きっと永遠の手前にいる【第二回カクヨム短歌・俳句コンテスト 短歌ニ十首】

雪桺憂

きっと永遠の手前にいる


永遠の手前にいます 叶わない夢ばかり見て肥えてしまった


冬去りて ぼくの胸もと棲む魔物きみの奈落に落ちゆくさだめ


その声も瞳の色も指先も全部ひとつの花束にする


最果てに置いてきたはずその姿 ゆるせないまま影を引き摺る


ごめんねと謝るたびによわくなる 繋いだ指も街のあかりも


かりぬいのままで生きるしかなくて きみの言葉は正しかったね


遠ざかるあなたの影を追いかけて処刑台まで来てしまった


ゆるやかに終わりを告げる白い朝 ねじれているのは僕だけじゃない


いたくてもいたいと泣いちゃだめだった 焼け跡みたいな場所にある椅子


元通りになるはずがない魂の留め具を外してしまったならば


首筋のためらい傷を這う百足 成れの果てだね、きみもわたしも


すくってもあふれてしまう水たまりだったはずの君のみずうみ


血のにおい 殺したんだね、在りし日のきらめいていたぼくたちの夢


はじめから何もなかったぼくたちは獣のうたをうたうしかなく


ぼくたちが透明なのは死神を欺くためだよ、ねぇ泣かないで


身代わりを置いていくから死神の甘い綿菓子もらってはだめ


暗闇で私はずっと待っている 生まれるはずもない木漏れ日を


この夢の終わりを告げる僕の顔 これから人を殺すみたいだ


きみの目に灯してしまったこれからという名の炎もどれない家


ごみ溜めのなかに埋もれている天使をさがしている、いるはずなんだ

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