自分の部屋で国内旅行!
天川裕司
自分の部屋で国内旅行!
タイトル:(仮)自分の部屋で国内旅行!不思議な感覚によって意識だけが旅行していたが、アクシデントがキッカケで悲惨な結末に…!
1行要約:
旅行から帰れなくなった女の末路
▼登場人物
●伊式千鶴子(いしき ちづこ):女性。26歳。OL。大の旅行好き。でも疫病下にある世情により旅行できなくなって、パソコンのグーグルマップでの旅行を楽しんでいる。両親と共に実家暮らし。
●母親:千鶴子の母親。56歳。一般的なイメージで。
●父親:千鶴子の父親。57歳。一般的なイメージで。
●未憶梨子(みおく りこ):女性。20代。千鶴子の「どうしても旅行したい」と言う意識と夢から生まれた生霊。
●ドクター:男性。50代。千鶴子の主治医。
▼場所設定
●会社:千鶴子が働いている。普通の商社のイメージで。冒頭で一瞬映る程度でOKです。
●千鶴子の自宅:一般的な戸建て住宅のイメージで。千鶴子の部屋は2階。部屋のテーブルにはパソコンが置いてあり、そのパソコンのすぐ上に棚がある。その棚の上に大きな地球儀やいろんな物が載っている。
●バー「Go in トラベル」:外観は異国情緒あり。中は一般的なバーのイメージで。静かなムードで人気(ひとけ)は疎ら。
●病院:意識が戻らない千鶴子がずっと入院する。一般的な総合病院のイメージで。
▼アイテム
●トラベルシート:インデックスのようなシール。これをパソコンに貼れば、そのパソコン内のグーグルマップを本当に旅行する事が出来る(パソコン前の本人は眠っている状態で)。但し自分のパソコン(シールを貼ったパソコン)だけが出入口になる為、そのパソコンが壊れると出入口を失い戻れなくなる。
NAは伊式千鶴子でよろしくお願いいたします。
オープニング~
魔女子ちゃん:ねぇぷちデビルくん、ぷちデビルくんって旅行好きだったっけ?
ぷちデビルくん:旅行だって?へっ、俺ぁいつでもテレポートで旅行できるからな♪好きも何も自由にいつでも旅行できるんだけど。
魔女子ちゃん:あ、そーだったわね。でもあんたに来られた地方の人はホント迷惑だよねぇ。
ぷちデビルくん:バカ!最近じゃ俺の人気も結構上がって来てるんだぜ!
魔女子ちゃん:ふぅん。聞いた事無いけどまぁいいや。今回のお話はね、或る旅行好きな女性にまつわるホラー譚…と言うか悲惨なお話なのよ。
魔女子ちゃん:世界が疫病の拡大で一変して、一切旅行も出来なくなっちゃって、毎日フラストレーションが溜まっちゃうのよね。
魔女子ちゃん:それで「どうしても旅行したい」って思ってた或る日、不思議な人から良い方法を教えて貰うんだけど、それがもとで悲惨な結末になっちゃって…。
(↑朗読動画の場合は無視して下さい↑)
メインシナリオ~
(メインシナリオのみ=4210字)
ト書き〈会社帰り〉
千鶴子)「お疲れ様でーす♪」
私は伊式千鶴子(いしき ちづこ)(26歳)。
普通のOLだ。
千鶴子)「さて!今日もウチ帰って国内旅行♪楽しむぞォ~!」
会社はそのうちテレワークになるかも知れない。
理由は疫病の拡大。
或る国から発祥した感染病が世界的に流行し、それまでの生活が一転した。
こんな私は大の旅行好き!
