第3話 鎮魂家の仕事
「亡霊が見える???」
学には瑠璃の言っていることがさっぱり分からなかった。
「ええ。そうよ。私は特殊体質で亡霊を見ることができるの」
「それと鎮魂って何の関係があるんですか?」
「んー、簡単に言うと、何らかの影響で「悪」に染まってしまった亡霊である悪霊を成仏させることなの。悪霊は生きている人たちに不幸をまき散らす存在だからね。時には健常な人に憑依して悪さをすることだってあるの。だから、私が息の根を止めてあげるってこと」
シンプルに「息の根を止めてあげる」っていう表現がサイコパス感溢れていて怖いんですけど。
「はあ。そうなんですね。じゃあ、どんな時に悪霊が生まれるんですか?」
「大体は
「じゃあ、その悪霊たちを鎮めるためには一体どういうことをするんですか?なんというか、勝手な偏見を言うと、白い紙のついた棒を振り回しているようなイメージなんですが」
それを聞いた瞬間、瑠璃は指をチカチカと左右に揺らした。
「もーう、それは神社とかでやる儀式でしょ?実際に悪霊退散する時はこれを使うのよ」
瑠璃は服の中から小さなナイフのような刃物を取り出した。
「それ、何ですか?」
「これは、悪霊を斬り倒すことができる唯一の武器よ。今はカバーをつけているけどね、この刃は引き抜くと真っ黒になっている仕様になっていて、悪霊の急所を突くとそこから悪霊の体が分解されていくの。まあ、これ以外にも何個か悪霊討伐ようの道具は持っているのだけれど、普段から愛用しているのはこれかな」
「へえー。てっきり特別な装置でも使うのかと思いましたよ」
「そんなことないわよ。私、機械音痴だし。そんな難しいことをするよりも物理攻撃よ!」
見た目に反して恐ろしく脳筋だぞこの人。怒らせちゃいけないタイプだ。
「それで、報酬はどのくらい頂けるのですか?」
「まあ、あなたの活躍にもよるけど、基本悪霊一体倒すのに協力してくれれば一回につき30万ほど払いますわ。多少は変わるかもしれませんが。あ、あと今日契約してくれたら契約金の50万、今から出してあげることもできるのだけど」
「そ、そんなに頂けるんですか?ぼ、僕、やります、鎮魂家のビジネスパートナーになります!」
条件を聞いた途端、学は即答した。
こんなにも待遇が厚いなんて思ってもいなかった。
しかも、ここで契約すれば今からでも大金が懐に入ってくるのだ。
「うふふ。いい返事ね。ただー、ビジネスパートナーをやっていただく上で条件があるわ」
「条件?って」
「それは私が指定したところに住み、私が命令したことには必ず従うことよ。まあ、当然だよね。こちらもあなたにそのお礼として大金を支払うのですから」
言われればその通りだ。
部下が上司に従うのは当然、しかも職を失った自分に救いの手を差し伸べてくれるのだから。
「わ、分かりました。従います。たとえ火の中水の中ついていきます」
その言葉を聞いた瑠璃は口角を挙げた。
「いい返事ね。それじゃ頑張っていただきますよ。本日から」
そう言うと、瑠璃は着物の中から、札束を取り出してそれを学に渡した。
「受け取りな。契約金の50万円よ」
先程の優しかった口調とは異なり、低音のガチトーンだった。
50万の束が自分のものになったことを改めて実感した。
このお金を何に使おう、家族に何か買ってあげようか、それとも自分で大きなものでも買おうか。
こんな想像をしているうちに、瑠璃は一人で河川敷から出ようとしていた。
「家を紹介してあげる。ついてきて」
そうして、後ろを向いて学がついてくるように促した。
「は、はい!ついていきますよ!」
学は瑠璃の背中のほうに吸い込まれるかのようにつけていった。
学からは聞こえない位置で、瑠璃は独り言をつぶやいた。
「ふふふ、今年の新人君はどこまで生き残れるかな。楽しみだ」
何もかも失ったニートの僕、鎮魂家のビジネスパートナーに転職します! ~今日から仕事は悪霊退散~ 賭井博打 @mizuho1158
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