新妻の、な・い・し・ょ♡

さいとう みさき

あなたぁ♡ 私、もう我慢できないのぉっ♡♡♡!!!!

「はぁ~」


 彼女、新島幸子にいじまさちこはため息を吐いていた。

 それもそのはず、新婚ほやほやであるにもかかわらず夫である雄太ゆうたがいきなり短期海外出張で一ヵ月ほど家を空ける事となってしまったのだから。

 仕事なので仕方ないとは言え、せっかくの新婚生活。

 それこそいちゃいちゃして、親にもせかされている孫の顔を見せるために子作りもいそしみたいと言うのに。


「とは言え、仕方ないわよね。あの人が帰ってくるまでの我慢我慢」


 幸子はそう言いながら、アルバイトの仕事に出かけるのであった。



 * * *



「それで、幸子の所はどうなのよ?」


「どうもこうも、旦那が海外出張で寂しいわよ……」


「あれ、旦那さんいないんだ?」


「じゃあ、体が寂しいのじゃない♪」


「もう、恵美ったら、なに言ってるのよ///////」



 幸子は久しぶりに友人たちと女子会をしている。

 夫がいないので、時間的にも余裕があるし、一人でいるのは寂しい。

 なので、友人たちの誘いで女子会に来ていたのだ。



「そうそう、これうちの畑でとれたキュウリとナス、おすそわけね~」


「裕子の所、農家さんだから野菜だけは食べ放題よね?」


 友人の一人が、農家なので野菜のおすそ分けをもらった。

 見れば、見事なキュウリとナスだった。

 ごつごつとした表面だが、なかなかの大きさのキュウリ。

 程よい長さとそりのナス。

 夏野菜の定番だが、まだ六月の早い時期ではスーパーでもお値段が高い。

 なので家計の助けとしてはとても助かる。


「そうそう、うちの畑でもニンジンが取れたのよ~、これおすそわけね」


「ニンジン……」


 幸子は別の友人に分けてもらったニンジンを見る。

 既に葉っぱも取られて、スーパーで売っている奇麗な状態になっている。

 ちょっと握ってみると、非常に硬い。


「あ、ありがとう。美味しくいただくわ」


「うんうん、幸子はニンジン苦手だけど、野菜は健康の為にも沢山食べても損は無いからね! さてと、それじゃぁ私は帰るね、みんなまたね~」


「あ、私もそろそろ。それじゃまたね」


 そんな流れで久しぶりの女子会はお開きとなった。

 幸子はもらった野菜を眺めてからちょっと握ってみる。



「……立派なお野菜よね」



 そうつぶやいてから家路にへと戻ってゆくのだった。



 * 



「ん、特売日?」



 帰りがけにスーパーの特売の登りが目に入った。

 見れば玄関先で、賞味期限ぎりぎりのソーセージ特売をやっていた。



「いらっしゃい、いらっしゃい! 只今サービスセール中!! 残りわずかですよ、さぁさぁ、早い者勝ちですよ!!」



 なんとなく釣られてそれを見ると、太目の魚肉ソーセージの販売をしていた。

 何と、元値の75%引き!!

 幸子は迷うことなく、この極太魚肉ソーセージを買い入れるのだった。




 

「はぁ~、安いからと言って、なんか余計なモノ買っちゃったなぁ~。賞味期限もあるから早めに食べないと……」



 そんな事を言いながら、近道である商店街を歩いていると、八百屋さんがあった。

 今ではシャッターが閉まっている店の方が多い商店街だが、まだやっているお店もちらほら。

 そんな八百屋さんの前でお客が集まっている。



「もってけ泥棒! フィリピン産のバナナと、エリンギの特売だよ!! さぁさぁ、残りわずかだよ!!」



 威勢のいいお兄さんのその声に何となくつられて行ってみると、良い太さのバナナや、立派なエリンギがお得な価格で売っている。


「お、そこの美人のおねーさん、バナナは美肌に良いんだよ~。それと、エリンギはカロリーゼロ! いくら食べても太らない健康食品だ、どうだい?」


 そう八百屋のお兄さん言われ、一瞬たじろぐもさわやかな笑顔にごり押しで買わされてしまった。


「ううぅ、私って押しに弱いのよね…… でもあの八百屋さんのお兄さん、結構イケメンだったなぁ……」


 少々頬を赤らませ、ぽうっとしながら歩いて行く幸子だった。



 * * * * *



 きんこーん!



