、誰が誰だか分からないらしい。


 求婚者たちはかぐや姫に、結婚の対価として求められたものに関係するものをそれぞれ持っていた。


 確かに1人目の石さんも鉢投げてきたな・・・・


 

 私は一人一人の特徴と名前を教えてあげる。

 

「玉を持ったくらさん!」


 するとカノが復唱する。

 

「玉のくらさん!」



「火鼠を使役している阿部あべさん!」


「火鼠の阿部あべさん!」



「竜を使役しているおおさん!」


「竜のおおさん!」


 

「貝を持った麻呂さん!」


「貝の麻呂さん!」



 おぉ・・・なんてバラエティに富んだ人達なんだ・・・


 すると男たちが喋り出す。


「俺達は1人目の石作の野郎を見て思ったんだ。1人では勝てそうもない。だから4人で戦おうと。誰が結婚するかはその後でいい。」


 かぐや姫の気持ちを蔑ろにして、勝手に結婚することを決めている男たちに腹が立つ。


「わ、悪いけど、ぜ、絶対させないから!」


 ひぇ〜!人と話すの怖い!



 とは言え、相手のほとんどは運動もしないような貴族様達だ。


 油断しなければ大丈夫だと思う!


 でも、竜のおおさんだけは武士だったから要注意だ・・・・


 


 一瞬の沈黙の後、誰が合図した訳でもないが、それぞれが行動を開始する。


 私は『蓬莱ほうらいオーライ』を発動。(QP 19/20)


 五つの身代わりの玉が周囲に浮かぶ。


 カノはいつも通り分身を召喚して私の影に入った。



「行くぞ!」

 

 初めに攻撃をしてきたのは貝の麻呂さんだ。


 子安貝を持った両手をパチンと猫騙しのように合わせ、玉を1つ破壊する。


 玉のくらさんと、火鼠の阿部あべさんも続く。


 玉が2つ破壊されるが、まだ2つも残っている。



「クイズ・攻撃!」


《獲物を食いちぎるために行われる、ワニやウツボが獲物に食らいついたまま自らの体を回転させる動きを英語で何というでしょう?》


「デスロール!」


『「デスロール」を発動します』

『カノの分身が「デスロール」を発動しました』


「シンパシーリンク!」


『攻撃を合成しました。「ダブルデスロール」を発動しました』


 体が勝手に相手に噛みついて回転しだした。


 ああああああ!なんか、尊厳とか大事なものを失ってる気がする!!


 私とカノの分身は、玉のくらさんの両腕に噛みつき、それぞれ逆方向に回転する。


「ぐ、ぐわぁぁぁぁ!」


庫持皇子くらもちのみこ(Lv16)にダメージを与えました』


 HPが残り1/3ほどになる。

 

「く、くそ!せめて1人だけでも!」


 そう言って玉を投げつけてくるが、ひらりと避ける。


「そ、そんな・・・」


 玉のくらさんは絶望を隠しきれない顔で放心状態になっていた。顔には気力が無く、まるで魂を失ったかのようだ。


「今のお主の様子を離る(たまさかる)というのじゃ」


 玉も魂も無くなってしまったくらさんにかぐや姫の追撃!


 か、かっこいい!(盲目)


 ラムちゃんはその隙を逃さない。


『ラムが「突進」を発動しました』


庫持皇子くらもちのみこ(Lv16)にダメージを与えました』

 

庫持皇子くらもちのみこ(Lv16)を撃破しました』


 やった!1人倒した!

 



「くそっ、もう1人やられたか!」


 貝の麻呂さんと、火鼠の阿部あべさんが使役する火鼠が玉に攻撃する。


 パリーン!


 残りの玉が0になったので、すかさず『蓬莱ほうらいオーライ』を発動。(QP 18/20)


 5つの玉が完全復活。この戦い方一生攻撃喰らわないんじゃ・・・?

 


 その間にラムちゃんが貝の麻呂さんを『飲み込む』


「プラスチックボンバー!」(QP 17/20)


「シンパシーリンク!」


『攻撃を合成しました。「スライムボンバー」を発動しました』


 ラムちゃんの内部が爆発する。


「ぶふぉ!」


石上麻呂足いそのかみのまろたり(Lv16)にダメージを与えました』

石上麻呂足いそのかみのまろたり(Lv16)を撃破しました』


 あ、あっけない・・・・


「人々は呆気なく期待外れなことを「かいなし」と言うが、まんまお主の事じゃのぅ」


 か、かっこいい!(盲目)

 


 

 次にもう1人の火鼠の阿部あべさんを狙う。


「カボチャパンチ!」(QP 16/20)


 私のメインウェポンのカボチャだよ!


