第27話 応援団の声援1
――ネットで拡散されていく、
たまたま借りたスポ根ものの少年マンガを流し読みしていた
一方、停学処分も兼ねたような形で休学している
バイトに精を出していた
と、SNSをみていた面々は身近な存在の行動に驚かされていた。
「いよいようちらの出番や」
一番最初にメインストリートに到着した彼女は堂々たる姿勢で宣言した。
知り合いの登場にも気付けない瑞穂。ただ一心で舞う彼女の助けになろうと集結しつつある面々を先導したのは、
「よっしゃ、いくでぇ。うちらも応援したるさかい!」
「応援って……え、なにする気よ!?」
「邪魔しちゃまずいんじゃないかにゃ……」と
「かまへんかまへん。うち妨害したいわけやないからな! あはははは」
「えー?」
「じつに怪しいにゃあ」
目を細めるふたりのことも気にせず渚はどこかへ向かう。
まっすぐに目的地に来た渚。彼女の後を追って交差点の反対側までやってきたふたり。
「音頭は任しとき」と近場にあった催し用のソレを叩く。
「まさか……え、いやいやいや!」
猫枕も赤森に合わせて首をブンブンと奮って止めようとするが彼女は止まらなかった。腕まくりすると二本のバチを手に取り、ポンポンと試し打ちした。一瞬、瑞穂の気がそがれたようだが、続いて奏でられた音色と、自分に向かって微笑む音の出どころに口元をゆるめて、瑞穂はさらに舞に熱中する。
和太鼓を雅楽に合わせて叩きだした渚。
猫枕は呆れてやれやれと首を振った。賛同してもらおうと赤森を見上げると、見上げたら、なぜか彼女は悶々とした表情で黒一色のサルエルパンツでごしごしと手汗を拭っていた。
「いや、なにしてんのにニャー?」
「うう……だって、楽しそうで……がまんできなくってぇ……」
あっちゃーという顔で額を打った猫枕。パンクな衣装に身を包みギターセースを背負った赤森だ。生粋の音楽家な彼女はどうやら渚の演奏に触発されてしまったらしい。早い話、自分も演奏したくてたまらない、と。
「かわいそうにゃ、森ちゃん。でも合わせられなきゃ迷惑になるにゃあ、ここはがま、」と彼女を止めようと同情的に告げたら、なぜか興奮した表情で猫枕の手をとる赤森。その気迫に猫枕は引いていたが、彼女はそんなことに臆すこともなく。
「
この時猫枕は思った。やっちまったにゃあ、と。
ガンギマリした表情で個性的なエレキギターを取り出す赤森。派手な赤と黒のストライプのギターに小憎らしいキャラクターのシールなどで飾り立てた、大事なわが子を自慢気に奏でている。
猫枕からすればその真剣な表情も完全に快感で興奮したものだと分かっていた。ゆえにため息をついて彼女らについて、ことの成り行きを見届けていた。
「でも僕ばっかり付き添いだけなんてちょっと不満だにゃぁぁぁ」と彼女はあくびを噛み殺すのだった。
「なんやぁ、案外イケる口やね?」と渚が挑発すると、赤森も黙ってそれに応えて渚に挑戦する。
すると背後からでかい声が割って入った。
「お、おもしろそーなことしてるっちゃ思ったら、渚じゃーん!」
「紅矢はんやないの! あんたはんもお使い?」
悪友、
「いーや、妹のおもり。てか、なにそれなにそれ。俺も参加したいっちゃ」
「ええよ。なにか楽器あるん?」
「あ……――どうしよ。なあんも持ってねぇ。ちくしょう、俺もバイオリン持ってくればよかっただあああ!!」
膝から崩れ落ちて街の舗装路で擦ったせいでうまく紅矢。
情けなく落ち込む兄、その服のすそをずいずいと引っぱるのは妹だった。
「にちゃ、リコーダーならコトもってるよ?」
「わははははは、リコーダーとか! あ、あんた吹けるん?」
思い切り小馬鹿にする渚に応戦して答える紅矢。
「ばかいえ。放課後自主練してたら怪しいことしてると噂しやがった教師を超絶技巧で黙らした楽器テクっちゃ。よくみとけい」
「わああ、にちゃ、がんばれ〜」
妹が口に手を当てて即席のスピーカーで応援する。鼻が高い兄は自信満々に笛を吹き鳴らした。
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