 呼び鈴が鳴った。

 幸子は玄関に行くと、宅急便のお届け物だった。

 何だろうと思い、それを受け取り、開けてみると電動マッサージ機だった。


「まったく、あの人ね? どうせ衝動買いなのでしょうけど、そんなに肩こりしてたのかしら?」


 幸子は何となく、それを手に取り、電源を入れてみる。



 ぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶっ!



「け、結構振動が強いのね……」


 そう言いながら、自分の肩にそれをあててみる。

 

「んっ♡」


 それはとてもいい振動だった。

 そして気持ちいい。


「ん~、これイイかもぉ~♡」


 ぶるぶると振動するそれは、見事にたわわな胸も揺らす。


「これぇ、きくぅ~♡」


 なんか勘違いしそうな声で、電動按摩の振動を楽しむのだった。



 * * * * *



 「へぇ~、駄菓子屋さんかぁ。そう言えばお父さんの時代では本当にこんなお店がいっぱいあったって言ってたなぁ」



 ショッピングモールで一人寂しくぶらぶらしていた幸子だったが、新しく出来たその駄菓子屋に興味本心で入ってみる。

 そこにはお安いお菓子や、どう見ても安っぽいおもちゃなどが売られていた。


「へぇ~、こんなものまであるんだ」


 そう言って幸子は、玩具の手錠を手に取る。

 一応鍵は着いているが、手元のロックを押せば簡単に外せる。

 それがツボに入ってしまった。


 幸子はノリと勢いで数個のお菓子と、その手錠を買ってしまうのだった。



 * * * * *



「ううぅ、ワンちゃん可愛い///////」



 幸子はショッピングモール内にあるペットショップで、子犬を見ていた。

 ころころとした体に、無邪気にじゃれ合っている様子がとても可愛らしい。


「でもうち、ペットダメだからなぁ~。持ち家なら考えちゃうんだけどなぁ~」


 現在幸子はアパート住まい。

 なのでペットは禁止されているのでたまにこうしてペットショップを覗いて癒されに来ている。



「もしよかったら抱っこしてみますか?」


「え、あ、良いんですか?」


「はい、どうぞ。それでは手の消毒してもらいますね」


 そう言って店員に手の消毒をされて、子犬を抱っこさせてもらう。

 すると子犬はしきりに幸子を舐めだす。


「かわいいぃ~♡ でもちょっとくすぐったいよぉ~♡」


 ぺろぺろと手を舐めていた子犬は、何故か幸子の服も舐めだした。

 そして、そのたわわな胸までも!!


「あん♡ 悪い子ね、でも可愛いぃ~♡」


 しばしそうしていると、店員がやって来た。

 そして幸子に言う。


「どうです、可愛いでしょう?」


 にこやかにそう言いながら、子犬を幸子から受け取る。

 幸子は十分に癒されていたので、お礼を言って帰ろうとすると、店員から呼び止められる。



「ただいまキャンペーン中で、鎖と首輪のプレゼント中なんですよ、どうぞ」


「あ、いや、うち犬いないので……」


「将来必要になるかもしれませんよ、どうぞ」


「あ、いや、その……」



 断ろうとしても、押しの強い店員に鎖と首輪を渡される。

 幸子はそれを持ってとぼととぼと歩きながら独り言を言う。


「これをどうしろと? これにつなげる犬を買えって事? いやうちってアパートだから……」


 どうしたら良いか悩む幸子だった。



 * * * * *   



「お姉ちゃん! これあげる!!」


「何よいきなり。って、学校は?」


 

