第7話 大団円

 いなくなった人たちというのは、後で調べてみると、

「この村では秀才ぞろい」

 ということであった。

 最初は、

「見つかった彼らが、どうして行方不明になったのか?」

 ということを、必死で村の首脳は探ろうとしていた。

「こんなことが、これからも起こったら、村の威信にかかわる」

 ということであったが、よく調べてみると、

「秀才ぞろい」

 だということが分かったとたん、急に、捜査をするのを辞めたのだ。

 警察の方でも、警察は警察で威信にかけて探っていたのだが、村がやる気をなくしたとたん、

「ああ、あの捜査は打ち切りだ」

 と上司に言われた部下は、

「えっ? どうしてですか?」

 と答える。

 それはそうだろう、前日まであれだけ鼻息荒く、

「警察の威信にかけて」

 と叫んでいたのが、いきなり、打ち切りという打診。

「一体どういうことだ?」

 と思って当たり前だった。

 それでも、

「なぜ?」

 と聞くと、上司はいきなりキレて、

「何でもかんでも、捜査は終わりだ」

 といって、怒っている。

 それを見た時、さすがに部下にも分かった。

「ははぁ、上から圧力がかかったな」

 ということであった。

 さすがに部下も、殺人事件が起こったわけでもなく、全員無事に帰ってきた事件を、闇雲に捜査させられていたのだから、それは辞めるとなると、ラッキーだと思っても不思議ではない。

「これで、少しは楽ができる」

 と思ったことだろうが、それでも、

「上からの圧力って、一体何なんだ?」

 と気になってしまう。

 警察に入った時。

「上からの圧力には屈しない警察官になりたい」

 などという、今から思えば、

「なんて、青臭いことを言っていたんだ」

 ということであったが、それでも、気になるものは気になる。

「ひょっとして、上層部の家族か、その人のバックにいる団体が絡んでいるとかそういうことなのか?」

 とも思ったが、そのうちに、

「あの村も、あれだけ探りを必死になっていれていたのに、今は何もしようとしない」

 ということであった。

 それを考えると、

「まさか、村人が、絡んでいるのか?」

 と考えてみたが、

「その理由がどこにあるのか?」

 ということが分かるわけもなかった。

「上層部の考えていることは分からない」

 と思いながらも、

「上層部だけではない。昔からのあの村がどういう村だったのか、あんな閉鎖的な村は見たことがない。警察組織のダークさと、変わりはない」

 と思うのだった。

「ダークとブラック」

 どこに違いがあるのかを考えてみた。

 そんな彼ら、あるいは、彼女たちは、何かの計画で姿を隠したようだった。

 そこに誰かの策略が隠れているかは分からない。ただ、少なくとも、村人、あるいは、その首脳の知るところではないだろう。

 ただ、彼らがやったことは、何か、

「村のために」

 と思って、考えていることではないだろうか?

