5人の未熟な高校生

アキ@恒星

第1話

1番(高畑)不問


2番(佐々木)男


3番(浜田)不問


4番(生田目)不問


5番(馬場)女性。



本編

とある教室。

1「皆さん。本日はお疲れ様でした。皆さんも知っていると思いますが、ここに集まった学生陪審員は、外部との接触を避けるため、スマホやガラケーは、この袋に入れることになってます!」


5「真面目だな〜大丈夫だよ。バレないって。」


1「でも、発覚した場合、ここにいる全員、停学になってしまいますよ。」


5「えっ!?そうなの?なら、集めたほうがいいね!ほら~みんな!ここの袋に入れて〜!その時、自分のスマホと何だっけ?そうだ!ガラケー!あと、付箋に自分の名前を書いて、貼っていれるんだって!」


1「あの〜私がやりますから。」


5「あっ!?ごめんごめん。では、どうぞ。」


3「お願いいたします。」


5「あ!だめだよ!ちゃんと付箋はって、自分のだとわかるようにしなきゃ!」


3「あっ。すみません!すぐに貼ってきます。」


5「大丈夫だよ!ゆっくりで!」


1「もし、良かったら、陪審長役にやってもらえますか?私なんかより、ずっと良さそうですので。」


5「あぁ!ごめんごめん!部活ではキャプテンやってて、なんかクセで。大丈夫!ボク、真面目なことできないから。」


3「あの。すみませんでした。よろしくお願いします。」


5「ううん!大丈夫だよ!あっごめんごめん。じゃあ、ボクのも入れるね。でもガラケーって久しぶりに聞きたかも!でも、高校生でガラケーって流石に、あっ。」


1「・・・」


5「すみませんでした。」


1「...大丈夫ですよ。あとは…。すみません。」


2「えっ。あ、すみません。」


5「あっ!もしかして、あなたもガラケーでした?それで、怒ってます?」


2「いえ、スマホです。」


5「良かった!ですよね!」


4「(咳払い)すみません。」


5「え?あ!いえ、ちがくて〜」


1「外部と接触を避けるために、携帯を預かってるんです。この付箋に名前を書いてもらって、こちらに入れてください。」


2「そうだったんですね。わかりました。」


1「では、皆さんを預かりましたので、はじめていきたいと思います。」


5「席はどうする?あ、します?」


1「では、私が入り口付近のここに座りますので、若い番号順に反時計回りで。」


5「わっかりました!さっきは、ほんとにすみませんでした。」


4「大丈夫ですよ。よく言われるんで。」


5「そうなんですね!良かったです!」


4「あなた、よくキャプテンできてるね。」


5「よく言われます!」


4「・・・。」


1「では、はじめていきます。まずはじめに、一週間前に配らせた、このガイドブックの1ページ目に書いてあることに目を通しましょ。私が読みますので、目で追ってください。『この学生裁判員制度は、学生の責任感と昨今増えているいじめ、犯罪など、様々なことを、学生自身も裁く立場になり、注意喚起が目的となります。なお、陪審員は必ず、事件が起きている学校並びに関係者以外が、厳正な抽選で選ぶものとする。次にー』」


3「どうかしました?」


2「いえ、カバンにいれたはずなんですが。」


3「一緒にみますか?」


2「すみません。ありがとうございます。」


3「いえ、大丈夫ですよ。困ったときは、お互いさまです。」


2「・・・。」


1「『ーなお、判決の結果、罰則があった場合。学生陪審員にー」


5「はしょりません?」


1「いえ、一応規則なので。」


5「みんな、読んできてるでしょ?大丈夫!書かれてることなんて、そんな大したことじゃないよ!」


1「分かりました。では、読まなくても良いかの決をとりたいと思います。読まなくてもいいに賛成の方、手を上げて下さい。ありがとうございます。では、しまってください。」


2「ありがとうございました。」


3「いえ。」


1「では、早速今回の裁判の決をとりたいと思います。被告が有罪か無罪かを私が申し上げますので、そのどちらかに手を上げてください。ガイドブックにも書かれてますが、5人全員合意がなければ、評決としては成立しません。では、有罪。無罪。はい、ありがとうございます。では、今回の裁判、陪審員の我々は、『無罪』として、提出します。皆さん、お疲れ様でした。」