 幸子の家に妹の由美ゆみが来た。

 まだ女子校生なので、こんな時間に幸子の元へ来るのはおかしい。


「学園祭だったんで、片付けで今日は半日だよ。それよりこれお姉ちゃんにあげるね♪」


 そう言って由美が紙袋から引っ張り出したのバニーガールの衣装だった。

 由美はそれを両手で持って見せながら言う。


「学園祭の出し物で使おうとしたんだけど、これっておっぱい小さいとパッドが簡単に外れちゃうのよ。お姉ちゃんおっぱい大きいから使えるでしょ?」


「いやいやいや、こんなモノ何処で使うのよ!?」


「え、雄太さんといろいろ楽しむ時に♪」


「なっ///////」


 まさか妹からそんな事を言われるとは思わなかった。

 幸子は焦りながら言う。


「な、なにをおませな事言ってるのよ! い、いらないわよ!!」


「え~、でもお姉ちゃん雄太さん帰ってきたら激しいんでしょ?」


「な、なに言ってるのよこの子はっ///////」


「だって、お姉ちゃん雄太さんいなくなってから欲求不満と言うか……」


 由美はそう言って台所に置いてある野菜や果物、リビングのソファーにおかれているマッサージ器やテーブルの上の玩具の手錠や首輪と鎖を見る。


 しかし、当の本人の幸子は首をかしげるばかりだ。


「なんで私が欲求不安なのよ?」


「いや、だって、一人で寂しいからあんなものまでそろえて自分を自分で慰めてたり、雄太さん帰ってきたら手錠で縛り付けて首輪と鎖で…… お姉ちゃんのムッツリスケベ///////」


 ここにきて幸子は改めてそれらの野菜や果物、魚肉ソーセージやグッズを見る。

 そしてそれらと由美を見比べしばし。




「ななななななななななななっ///////!!!!」




「まぁ、私はまだ処女だからわかんないけど、お姉ちゃんは早く子供作ってお父さんたちに孫の顔見せなきゃだもんね~。やっぱ経験者は一人エッチも過激なんだなぁ~///////」


 流石に顔を赤らませてそう言う由美に、幸子は由美以上に顔を赤くして叫ぶ。




「そんなんじゃなぁーいぃぃっ!///////!!!」




 * * *



「ふうぅ~」



 さんざん妹の由美にからかわれた幸子は風呂上りにぐったりとしてリビングでバスタオル姿で缶チューハイを開けた。

 ぐびぐびと喉を鳴らしてそれを飲んで一息。


「まったく由美のやつ、高校生のくせして変な知識だけは豊富なんだから……」


 そう言いながら、ソファーに腰かけテレビをつける。

 と、ちょうどドラマの濡れ場だった。

 男女が絡み合うその画像は一瞬ドキリとさせられるが、何となくそれを見続けてしまう幸子。

 ふいに、マッサージ器やキッチンにおかれている野菜や果物が目に入る。


 目に入る……




―― 三週間後 ――



「ただいまぁ~。幸子、今帰ったよ~」



 夫の雄太が出張から戻った。

 荷物とお土産の袋を玄関に置きながら雄太は玄関に座り靴を脱いで家に上がろうとする。



「おかえりなさい、あ・な・た♡」


 

 聞こえてきた声に靴を脱ぎ終わって振り返る雄太が固まる。

 と、その瞬間雄太の手に手錠がかけられる。


「な、どうしたんだよ幸子!?」


 そこにはバニーガール姿で瞳にハートを宿し、上気した色っぽい新妻がいた!


「もう、ずっと待ってたんだからぁっ♡ 寂しかったわぁ!」



 がっしゃーんっ!



「へっ?」


「あなたがいない間に色々と目覚めちゃったわ♡」


「え、あ、いや、幸子さん?」


 雄太の首にはしっかりと首輪がつかられ、そこから延びる鎖は幸子の手の中にあった。

 恐る恐る幸子を見る雄太。

 しかし幸子は色っぽく唇を舌で舐め、鎖を引っ張る。



「いただきますっ♡」


「ちょ、まって、帰って来たばかりで疲れて…… あ”あ”あ”あ”あ”ああぁぁぁぁぁぁっ!!!!」




 新妻。

 ああぁ、新妻。


 放っておいたら大変な事になるので新婚さんは要注意だ。




 経験者からの老婆心である……     


  

―― お・し・ま・い♡ ――



**************************************

あとがき:


うーん、ネタがない。

なので普通に新妻に登場していただきました。


暗黒星雲様企画の「第二回『エロ短編の集い』」最後の参加作品はとても普通のひねりも無い大人しいモノになりましたね。

書いている間ずっと「Lv2からのチートだった元勇者候補のまったり異世界ライフ」のOPソングが頭の中で再生されてました(笑)


「な・い・し・ょ♡」シリーズはこれにて終了です。

だってお一人様3作までですから。

先月も楽しいエロ祭りをありがとうございました、暗黒星雲様。


私はここまでです。

さあ、この後に続くエロの同志たちよ、私の屍を踏み越えて行くんだ、エロの境地へと!!


後は任せたぜ、皆の者('ω')ノ



では皆さん、この後も良いエロライフを! 




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