だから旅行が出来ない事が、私にとって何よりも最大のトラブルなのだ。
千鶴子)「はぁ~、いつになれば普通に旅行できるのォ?」
ト書き〈帰宅〉
千鶴子)「ただいまー」
私は実家暮らし。
部屋は2階。
帰宅するといつも私は決まってパソコンに向かう。
そして実際に旅行できない分、グーグルマップでの旅行を楽しむ。
これがもう毎日の日課になっていた。
ト書き〈パソコンに向かう〉
千鶴子)「さーてと、今日はどこに旅行しようかなぁ~♪」
もうパソコン内での〝電子旅行〟を2年続けている。
それだけ続くと流石に飽きて来る。
ト書き〈数週間後:自宅〉
時間もお金も労力も要らないマップ旅行。
でもそれは単に、地図やストリートビューを眺めるだけの旅行。
体感も無く感動も薄い。
そんな旅行を続ける内に、本当の旅行に行きたいと願ってしまう。
千鶴子)「はぁ。ちょっと気晴らしでもしよ」
仕事は既にテレワーク。
ずっと家に篭りっきりの私。
流石に気分も滅入ってしまい、この日、少し散歩した。
ウォーキングを兼ねての散歩。
少し遠回りして家に帰ろうとした時。
ふと、見慣れないバーがあるのに気付いた。
ト書き〈バー「Go in トラベル」入店〉
千鶴子)「あれ?こんな所にバーなんてあったんだ。『Go in トラベル』?…ふぅん、何だか楽しそうなトコね。ちょっと入って見よ」
私は看板に惹かれ、つい入ってしまった。
千鶴子)「へぇ。結構お洒落ねぇ」
中は静かな雰囲気。
人も疎ら。
ちょうど良いと思い、私はカウンターに座って飲んでいた。
千鶴子)「ふぅ。やっぱ娯楽がなくちゃねぇ。ずーっと自粛生活だと気が滅入っちゃうわ。はぁ…。ホント早く旅行に行けるようになりたい…」
愚痴りながら飲んでいた時。
1人の女性が声を掛けて来た。
梨子)「お1人ですか?」
千鶴子)「え?」
梨子)「もしお邪魔じゃなかったら、ご一緒してもイイかしら?」
見るとキレイな人。
上品な感じで、首にはスカーフを巻いていた。
千鶴子)「あ、はい…どうぞ」
梨子)「有難う。何だかさっきから溜息ばかりですね?何かお悩みでも?」
千鶴子)「は?」
梨子)「いきなりごめんなさい。実は私こういう者です」
そう言って名刺をくれた。
千鶴子)「『心の旅行はお部屋から!~メンタルコーチ』…未憶梨子(みおく りこ)?」
梨子)「こんな世情ですから、家から1歩も出ずに引き篭りになってる人も結構多いんです。私はそんな方々の為に『心の旅行』というものをご紹介し、その人の生活に少しでもメリハリが付くような、そんなお仕事をしています」
まさに自分の事を言われてる気がした。
私は少し興味を持ち、日頃の悩みなんかも話してしまった。
梨子)「そうですか。やはりあなたもそう言う事で悩んでたんですね。でも当り前の事です。ストレスが無いって言う人のほうが不思議なくらいですよ」
千鶴子)「はぁ。ホントに、出来れば大好きな旅行に早く行きたいんですが、それがいつになる事やら…。毎日少しずつストレスが溜まってるんです」
千鶴子)「毎日グーグルマップで旅行するだけで、本当の旅行で味わえるあの醍醐味は全く無い。初めは良かったんですが、最近はどうも物足りなくて…」
梨子)「わかりました。ではその悩みを解決して差し上げます」
千鶴子)「え?」
そう言って梨子はバッグからシールを取り出した。
千鶴子)「何ですかコレ?インデックスシール?」
