第2話 青髪の女性
「あー、俺、なんで生きているんだろうな?」
学は、夕日の当たる河川敷で寝そべりながら、誰も答えをくれない問いを自分にかけ続ける。
そして、飲み終えたコーヒー缶を握りつぶす。
バリバリと音を立てて小さくなってしまった缶を川に投げた。
ポチャリという音が聞こえて来る。
いっそ自分もあの缶のように溺死してしまおうか。
水の中で何も考えずに死んでしまおうか。
そういう考えが頭の中をぐるぐると駆け巡る。
しかし、実際は自殺する勇気もなく、ただぼんやりと寝ているだけなのである。
すると、自分の頭の上に夕日で伸びた影が映り、女性の声がした。
「何をされているんですか?そんなスーツ姿で。こんなところで寝ていると風邪をひいてしまいますよ」
いきなり話しかけられた学は驚いてびくりとした後、振り返って座った。
すると、目の前には青い髪の毛を三つ編みにした女性が立って学のことを見下ろしていた。
鼻が高く、糸目で長身のお姉さんという見た目だった。
「お、お姉さん、誰ですか?」
おどおどとしながら学は尋ねると、女性はニコリと口角をあげて微笑みながら言う。
「うふふ。びっくりさせすぎちゃったかな?お兄さんが一人で座っていたから話しかけただけですよ。私の名前は
「よ、よろしく。僕の名前は藍坂学です、、、」
「ふふふ。照れちゃって。顔赤くなってますよ?」
学は瑠璃にからかわれ、うつむいて目を合わせないようにした。
「ああ、そんなに隠さなくてもいいのに。恥ずかしがり屋さんなのね」
「ま、まあ」
「まあ、それはいいとして。お兄さんこんな時間に何をしてたの?夕日に照らされながら寝ていましたけど、失恋でもしたんですか?なんというか、嫌なことでもあったんですか?」
「ど、どうしていきなりそんなことを聞くんですか?僕たちまだ出会ったばかりなのに」
「まあいいじゃないですか。話してみてくださいよ。最近、つらいことがあったんでしょ?」
そう言うと瑠璃は、学の顔の前でしゃがんだ。
ふわりとしたシャンプーのにおいが鼻の中に届いてくる。
「じ、実は、、、痴漢冤罪をかけられちゃって、で、それがネットに拡散されてこの様ですよ。会社も今日クビになりましたし、何もかもうまくいかない、、、」
学はうつむいたまま今日起きた出来事をすべて話した。
瑠璃はその話を黙ったまま聞いてくれた。
「もう稼ぎどころも失いましたし、もう死ぬしかないのかなあ」
「そ、そんな死ぬなんて。学さんまだお若いじゃないですか?」
「いやあ、情報社会とは恐ろしいものですね。一度人に疑われてしまったらもう取り返しがつかないのですから。今から僕が就職することなんてできないですよ。どの会社も敬遠するに決まってる」
「ええっ、、、人生諦めるの早くないですか?まだ生き延びる方法がきっとありますよ」
「いや、もういいんです。死ぬなら早いほうがいいですから。話ができてよかったです。それでは、さようなら」
学は立ち上がってその場を去ろうとした。
すると、瑠璃が手を伸ばして学を引き留めようとした。
「ま、待ってください。わ、私、私のビジネスパートナーになりませんか?」
「今度は何ですか?まさかお姉さんマルチの勧誘ですか?僕なんて勧誘しても無駄ですよ。大してお金も持っていませんから、別を当たって下さい」
「ち、違いますよ。早とちりしないでください!私は、鎮魂家なんです!ぜひ学さんにお手伝いしていただけると、、、嬉しいんですけど。あ、ちゃんと報酬は渡しますよ!」
「ち、ちんこんか、ですか?」
「は、はい。鎮魂家です!」
「そ、それって、何か卑猥なことでもするんですか?ち、ちんこ、って」
「ち、ちんこじゃありませんよ!鎮魂です。亡くなった人の魂を鎮める仕事ですよ!もう、学さん、なんてことを想像しているんですか?」
チャームポイントの糸目がカッと開かれた。
緑色の透き通った水晶のような瞳が現れる。
「な、なんかごめんなさい」
学はぺこりと頭を下げた。
その姿を見ながらため息をつく瑠璃。
しかし、呆れずに続きを話してくれた。
「まあ、いいです。ところで、死んだ人の魂ってどこに向かうと思いますか?」
瑠璃は突然問いかける。
「えー、、、」
死をさっきまで考えていたのにこの問いには即答することができなかった。
死後の魂の行方?
いや、まず人に魂というものは本当に存在するのか?
まず、死んだ後、人の意識というものはどうなっていくんだろうか?
考えば考えるほど学は分からなくなっていった。
それと同時に「死」に関していきなり恐怖感がわいてきた。
死んだら僕が僕でいなくなるのか、、、?
最終的に学は一人で頭を抱えだしてしまった。
「ああ、そ、そんなに考え込まなくてもいいのに。ほ、ほら、死後の世界なんて想像することしかできないもの。悩んだって仕方ないですよ」
「死後の世界ってやっぱり分からないんですか?」
「ええ。まあ、
学は瑠璃の言葉に違和感を感じた。
まるで、自分が普通の人間でないかのような話し方をするではないか。
「ふ、普通って?」
「あのね、私ね、
蒼い風が二人の間を吹き抜けていった。
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