5「お疲れ様です!なんかパパッと終わりましたね!んじゃ、僕、部活あるから!」


1「そうなんですね。頑張って下さい。」


5「ありがとう!あ!もしかして、何かスポーツやってますか?野球とか!」


1 「いえ、文化部です。」


5「そうなんだ!体格いいから、スポーツやってると思ったのに!」


1「よく言われます。ところでー」


5「そういえば!野球っていえば、すっごく強かった高校があってね!絶対に甲子園行けるすごい学校だったんだけど、部員がタバコを吸ってたみー」


3「あの~スマホを」


1「あ!忘れてました!皆さん!お返しします!」


3「・・・すぐに終わりましたね。」


5「そうだね!早く終わって良かったよ!でも、彼女、有罪かもね!」


2「あの!皆さん!ほんとにいいんでしょうか?」


5「いいですか?って、もう決まったじゃないですか?『無罪』だって。」


2「皆さん!あの裁判をみて、本当に無罪だとおもいますか?」


5「いや、だって、あんた無罪に手を上げたじゃん!」


2「僕は…、無罪だと思います。」


5「じゃ、いいじゃないの?」


2「でも、あなたは、先程有罪かもねって言ってましたよね?」


5「かもねって、言っただけ!でも、あんたは、無罪だと思ったんでしょ?それで、いいじゃん!」


2「正確には、無罪ならいいなって思ったんです。」


5「一緒じゃん!さっきも言ったけど、あなたが無罪に手を上げたじゃん!」


2「話し合いたいんです。僕は。」


5「ボクは、早く帰りたい!!」


2「納得してから、無罪に手を上げたいんです。」


5「えー!だって、さっきみんなで無罪ってことで決まったじゃん!」


2「分かりました。有罪に変えます。」


5「なんでそんなことするの!」


1「分かりました。全員が無罪か有罪でなければなりません。・・・どうぞ、皆さん、席について下さい。」


5「えー!でも、無罪ってことになったよね!」


1「決まりですので。」


5「分かったよ!席につくよ!ったく。みんなも席について、パパっと終わらせよ!」


2「陪審長、無罪の方々に根拠を伺って下さい。」


5「まどろっこしい!ボクから話していい?」


1「どうぞ。」


5「ありがと!今回の事件は、飛び降り自殺なの。いじめが原因での自殺。で、今回の被告の女子生徒はたまたま屋上にいたの。正しくは、気分転換で屋上に上がったって言ってたのかな?そしたら、目の前で男子生徒が飛び降りた。止める暇なくね。彼女は、呆然としてた。そしたら、先生達が屋上に来て、屋上にいた彼女を見つけた。」


2「そうです。その後、捜査で彼女が突き落としたのではないかとなり、今回の被告人となりました。」


5「確かに、彼女は、髪の毛を染めてるし、化粧もしてた。でも、ボクだって、スポーツしてなかったら、化粧したいし、髪の毛伸ばして、染めてみたいもん!そんなの女の子ならみんな憧れるよ!そんな偏見で犯人あつかいなんてひどすぎるよ!」


2「女の人は、仲間意識強いから、守りたくなるんですかね。」


5「ちょっとなんか言った?」


2「いえ、何も。」


5「ボクが、女だからおんなじ女である彼女を庇ってるっていうの!?あのね!友達ならともかく、見ず知らずの他人を庇うことなんてしないよ!」


2「なるほど。友達なら庇うんですね。」


5「さっきからなによ!」


1「まあ。お二人とも落ち着いて。」


5「偏見なんかで有罪にしたいあんたとは違うの!」


2「!」


1「そこまでです!ガイドブックにも書いてありますが、暴力沙汰はご法度です。それとも、お二人とも退学処分になりたいですか!」


2「失礼しました。」


5「すみませんでした。」


1「・・・。では、次の方いきましょう。えーと。」


2「3番のかた、お願いします。」


3「えっ。わたしですか。あの、パスで。」


2「パスってなんでです。理由があるから、無罪に手を上げたんですよね。」


3「そうなんですが、理由は、その、・・・特になくて。でも、この人は絶対にやってないと思います。」


2「あのですね!人が死んでるんです。しかも、いじめという陰湿な行為で、弱い立場の人が死んでるんです!それをあなたは、『なんとなく』で、無罪に手をあげたんですか?」


3「すみません。でも、彼女は、やってないと思うんです!」


2「あのね!無罪か有罪を決める大切なことなんです。さらに、死人が出ているんです!あなたは、無念の思いで死んだ彼に対して、何も思わないですか?いじめで、死ぬしかなかった彼が可哀想だと思わないですか?」