梨子)「それは『トラベルシート』と言って、電子の世界でも本当に旅行させてくれる便利なシールなんです。どうぞ使ってみて下さい。それをあなたのパソコンに貼るだけで、あなたは本当にグーグルマップで旅行できます」
梨子)「何より良いのは、グーグルマップは電子の世界ですから、その世界に疫病による影響が全く無い事です。つまりあなたは自由にどこへでも旅行する事が出来、その素晴らしい体感を味わえます。お金も労力も掛かりません」
千鶴子)「そ、そんな事…」
梨子)「どうせこのままの生活では、あなたのストレスは溜まる一方です。それなら少しでも自分で楽しみを作る工夫をするべきです。シールは無料で差し上げます。そのシールの本当の魅力は使ってみて初めて分かるでしょう」
支離滅裂な事を言っている。
でも試してみたいと思った。
少しでも刺激が欲しかったのは事実。
それに無料。
試してみて損は無い。
それから軽く私も自己紹介し、暫く談笑した。
梨子)「千鶴子さん。1つだけ言い忘れておりました」
千鶴子)「はい?」
梨子)「そのシールを貼ったパソコンですが、絶対に壊さないようにして下さいね。もしパソコンが壊れてしまえば、あなたは出入口を失う事になります」
千鶴子)「え…?ど、どういう事ですか?」
梨子)「いいですか?そのシールはグーグルマップの電子の世界と、あなたのお部屋とを繋げる架け橋の役割を担います。ですので、そのシールを貼ったパソコンが壊れると、あなたは現実の世界へ通じる道を失う事になる訳です」
千鶴子)「そ、そうなんですか…?」
梨子)「ですからパソコンが壊れ気味だったり、又、あなたのお部屋以外の場所にあるパソコンでそのシールを使う事はお勧めしません。もし誰かがそのパソコンを消したりシールを捨てたりしても、出入口は消えてしまいます」
少し怖い事を言う。
もちろん半信半疑。
でも本当にシールを使う気でいるなら、軽く無視する事は出来ない。
私は今言われた事を、深く心に留めておいた。
千鶴子)「わかりました…」
ト書き〈数か月後〉
それから数か月後。
私はまだ梨子から貰ったシールを使っていなかった。
やはり最後に言われた事が怖く、どうしても使う気になれなかったのだ。
でも…
千鶴子)「ああ…旅行に行きたい!くそぅ!こんな生活いつまで続くのよォ」
世間は相変わらず規制・規制の嵐。
旅行は国内でさえ禁止されている。
隣県程度ならOKだが、そんな場所は既に行き尽した。
私のフラストレーションは限界を超えていた。
そして…
ト書き〈シールを使う〉
千鶴子)「だ、大丈夫よ…この部屋で使うんだし。それにあの人が言ってる事だって本当かどうか怪しいわ。それなら退屈を消す意味でも試す価値はある」
私は遂に梨子から貰った「トラベルシート」を使った。
ト書き〈マップの世界を本当に旅行する〉
シールをパソコンに貼る。
そしてグーグルマップでカーソルを行きたい場所に落した瞬間。
千鶴子)「うわぁ!!」
私の意識はギュギュギューンと画面に吸い寄せられた。
そして本当に、カーソルを置いたその場所に来ていたのである!
千鶴子)「こ…こんな事が…まさか本当に…?あ、アハハ…私、ホントに来てる…!あはは!本当にカーソルで指した場所に来てるわ!やったぁー!!」
信じられない。
風や街の匂いも体感できる!
お店で商品を買う事も出来る!
ご当地グルメも堪能出来る!
私はこれまでの鬱憤を晴らすべく、存分に行きたい場所へ行った。
そして丸1日楽しんだ後、部屋に戻った。
千鶴子)「うぉ…!あ、帰れたの…?アタシ寝てたんだ…」
パソコン画面から私の意識だけが出入りしている感じ。
パソコン前の私は寝ていた。
その体にまた私の意識が戻って来る…そんな感覚だった。
千鶴子)「ハ…ハハ…これ凄いわ…なんって素晴らしいシールなの!」
その日から私は毎日旅行した。
まだ行ってない場所や外国まで、あらゆる場所に行きまくった。
千鶴子)「あっははは!」
時が経つのも忘れるくらい。
千鶴子)「大丈夫よ、アタシのパソコンまだ買ったばかりだし、壊れる事なんてないわ。それにホントの私はパソコンの前で寝てるだけなんだし、意識が旅行してるんなら、また目覚めるように私は自分の体に帰れる!大丈夫よ!」
私は梨子に言われた事を少し軽く見た。
ト書き〈地震〉
そうして今日も旅行していた時。
稀に見る大地震が発生。
ト書き〈自宅〉
母親)「きゃあぁ!」
父親)「くそ大きいぞ!気を付けろ!」
私の家は大きく揺れた。
パソコンの上の棚からも物が散乱するように落ちて来た。
その時、サイズ大の地球儀がパソコンに当たってしまった
当たり所が悪かったのか、その衝撃でパソコンが破損した。
父親)「千鶴子!大丈夫か!?なんだお前、パソコンの前で寝てたのか!くそ…!まだ大きく揺れて来やがる!このままじゃ危ない!しょうがないな!」
父はパソコンの前で寝ていた私を抱え、そのまま階下へ降りた。
ト書き〈数日後、病院〉
母親)「先生、千鶴子の意識はいつ戻るんでしょうか」
ドクター)「それはわかりません…。特に外傷が全く見当たらないのです。いろいろ検査してみましたが、他にも異常は見当たりません。なぜ意識が戻らないのかさっぱり判らない状態なんです。こんなケースは本当に初めてです」
あれから私の意識はずっと戻らなかった。
父や母は、あの地震で落ちて来た何かが私の頭に当たったと思ったらしい。
それで意識を失ったのか…と。
しかし私の体には外傷が全く無い。
ドクターも頭を抱えるばかり。
ト書き〈暗闇の中にずっといる千鶴子〉
千鶴子)「助けてーー!」
パソコンが破損してから私の世界は真っ暗闇だ。
右も左も分からない。
私の意識はずっとパソコンの中。
私のパソコンとあのシールが今どうなってるのか…。
考えるだけでも恐ろしい。
もし処分されたりしていたら…。
そんな取り留めの無い妄想が私をずっと取り巻いていた。
ト書き〈廃品処理に出されたパソコンを前にして〉
梨子)「やれやれ、とんだアクシデントだったわね。あれだけ注意してと言ったのに。でもまぁ地震だけは予測も付かないし、仕方が無い事だったわね」
梨子)「私は千鶴子の『旅行したい』という意識と夢から生まれた生霊。千鶴子の理想を叶えてあげたけど、これじゃ自粛してたほうがまだ良かったわね」
梨子)「楽しみも程々にしておかないと、いざと言う時にソレを我慢出来なくなってしまう。そしてその事が結局命取りになる。日頃から自分に節制する意識を持たせておく事、これは誰にとっても大切な事なのでしょうねぇ…」
エンディング~
魔女子ちゃん:あらまぁ、結局、千鶴子さん、地図の中に取り残されちゃう感じになったのねぇ。それもパソコンの中の電子の世界だから、もう戻って来れないかも知れないわ。
ぷちデビルくん:だなぁ。そのシールを貼ったパソコンじゃないと戻れないってんなら、そうなるわな。
魔女子ちゃん:ちょうど旅行してた時に地震なんて、ホントにツイてないわよねぇ…。
ぷちデビルくん:まぁ自然災害とか天災ってのは、人間にゃ全く予知できないからな。予測にしたって単なる確率論だし、確かな事は何も無いわけさ。
魔女子ちゃん:そーだねぇ。いま世界中でも大変な事になってるけど、やっぱり自粛する気持ちって言うか、こういう時こそ自分の欲望を抑える「心の姿勢」ってモンが大事なのかも知れないわね。
ぷちデビルくん:まぁな。そうは言っても現代人にゃ、あんまり効果無い事もあるんだよな。何つっても現代人は自制心とか我慢ってモンが絶対的に足りないからなぁ。
魔女子ちゃん:まぁ何はともあれ、自分の身を守る為にも、必要最低限の節制はしといたほうがいいかもね。
(↑朗読動画の場合は無視して下さい↑)
動画はこちら(^^♪
https://www.youtube.com/watch?v=7MWYX1bXeN0
自分の部屋で国内旅行! 天川裕司 @tenkawayuji
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