誰もが応援する教師では無い。でも、誰かにとっては特別な先生。
- ★★★ Excellent!!!
第7章11話を読み、レビューを書き直すことを決意しました。
百合&生徒×先生モノとして読み応えがあります。文章の完成度も高い。先生視点では抑制が効いた文章で整合性があるため読みやすく、最新話のファーストキスを読み終えたころには、再び読み返しました。
この作品の物語が動くところも好きです。
私にとって物語とは、様々な要素の「設定」や時代背景やキャラのやり取りなどによる「出来事」だけではないと思っています。「設定」と「出来事」を楽しむなら、私は物語を読まず、ネット上の情報だけ目を通します。同じ文章を見返す真似もしません。
物語とは「誰が何をどうしたか」の「どうしたか」が鍵を握ると私は考えます。それは設定や出来事を繋ぐこと。日日先生はそれらを綴るのが上手いと感じました。
筧莉緒先生が推しになりました。私にとって、莉緒先生は可哀想でかっこいいです。彼女を推して恋を応援しなくては、そう思わせてしまう魅力があります。
莉緒先生が抱える想いは、教師としては清廉で正しい情動です。それに伴う先生の行いは「道義」に反していないと私は思いました。けど、人によって先生の行いは「道義」に欠けているように感じさせるはずです。上原さんのお母さんのように。だからこそ、私は筧莉緒という女性を可哀想でかっこよく見えます。
さてここからネタバレ注意です。
現(第7章11話)時点の彼女は教師としての矜持を貫いていくつもりかもしれません。今は理解されなくても、相手に気持ちが揺らいでも、培ってきたことが崩壊しても、自ら掲げた想いを胸に。
それは生徒たちへの憧憬と羨望と愛情であり、教師としてのプライドと執念であり、「親愛」に近いと思いました。
そんな彼女がその時に持つ思想と価値観が、通じて書かれていて共感しやすい内容です。恩師にかつて恋した教え子として、新たな恋心を抱いた女性として、不得意な内容の相談を受ける担任として、告白を拒まなければならない教師として。どれらの彼女も懸命に自分で考え行動しています。
彼女は教師ですが、あくまでも一人の人間であり、苦しみがあり劣等感があり諦念があり、感謝の念を抱き、心を許して気持ちが揺らいだこともあります。
しかし、彼女が固執する教師としての「仮面」に覆い隠れているように感じました。自分自身の欲望や恋心も、メイサさんからの特別も教師としての「仮面」を、引き剥がすことは第7章11話時点では出来ませんでした。
彼女が被る「仮面」は正しく清廉な教師であり、それ故教師としての責任や義務に固執し「仮面」を自ら引き剥がすことすら出来なくなっているのかもしれません。
だからこそこんなにも可哀想でかっこいいです。
第7章の11話で彼女は教師としてメイサさんを大切にしてしまいました。自分や彼女の想いがどうなるのか、自分が何をするのかを認識するように努め、そして上原さんの将来を守るためにです。
あらたな恋を諦め、己が理想とする教師像の「仮面」を被り、本能に抗い続けようとしています。このままではさらに、自身の本心を偽ろうとするつもりかもしれません。
教壇に立つ意義を決して違えてはいけない、など誤りで無理な話です。でもその不可能なことを実現させようとしたのは彼女自身ですから。
不器用で哀れな人間(教師)が、筧莉緒という女性なのだと、描かれているからこそ様になるのです。
果たして筧莉緒が被る教師としての「仮面」を、上原さんはどのように引き剥がすことが出来るのか?それとも自ら外さなくてはいけない出来事が起きてしまうのか?先の展開が良い意味で読めません。今後も日日先生を、主人公の二人を応援していきます。