第42話人外部隊との別れ?
「良くやってくれた、レドラ、ホワイティ、マーメ」
俺たちはレドラたちと合流していた。勝利をもたらしてくれた功労者たちを労わないとな。
「妾にかかれば魔族を打ち倒すことなど容易いのじゃ。じゃが、テオドリック、存分に妾のことを褒めたたえるが良い、はっはっは!」
「私は私の出来ることをしただけですわ。皆さんのおかげです」
「私は何もしていないわ。空を飛んでいただけですもの」
ホワイティはマーメを乗せて飛んでいた。魔力は問題ないマーメだが、機動力で翼を持つ魔族に遅れをとる。そこでホワイティに乗って機動力を補い、上空から戦場を見渡せる視野も手に入れたのだ。
「いや、ホワイティ、お前は良くやってくれた。お前の活躍で色々なことが解決した。例えお前自身が気付いていなくても」
「そうなの? 何でもいいわ、人参さえ貰えれば」
「帰ればいくらでもやるよ。好きなだけ食えばいい」
こいつらは功労者だ。いくらでも我儘を言う権利がある。
「レドラとマーメも何か欲しい者があれば言え。お前たちはそれだけのことをしたんだ」
「ほう、言うたな。ならば妾と今度戦ってもらおうか? テオドリック、お主はいつも実力を隠しておるように見える。その顔歪ませてやりたいものじゃ」
「俺はいつも全力だ。買いかぶり過ぎだ。だが、レドラ、お前が望むのならいつでも相手してやろう。マーメは何か望む物はないのか?」
「私は今まで通り住む場所と食べ物があればいいですわ。それに皆様と仲睦まじく過ごせれば言うことなしですわ」
「マーメ……」
これで全て解決したようだ。ラディアンス島に帰ってゆっくりできそうだ。
「テオドリック君、だったかな? 娘がいつも世話になっている」
そこには二組の男女がいた。風格がある人たちだ。恐らくレドラとマーメの両親だろう。
「こちらこそいつもレドラさんとマーメさんにはお世話になっています。テオドリックと申します。ヴォルカニアス軍ラディアンス島部隊司令官です。今回の勝利は火竜族と人魚族の助力があればこそ。感謝します」
「なあに、我らが参戦したのは領土と尊厳を取り戻すため。礼を言われる覚えはない。それに君たちが魔族を引き付けてくれたおかげで戦力が分散出来た。統率を失った魔族を打ち倒すのは容易だったのだ」
「僕たち人魚族も感謝するよ。君たち人間の力がなければ領土を取り戻すことが出来なかった。もちろん、火竜族の力もね。これで故郷に帰ることが出来る」
「良かったですね。ゆっくりされてください」
火竜族と人魚族の領土を取り戻すことが出来た。それは喜ぶべきことだ。だが、俺には気になることがある。
「レドラ、マーメ、これからどうするんだ?」
「どうするとは何じゃ?」
「ああ、そうですね……そのことを考えないといけませんでした」
マーメは気付いているようだけど、レドラはまだ戦いが終わったばかりで気にしていないようだ。
「領土を取り戻せたんだ。故郷に帰るんだろ? 王女であるお前たちが危険な隊に残る必要性は少ないからな」
「言われてもみればそうじゃな……父上と母上と暮らしたが、お主たちと離れたくないのも事実。悩ましいのう……」
「私もそうですわ。お父様とお母様と暮らしたですけれど、テオドリック様たちとの充実した日々も捨てがたいですわ。気付いてはいましたが、決断しないといけないのですね……」
こいつらのおかげで今回の戦いは勝てた。まだまだ隊にいてほしいのが本音だ。だが、こいつらにも家族がいる。どんな決断を下そうとも受け入れるしかないだろう。
「レドラ、悩む必要はないだろう。もうとっくに結論は出ているのだろう?」
「父上……」
「マーメ、自分の心に素直になりなさい。後で後悔しないようにね。君の人生は君のものだ。僕たち親のものではない。僕たちのことは気にしないでいいんだ」
「お父様……」
立派な親御さんだ。親の意見を押し付けるのでなく、子供の意思を尊重するようだ。俺も彼女たちの意向を聞き入れるだけだ。
「そうじゃな。もう妾の中で結論は出ていた。すまんがまた世話になるぞ、テオドリック。妾はお主の隊の馬鹿な雰囲気でないと生きられない体になっておったようじゃ」
「私もですわ。人魚族領での穏やかな日々も私の中で大切な想い出ですが、隊での賑やかな日々がまだまだ私には必要ですわ。テオドリック様、またよろしくお願いしますわ」
「ああ、こちらこそよろしく頼む」
「テオドリック君、娘を頼む」
「僕からも頼むよ」
「かしこまりました。責任を持って預からせていただきます」
「我儘娘で大変だろうがな」
「いえ……と言いたいところですが、正直そうですね。勉強になります」
「父上もテオドリックも何を言っているのじゃ!」
「はっはっはっ!」
これで本当に全て解決したようだ。また賑やかな日々が戻ってくる。大変だが、楽しみでもある。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます