第43話 終演の舞
破壊力抜群のビームがケガレに着弾し、その体をじわじわと溶かしていき、身動きのとれないケガレは時間をかけて小さくなっていった。
よけいな外装を溶かして残ったのはまっくろな仔猫。直撃したビームにより弱ったケガレは鳴くことすらできない。
しかしいまだ異物と融合しているらしく頭には大きなこぶができている。
「ゆくぞ瑞穂。ここからは手はず通りに舞い踊って清める。われについて参れ」
ツキガミが瑞穂を促し、霧煙る舞台に上る。
二人揃って手を突き出し、観客のみる中で厳かに舞が執り行われる。
ざわめきがかき消えた。
舞台の外では打ち水の音が聞こえる。
バケツもひしゃくももっていないのに聴こえる水の音は限界まで高まった神の力に合わせて起きる不思議な現象だった。
照っていた
代わりにおだやかな
月にむらくもがかかり、静かな暗がりの世界が戻ってくる。
人の心を浄化する
こつん、こつんと落ちるたびに舞台に滴が落ちて、小雨が路面を濡らす。
合わせてただのコスプレ衣装だったはずの瑞穂の衣装までが段違いに美しい羽衣となった。
――繋がり、紡ぎ、絆として結わえたもの――
この舞台までかかった日々を思い出しながら瑞穂は必死にツキガミの舞を習う。
鳴くこともできなかった仔猫が、しずかに涙を流す。
ぽたぽたと地面に作った黒いシミから影が蒸発していく。
仔猫はかつての形を取り戻す。
結界内部をさまよう影。怨念を封じ込めるべくツキガミが最後の仕上げをする。
「希望を忘れ、ついぞ報われることのなかった思いよ。汝は休め。もう終わったのだ」
鎮まりたまえとツキガミが唱える。瑞穂も続き、さらに見物していた人々も復唱する。
憎悪にすすけた影はようやく天へと旅立っていく。私怨に満ちていたのぼる紫煙は、もう、なかった。
浄化の炎ともして、神獣への敬意を表わす。
ツキガミは黙って舞台を見据える。
瑞穂は流し
むらくもも晴れて満天の夜空が帰ってくる。鈴虫の音色が、秋がすぐ近いことを告げていた。
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