ホラーというより伝統と風格を漂わせた英国の怪談を読んだ気分になった。
南米の森に生まれ育った「おれ」の語り口はかなり荒っぽいが、疲労と諦念をたたえた文体は完全にハードボイルドで、正直カクヨムでは珍しい。
おれは世話になった老婆を救うため謎の金髪男カトルと夜の森に入る。
そこで出会った「影」たちがある行動を起こすとある出来事が起きる。
この場面に仰天した。
カクヨムにはいろんな奇想やアイディアにあふれた作品があるが「驚いた」という点において、自分はこの『記憶の森のほとりにて』がナンバーワンである。
語り口がずっと静かなのもいい。
英国怪談やハードボイルド、それから『テスカトリポカ』のような小説が好きな人に本作をおすすめします。
もちろんそうでない人もぜひご一読を。
短編ですがきっと日常を忘れることができます。