3「何も思わないわけないじゃないですか!」


2「じゃあー」


4「弱い者いじめは楽しいか?」 


2「何を、僕はただ正義の行いとしてー」


4「彼女、泣いてるじゃないか?」


2「・・・。あの手の女はね。弱い者をみるといじめたくてウズウズしてるに決まっているんです。だから、僕は、無念の彼も思いを少しでも思って。」


5「偏見で見てるのは、自分じゃん。」


2「違います!僕はねー」


4「あなたの過去に何があったか知らないし、興味もないよ。あと、正義の行いってかっこいいかもしれないけど、その気持ちで第三者を傷つけたら駄目だろ。」


2「・・・。では、そういうあなたの根拠を教えて下さい。」


4「・・・僕は、2つの証言が気になって、それがおかしいと思い、無罪に手を上げました。」


1「確か、野球部員らと用務員の証言でしたっけ?」


4「そうです。野球部員らの証言によると、体育館近くにいた時、男子生徒の叫び声が聞こえた。慌てて、聞こえてきた方向。裏庭に行くと、落ちてきたの男子生徒と用務員がいた。すぐに屋上を見た彼らは、フェンス近くに立たずんでいた女子生徒を目標した。」


1「もう一つは、用務員の証言。裏庭近くで掃除をしていたところ、野球部員らと同じく叫び声が聞こえた。向かうと落ちてきた男子生徒を目撃。そして、遅れて野球部員らが駆けつけてきた、と。」


4「はい。この2つの証言の食い違いがとても気になりまして。野球部員らは、用務員と一緒に事件の瞬間を目撃。用務員は、野球部員らはあとから来たと、さらに、屋上を見たときには人影は見えなかった、と。」


5「用務員って何歳の人だっけ?」


3「たしか、60歳後半だったと思います。」


2「ヨボヨボの用務員の証言なんてあてになりますか?」


5「また、偏見〜」


1「やめなさい。」



5「はーい。でも、体育館近くって、まさか体育館裏でタバコでも吸ってたのかな?」


1・4「…!」


5「えっ。まじ?いやいやいやいや。もしかしてってだけだよ?」


1「いや、あり得るかもしれないです。さっき強豪校のタバコの件があったと言ってましたし。」


2「憶測ですよね!タバコの吸い殻なんて落ちてたってなんてことは聞いてませんよ!」


4「たとえ、タバコを吸っていなかったとしても疑いをあったら、自粛って流れになるかもしれない。」


1「これは、ますます無罪の可能性が上がりますね。」


2「待ってください!確かに、そういった理由で、野球部員らの証言が信用できなくなったかもしれません。なら、なんで被告人の彼女は、屋上にいたんですか?気分転換?それこそ、苦し紛れの言い訳かもしれないじゃないですか?」


1「それは…。」


2「そういえば、あなたの理由を聞いてませんでした。なんで、無罪にしたんですか?」


1「それは。その…。」


2「あなたも『なんとなく?』ですか?いい加減にしてもらえますか?あなたは陪審長なんですよ!自覚と責任感はあるんですか?」


1「私だってやりたくてやっているわけではないです。・・・。理由は、有罪の人への社会的罰が厳しすぎるからです。」


2「当たり前です。罪には罰があるのは当然です。」


1「私もそう思います。しかし、罰があまりにも大きすぎる。私は、前回も陪審員をやりました。その時はいたずら程度の嫌がらせでした。ただ、嫌がらせを受けた生徒はゲガをしてしまい、『いじめ』ということで、学生裁判をすることになりました。判決は情状酌量ありの有罪と我々は判断し、提出しました。」


5「情状酌量って?」


1「犯罪に至った事情のあわれむべき点をくんで、刑罰を軽くすることです。なので、退学という重い罰ではなく、厳重注意という形で閉廷しました。しかし、一部マスコミや、SNSでの根拠のない書き込みのせいで、ことが大きくなりました。学生は、厳重注意から退学処分になり、その子の家族までにも心無い誹謗中傷が集中しました。」


5「やっぱりマスコミの力ってすごい。」


1「違います。あれは、マスコミの力だけではありません。見識のあるマスコミや識者達は憶測での発言はやめるように促しました。しかし、我々はやめなかった。次第にその渦大きくなり、学生は命をたつ選択をとりました。確かに、あの学生は配慮に欠けていた。モラルも低かった。でも、あそこまでする必要はなかった。あれは、中世の処刑のようでした。それが頭に残っている私は軽々しく有罪といえないです。」


