第10話
「流石に今から外出てなんかするのは無理だな……」
暗くなりつつある外を一瞥してから、寝袋の上に今持つすべてのカードを並べて眺める。
「そろそろ名前考えたほうが良いよなぁ。犬に犬って呼んでるみたいなもんだし……」
勝手に名前が決まってくれたら楽なのだが、恐らくカードには何もしなければその種族の名前が書かれるのだろう。実際、今まで捕まえた三匹もそのままの名前が書かれていた。
「ランダムで名前決まってくれたら楽なのにな……ネーミングセンスとかねぇよ俺……」
いっそ全部このままにしておけば楽なのだろうが、今後同じ種類の奴を捕まえた時には大変なことになってしまう。
「まぁとりあえずスラさんみたいに名前から取るか……?」
ウルフやトレントは名前らしい取り方を出来はするが……。
「ゴブリン……ゴブはなんかだし、リン……は見た目に合わないな……」
パソコンやスマホがあれば調べて適当に付けるもできるが、そんなものは無いため自分の頭の中からひねり出さなければならなのが余計に大変だ。
「変な名前にするのもかわいそうだし……んー……!」
「さっきから何を悩んどるんじゃ?」
カードを眺めながらぶつぶつ言っている俺が気になったのか、こちらへと寄りカードと俺を交互に見てから体を傾げている。
「んぁ……スラさん。そろそろ名前でも付けようかと思って……」
「ほう。その様子ではあまり良き名も浮かばぬようじゃの」
「そうなんだよ……なんかいい感じの名前ない? 一番悩んでるのはゴブリンのなんだけど」
「ふむふむ……名は案外馬鹿にできぬものじゃ、使役する魔物なら特にの。どう成長して欲しいかを考え、その姿をイメージしてつけるのはどうじゃ」
どう成長して欲しいか。強く成長して欲しいとは思うが、そこを具体的に考える必要がありそうだ。
「なるほどなぁ……まぁゴブリンって結構派生ありそうだしな……」
戦士だったり魔法使いだったりと、色々なゴブリンが居るのはイメージができる。その中でどのゴブリンになってほしいか……。
「バランス考えると魔法使いかなぁ。ウルフが前衛だし」
「魔法使いか。人間たちはゴブリンメイジなどと呼んでおったりするのがおるの」
「その呼び方なのはゲームもこっちも同じなんだな」
まぁ、自動翻訳みたいなもので俺の分かりやすい単語に変えられているだけかもしれないが。そういえばなぜ言語は通じたり聞こえたりしているのだろうと思考が逸れかけたのを、頭を振って留める。
「こっちに来ることになった原因とかがつけたんだろう、きっと」
不便が無くてありがたいとだけ受け入れ、深く考えても分からないのだから気にしないようにして、カードを全て手に持つ。
「まぁ大体決まった! んでこれってどうやったら名前変わるんだ?」
「相手にお主の名はこうじゃと言ってやればよい」
「なるほど……んじゃウルフ、ちょっとおいで」
手招きしながら呼べば、素直にこちらへと近寄り俺の傍で丸くなって休み始める。
「結構懐かれてそうでありがたいな……。今日からお前はフェンだ」
頭を撫でながら伝えると「ワフ」と返事のように鳴き、カードに書かれていた名前が変化し、名前の下に種族:ウルフと追加で書かれている。
「おー……変わったし増えた……。よし、次はトレント」
何も無い時は俺の膝の上が定位置になったようで、名を呼べば顔をあげてこちらを見上げた。
「怖い系の奴に育つんじゃないぞ……お前はルシにしよう。大きくなるんだぞ」
大きい木で脳内にあるものから取りはしたが、大きく育ってしまったら膝の上に乗せることはできなくなってしまうのは少し惜しくはある。
「最後にゴブリン。お前は今日からマージだ」
食事のおかげで少しは心を開いてくれたのか、少し離れた位置のままではあるが呼んでも怯えや警戒などは薄く反応は示してくれた。
「よし。これで一旦全員の名前は終わりだな」
マージがどの程度手伝ってくれるかによるが、問題がなさそうならば明日はゴブリンの巣に赴くことになるだろう。
「そうじゃないにしてもまた森を歩くことになるし……今日も早めに休むか」
ベッドで寝れるのならある程度は夜更かししてもしっかりと眠れるのだろうが、この環境で寝袋なせいで寝ても寝た気があまりしないため、早いところこの辺も整えたいところだ。
「人手が増えたらだいぶ楽になるはずなんだよな……平和にゴブリン達を仲間にできればなんとか……」
説得が上手く行かなかった場合や、成功したその先は今は考えすぎても仕方がない。とりあえず今は全てが上手く行く想定でやるのが精神衛生上良いだろう。
「とはいえあんまり考えないのもダメか……眠れるまで考えよ」
ルシを横へ置き、寝袋に入って横になり目を瞑る。
先の事を考えながら、この世界に来てから何日目かの夜が明けて行く。
異世界転移の魔物使い 霧代アユム @kirishiro_ayumu
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