『「カボチャパンチ!」を発動します』

『カノの分身が「カボチャパンチ!」を発動しました』


「かはっ!」


 い、痛そう。


「ラムちゃん今だよ!」


「ぽよ!(うん!)」


『ラム(Lv24)が「突進」を発動しました』


「うがああああ!」


阿部御主人あべのみうし(Lv16)にダメージを与えました』

阿部御主人あべのみうし(Lv16)を撃破しました』


 よし!3人目撃破!


「がっかりした人はこう言うそうじゃ。「あなあああへ阿部なし」とな」


 か、かっこいい!(盲目)



 

 ここまで来て、何故か今まで動かなかった竜のおおさんが動き出した。


「俺はあいつらとは違う。1人でお前らを屠り、この手でかぐや姫を手に入れる!」


 さっきも言ったけどこの人は注意だ。唯一の武士なんだから。


「出でよ!竜太郎!」


 彼の周りを回転するように現れた1匹のたつ


 真紅の大きな体には、ぎろりとこちらを睨む目がついている。


 

 その竜に目を奪われていると、竜のおおさんが駆け出してくる。


 続いて竜もこちらに全速力で飛んでくる。


 ま、まだ玉は5つあるから大丈夫――――パリン!


 え?


 竜のおおさんが日本刀を横一文字に振ると同時に、5つの玉が破壊される。


 そ、そんなのあり!?


「きゃ!」


 立て直す余裕もなく、竜が雷を広範囲に落とす。


『竜太郎(Lv24)からダメージを喰らいました』


 全員のHPが1/3ほど削られた。


 私はすぐに『蓬莱ほうらいオーライ』で5つの玉を復活させる。(QP 16/20)


 やばい!もう攻撃が来てる・・・・!


 竜のおおさんから放たれる横振りの一閃。


 玉が全壊。


『カノの分身が撃破されました』


 今の攻撃でカノの分身がやられた!?


 と考える間もなく竜の攻撃。


「くっ!!」


 HPが後わずかになってしまった・・


 ど、どうしよう。


 とその時、影からカノの声が聞こえる。


「後5分耐えて!」


「わ、わかった!」


 何かあるのだろう。私はそれを信じるのみ!


 そこからは竜のおおさんと竜の猛攻。


 どうせ一撃で破壊されるのだからピボットで回避している。


 回避し続けて、15あったQPも2になってしまった。


「ピボット避けよっと!」


 あ、1になってしまった・・・・


 ご、5分が長い・・・!また攻撃来る!


「ピボット避けよっと!」


 ま、まだ!?


 な、何か時間稼ぎをしないと!


「ク、クイズ・その他!」


《ドイツ語では「魔女の一撃」、正式には「急性腰痛症」という、重いものを持ち上げた時などに突然腰部に痛みが起こる疾患のことを一般に何というでしょう?》


「ぎっくり腰!」


『「びっくり腰」を発動しました。対象に状態異常【びっくり腰】を付与しました』


「うが!」


 竜のおおさんと竜はそれぞれ腰を庇うような体制で動きが止まる。


「準備できたわ!瞑想爆発!」


 ドガァン!ドガァン!ドガァン!ドガァン!


 カノがそう叫ぶと、2人(匹)の相手の内部?が何度も爆発し出した。


 爆発は1分ぐらいあったんじゃ・・?と思うぐらい長かった。


 私とラムちゃんはというと、爆発中にダメ押しで殴ったり蹴ったりしていた。


 途中からおおさんは号泣しだし、目の下にはすもものように大きい腫れができていた。


「そんなすももは食べられんぞ。あなああ可笑しい。あなああ食べ堪へがた(あなたへがた)」


 あ!このかっこいい(盲目)セリフが聞こえてきたと言うことは・・・


 

大伴御行おおとものみゆき(Lv25)にダメージを与えました』

『竜太郎(Lv24)にダメージを与えました』


大伴御行おおとものみゆき(Lv25)を撃破しました』

『竜太郎(Lv24)を撃破しました』



 や、やった・・・


 勝てた・・・




  ――――――――――――


 ありがとうございました!


 初めて書く小説に、文章の難しさを感じております・・・


 さて、今回、かぐや姫と求婚者の難題婿譚なんだいむこたんをストーリーに入れ込んでみましたが、いかがだったでしょうか?


『竹取物語』ではかぐや姫が求婚者達をバッタバッタと切り倒していき、とても印象的なのでぜひ読んでみてください!


 一人ひとりのストーリーの最後に語源譚ごげんたんを挟み込んでくるのも魅力の一つです。(貝を取れずに失敗したことから、あっけないことを「かいなし」と言うようになった。など)

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