 つまりは、

「何かの幽霊騒ぎでも起こして、他の街や村から人が流入しないように考えているのかも知れない」

 そこで、一つ気になっていたこととして、村の幹部の中で、

「密かに、他の村の人と結んで、金儲けを考えている人がいる」

 というウワサだった。

 そのウワサは、どうも、

「内部リーク」

 のようで、

「家族でなければ知らないようなことを、臭わすことで、話の信憑性を持たせよう」

 という考えのようだった。

 つまりは、それは、自分たちにもリスクのあることである。自分にしても、まわりを巻き込んでいるわけなので、これが問題になれば、大変なことになる。

 そうなると、まずは、

「父親の不正的なことを辞めさせなければいけない」

 ということになる。

 その方法として、子供だましかも知れないが、

「誘拐騒動を起こし、神隠しがある村」

 ということを印象付けようと考えたのだ。

 しかし、これには、もう一つの

「理由というものがあった」

 それは、自分たちが、

「父親の不正」

 というものを暴くにあたって、

「父親を裏切った」

 という、後ろ向きの気持ちをもたないように、ある意味、今までの平和な村や家庭内において、こういう事件を引き起こせば、少しは、

「目を覚ましてくれるかも知れない」

 と考えるのだった。

 それを思うと、

「俺たちの考えが、いかに真剣かということを、まずは、自分たちで知っておく必要がある」

 ということで、協力してくれた仲間は、その親が、父親同士の悪だくみに、加担しているのだった。

 だから、それをわかっている息子たちは、自分たちが、

「狂言誘拐」

 というか、

「狂言神隠し」

 を演じることで、

「自分たちの正当性」

 を自分たちに植え付け、その覚悟を示すことで、親たちの目を覚まさせてあげたいと思っていた。

 しかも、誰かを傷つけたわけでもないので、

「警察に捕まってっも、俺たちはまだ未成年じゃないか?」

 ということ、さらに、

「誰も傷つけていない」

 ということになるが、それでも、

「親を欺く」

 ということに後ろめたさを感じている人もいた。

「これでは、大人たちのやっていることと同じではないか?」

 ということから、

「これも、内部リークのようなものが起こっても、無理もない」

 ということになってきたのだった。

 そして、その間、

「消えた人たちはどこにいたのか?」

 というのは、これは、誰も知らなかったのだが、実はこの村の分身というような村が、他の土地に存在していた。

 実に近い土地ではあったのだが、あまりにもこの村が閉鎖的であったことと、

「自分たちのような村が他には存在しない」

 という、一種の驕りのようなものがあった。

 その感覚から、誰にも知られない。いわゆる、

「石ころのような存在の村」

 といってもいいだろう。

 ただ、この村の先祖は、元々は自分たちの村を出て行った人が起こしたところだった。昔から、石ころを自覚し、そのおかげで、自分たちの存在を知られることがなかった。

 しかし、今この村は、尊属の危機に見舞われていた。労働力の不足であった。

 そう、いわゆる、

「少子高齢化」

 ということで、自給自足であれば、その問題は、一番大きくのしかかってくるというものだ。

 そのせいもあって、この村に襲い掛かった現実は、

「いずれは、自分たちの村に襲い掛かるものだ」

 ということだ。

 彼らはその憂いのために、分身の村を助けることを考えた。男たちは、村のための労働力となり、さらには、言い方は悪いが、村の娘の、

「種馬」

 となったのだ。

 この村では、若い男が極端に少ない。どうやら、女性しか生まれないというようなことだったようだ。

 それは、

「自分たちの村だけの純血を守ろうとした結果ではないか?」

 ということであったが、その村の学者の話では、その言葉に間違いはなさそうだったのだ。

 だからこそ、

「これは、俺たちの村でも、今後言えることだ」

 ということで、女性は、数は少なかったが、この村の男性と契りを結び、他の土地の血を入れることを敢えて行ったのだ。

 村に帰ると、さすがに最初は、こんなことをいきなり言えば、大問題になるということは分かっていたので、いつ切り出すか?

 というのも問題だった。

 女たちが、いきなり、子を宿したとなると、そこで問題になるのは分かっていることだった。その前に、失踪した者同士が結婚する必要がある。

 元々、この村では、恋愛結婚という風習はなかったので、恋愛感情による結婚というものはなかった。

「許嫁」

 というものもなかったので、この結婚には、何ら違和感はなかったのだ。

 そして、子供が生まれて、その子が、いずれはこの村の労働力になる。さらに、昔からの伝説として、

「この村の純血が、強力な労働力になるが、血が混じれば、頭のいい子供が生まれる」

 ということを仮説として挙げた学者がいた。

 この計画は、そもそも、この学者の説から、来たものだった。

 その人は、最初から、この村の出身でありながら、一人だけ、まったく違う目線でいた。

 しかし、

「村を憂いている」

 という気持ちに変わりはなく、そのおかげで、分身の村の存在も最初から見えていたのだ。

「俺のこの考えがこの村と、分身の村を救うことができるかも知れない」

 と考えた、行方不明計画。成功すれば、一挙に二つの村を救うことができる。

 そこから、また新たな村が出来上がってきた。

 その村は、またここの分身でもあった。

 その村の発展は、日本という国においては、まったくの石ころであり、次第に、そんな村が次第に増えていく。

 それが、

「ステルスの村」

 ということで、一つの独立国の様相を呈してくる。

 そう、

「日本の土地が買われている」

 ということを危惧したこの学者が、

「食い止めることはできないが、何とか対抗措置を」

 ということで計画されたことであった。

 それが、この失踪計画であり、結果、数十年度、この学者は、

「ノーベル平和賞」

 を受賞することになるのだが、それが、彼の計画の結果であったということを、示しておこう……。


                 (  完  )

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ステルスの村 森本 晃次 @kakku

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