永遠の鉄板ネタ、それは男女間の恋愛。舞台が高校だろうと職場だろうと異世界だろうと、男女の間の関係性は常に物書きの創作意欲を刺激し、読者の欲求を満たす存在です。しかしそれだけに、書かれた作品数は数知れず、シチュエーションもどうしても似通った物になりがちです。
そんな広大な恋愛モノの大地に降臨したのが本作。「イケメン社長と従業員(ヒロイン)」という設定はオフィスラブの鉄板ですが、本作が独特なのは「社長=Sub、従業員=Dom」という関係性です。
「んー? 従業員がジ■ン軍の重モビルスーツってのが斬新なのか?」と早合点するなかれ。私はしましたが。本作の作品タブにもある「Dom/Subユニバース」をGoogle先生に聞けば意味はすぐに分かりますが、簡単に言えば支配欲求を持つのがDomで被支配欲求を持つのがSub。本作の「社長(男)がSubで社員(女)がDomで」というのが、社会的関係や実際の性別に基づく関係とは異なる設定だということが分かると思います。
もちろん本作は、単なる「変わった設定の恋愛モノ」ではありません。上述のような特殊な関係性に加え、日本生まれのヒロインとドイツ育ちの社長の思考文化の違いや、揺れ動くヒロインの心情の描写をしっかり活写しています。また、主要な舞台となるドイツの現地事情(出張の際の交通事情)はとてもリアル。このレビューのアオリ文にも思わずドイツ語を使ってしまうほどです(Achtung=「気を付けろ!」)。
本レビュー時点では、二人の関係は「一歩進んだと思ったが本当に進んだかヒロインが悩む」ところ。凝った設定でも恋愛ものの王道は外していない本作、大人の恋愛が読みたい方にお勧めです。
まずですね、この物語の中には、「男女Dom/Subユニバース」という設定があります。
私、この作品に触れるまで、こういう設定があること自体知りませんでした。
ご存じない方のためにちょっとだけふれますと、【Dum】は支配欲求のあるひと。【Sub】は被支配欲求のあるひとで、ふたりは合意の元契約をし、プレイをします。
【Sub】の属性のある人は、【Dum】のコマンドに従うことで、互いに欲求を満足させるわけです。
夫婦や恋人がこの契約をしている場合もあれば、それとこれとは別な人もいる。
こう説明をすると「えー……。そんな設定のある話はちょっと」と尻込みする方もおられるかもしれません。
で す が!!
まったくあれですよ!
言っちゃえばこれ、スパダリ社長と仕事できるリケジョの恋物語です!
しかもあなた、ちょっと聞いて! スパダリのほうが【Sub】なんです……。
まずは一話目を読んでください! ちょっ……! まじで、こんなイケメンにコマンドを出して、こんなことしたら……!
主人公の沙羅は大手機械メーカーの技術員として働いており、いろんな理由から就任直後の新社長レネとともにドイツ出張に行くことになります。
そこで急速にこう、距離も縮まるわけですが。
なによりドイツの描写がいい! 旅行記を読んでいるような、そんなわくわくした気持ちになります。
実際、「へー。ドイツってこんな感じなんだ」と思いましたし、「ワイン飲みてー」と思いました(結局酒か)
文章も読みやすく、展開もスムーズに動いていきます。
年末年始にぜひ、旅行気分も楽しめるこの作品をどうぞ!
「Dom/Subユニバース」
なんぞこれ?
この言葉、この作品で初めて知りました。
この作者さまオリジナルではなく、こういうジャンルがあるようです。
男女という性別自認のほかに、
Domー命令する人。
Subー命令されて従う人。
というそれぞれの欲求志向があり、「服をお脱ぎなさい」(命令)
「はい」(従う)
というようなゲーム、「Play」をする事によって、その欲求を満たす事ができる。
時々、その欲求を満たさないと健康上支障をきたす、という世界です。
まあ、難しく考える必要はなく、凄腕メカニック、ただし本人は凄腕な自覚はないヒロインと、超絶美形な社長とのオフィスラブ✕ドイツ海外出張の雰囲気たっぷり。
社長がとにかくかっこよく素敵で、尊大そう、かつ、優しさをにじませる男性なのが秀逸です。
作者さまが、
〜「おいで」って呼んですっ飛んでくる普段はプライド高そうな社長にグッとくる方なら大丈夫です〜
と語ってくれているので、そんな社長見たい! と思った読者さまは迷わず読むべきです。