第69話 百合に挟まる男はお呼びじゃないから

 それから玲緒奈と里緒奈は容赦なく俺を連れ回し始める。普段二人と行動していると俺に対しては妬みや嫉妬などの視線を向けられていたが今日はそれがなかった。その代わりネットリとした視線を向けられていたが。


「やっぱりショッピングは楽しいね、涼香ちゃんもそう思うでしょ?」


「……今の俺が楽しそうに見えるか?」


「いつもの数倍は楽しそうに見える、きっと涼也から涼香になって正解だったと思ってるはず」


「そう見えるんなら眼科に行って治療を受けた方がいいぞ」


 やつれている俺とは対照的に玲緒奈と里緒奈はイキイキしていた。俺を辱めてそんなに楽しいのかと問いただしたいが、多分楽しいと答える気しかしないので聞く気にもなれない。


「じゃあ次は下着を見に行こうか」


「なあ、一応聞くけど俺も付き合わなきゃ駄目か……?」


「勿論、涼香も一緒」


「大丈夫、今は涼也君じゃなくて涼香ちゃんなんだから変な目で見られないよ」


 確かに俺の女装は完璧なので黙っていればバレる事はまずないだろう。だが万が一何かの拍子にバレれば余計に不味い事になる。

 周りから怪しまれないために女装をして女性用下着売り場にやってきて悪さをしようとした奴認定される可能性が高い。だから必死に抵抗する俺だったが結局連れてこられてしまった。


「うーん、涼香ちゃん的にこっちとこっちならどっちが似合うと思う?」


「私も涼香に選んで欲しい」


 二人は俺の前に下着を持ってきて選ばせようとしてくる。どうしても声を出したくなかった俺は無言で指を指して何とか乗り切ろうとする。

 しかし選んでも選んでも二人は次々に新しい下着を持ってくるためキリがなかった。多分俺が恥ずかしそうに選んでいる姿を見て楽しんでいるに違いない。

 玲緒奈も里緒奈も可愛い顔をして相変わらずとんでもないドSだ。俺は辱められて喜ぶような性癖は持っていないぞ。

 まあ、逆に二人は他人を辱めて喜ぶ性癖を持っているのかもしれないが。俺は二人が満足してくれるまでただひたすら耐えるしかなかった。


「……流石にこれで満足だろ」


「えー、もう少し続けたくない?」


「うん、まだ物足りない」


「マジか……」


 いやいや、あれだけ俺を辱めておいてまだ足りないのかよ。下着選びのせいで俺のライフはとっくにマイナスで瀕死状態だというのに。

 これ以上続けられると天に召されて異世界転生するかもしれない。あっ、でも異世界転生したとしても玲緒奈と里緒奈なら追いかけて来そうな気もする。


「まあ、でもそろそろいつもの涼也君が恋しくなってきたしこの辺りで許してあげるよ」


「少し物足りないくらいがちょうどいい」


「じゃあ俺は着替えてくるから」


 二人の許しが出たため俺はトイレへと向かう。ようやくこれで苦しみから解放される。そう思って完全に浮かれていた俺だったがそれがよくなかった。


「ねえ、君一人?」


「もし良かったら俺達と遊ばない?」


 多目的トイレに人が入っていたため近くのベンチに座って待っていたところ知らない二人組からナンパされてしまったのだ。

 人生初のナンパが男からとか最悪過ぎる。どうせナンパされるなら美少女からが良かったんだけど。声を出すと女装している事がバレるため黙り込んで無視を決め込んだ俺だったが二人は一向にいなくなってくれない。


「ちょっと無視しなくてもいいじゃん」


「もしかして恥ずかしがり屋なのかな? 大丈夫、俺達がリードするから」


 お前らがナンパしてるのは玉と竿がついた男だぞと言ってやりたい気分だったがバレると別のトラブルに発展しそうなためそれは無理だ。

 女装している俺はどこにでもいそうな感じで別に美少女ではないし胸も無いため完全にまな板なのだが一体どこに魅力を感じたのだろうか。

 そんな事を考えつつどうやってこの状況を打開しようか必死に頭を悩ませていると玲緒奈と里緒奈が現れた。多分俺が中々戻ってこないため見にきたのだろう。


「あのー、涼香ちゃんをナンパするのは辞めて貰ってもいいですか?」


「涼香が困ってる」


「あっ、もしかしてこの子の友達?」


「なら君達も一緒に遊ぼうよ」


 二人組は玲緒奈と里緒奈に対しても同じようにナンパし始めた。あっ、これはミイラ取りがミイラになったパターンじゃね。


「違う私達は友達じゃない、涼香の彼女」


「うん、涼香ちゃんは私達の女だから手を出さないで」


「いやいや、君達も女の子じゃん」


「そういう嘘はつかなくてもよくない?」


 どうやら冗談だと思ったらしい。だが次の瞬間里緒奈が予想外の行動に出たため玲緒奈以外は皆んな固まる事になる。


「!?」


 なんと里緒奈は俺の肩を掴むとそのまま唇を奪ってきた。しかも軽い感じのやつではなく舌まで入れてくる本格的なやつだ。


「これで分かったはず、私達と涼香がどんな関係か」


「百合に挟まる男はお呼びじゃないから」


「……これはガチっぽいわ」


「……ああ、流石に諦めよう」


 そう言い残して二人組は俺達の前から去る。見た目は女の子でも中身が男の場合は百合じゃないだろとは流石に突っ込めそうな雰囲気ではなかった。


———————————————————


後半部分を何回か書き直していたので遅くなりました…!

百合っていいよね(なお中身


カクヨムコン用の新作を書いたのでもし良ければ感想をください、最近作者がハマってる三姉妹物です↓

https://kakuyomu.jp/users/Ash3104/news/16818093086662588940

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る