5「ねぇ。やっぱり無罪にしようよ。」


2「いや!違う!その学生は気の毒だ。しかし今回は、人が死んでいるんだ!あの手の女は、いじめをするんです!僕の彼女は、あのような化粧や髪の毛を染めた不良女にいじめられて、自殺をしたんだ!今回も、あの女が犯人にきまってるんだ!」


3「彼女は、そんなことしません!」


2「わからないじゃないか!」


3「分かるんです!だって、彼女。ひーちゃんとりゅうくんとは、幼なじみなんです!」


1・2・4・5「‥!」


5「ちょっと!ちょっと!なんでそんなこと、あんたにわかんの?」


3「私も幼なじみだからです。」


1「ちょっと待ってください。今回の事件。いえ、学生陪審制度では、同じ学校の生徒が参加できないはずです。」


3「その通りです。私達3人が幼なじみだったのは、小学校までです。中学からは、両親の仕事の都合で他県に行きましたので、それ以来は合っていません。でも、ひーちゃんとは、時々連絡をとってました。あと、りゅうくんのいじめに関しても悩んでました。」


1「なるほど。しかし、なんでもっと早くその事実を言わなかったですか?」


3「言えるわけないじゃないですか!?言えば、ワタシは、何かの処罰が下るかもしれない。」


2「そんなの。そんなのは、デタラメだ!あの女が殺した!殺したに決まっているんだ!僕の彼女を殺したように!」


5「今回の被疑者は、あなたの恋人を殺した女ではない。」


2「…!分かってます。分かってますよ。でも!」


1「ちなみに、その時の学生裁判の判決は?」


2「無罪でした。証拠がなく、遺書もない。状況だけみれば事故だろうとなりました。」


5「そうなんだ。でも、本当に事故かもしれないじゃない。」


2「そんなわけない!彼女は、僕に『助けて、このままじゃ。』とメールしてくれた。」


1「それを警察に話しましたか?」


2「あぁ!話した!話しましたが、それは『イタズラで書いてた』と証言されて、なんの証拠にもならなかったんです。」


4「なるほど。胸糞悪い話だな。」


5「ねぇ。学生裁判ってもう一回できないの?」


1「分かりません。分かりませんが、私達が何か行動すれば。」


2「え?」


3「そうですね。ワタシにできることがあればお手伝いします。」


5「そうだね!ボク、君より友達多いし、いっぱい声かけてみる!」


4「一言多いぞ。」


5「あ!ごめんなさい!気をつけます!」


1「私もお力になれることがあればお手伝いします。」


2「皆さん。ありがとうございます。ありがとうございます。」


1「では、今回の陪審員の決をとりたいと思います。今回は挙手ではなく、申告でお願いします。では、私から無罪。」


3「無罪」


4「無罪」


5「無罪」


2「…無罪」


1「ありがとうございます。では、陪審員、全員無罪とさせていただきます。しかし、不明な点が多いため、再調査を求むとさせていただきます。」


3「はい!お願いします。」


5「ふー。おわった!あ!練習どうしよ!」


1「あ、ガイドブックに載ってましたが、陪審員は終了次第、秘密保持のため、自宅に帰ることと、書いてありましたよ。読んでなかったでしょ?」


5「え!そうなの?早くいってよ!」


3「これからどうなるんでしょか?」


4「分からない。これからは、責任ある大人の仕事だ。犯人の逮捕や俺達が罰することはできない。私刑は禁止されていることだからな。」


3「いじめの首謀者たちが見つかるといいんですが、学校側は隠さないでしょうか?」


4「いや、ギリギリまで隠すだろ。」


3「そうですよね。残念です。」


4「いや、学校側ばかりを責めるのはお門違いだ。今回、いじめをしたのはあくまで生徒だ。しかし、世間は叩きやすい方を叩くし、マスコミも学校側の方が叩きやすい。いじめをした側は、マスコミから見れば、客だしな。」


3「なるほど。わたしたちも、正しく物事を見る目を持たないといけないということですね。」


2「皆さん!本当にありがとうございます。僕も彼女のためにも諦めずに進みます。皆さん。どうか力を貸してください。」


1・3・4・5「!(返事。バラバラで大丈夫です。役にあった返答を。)」


2「・・・。(前向きな気持ちのアドリブを)」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

5人の未熟な高校生 アキ@恒星 @aki-ko_sei

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