皇帝の主治医、地方に左遷されるも、左遷先で実力主義を採用したら、帝国本部を超える部隊が出来上がっていた~左遷した上司は貴族だけど皇帝や将軍から冷遇されています~
第12話エイプリルの実力を認めさせるために
第12話エイプリルの実力を認めさせるために
「お前たちはどう思う? やりすぎたと思うか? 副隊長を辞退したいと思ったか?」
俺はエイプリルとダレンにマルコムの件を聞いてみることにした。
「自分はわかりません。隊長には隊長のお考えがあるのでしょう。ですが、副隊長の任は引き受けたいと思います。隊長の傍らでその任務を全うしていけば何か隊長のお考えがわかるかもしれませんので」
「わかった。ありがとう。エイプリルはどうだ?」
「正直スカッとしました。マルコム副隊長……って、もう副隊長じゃなかった、元副隊長を誰か懲らしめてほしいと思ってましたから。臭いし、汚いし、態度は横柄だし。私も副隊長をお受けします。今まで隊長みたいな方はこの隊にはいませんでした。テオドリック隊長がこの隊をどう変えていくのか興味があります。正直不安はありますが、そのお手伝いをしたいと思います」
「ありがとう、エイプリル。期待している。」
これで一旦体制は整った。現在俺たちは隊長室にいるのだが、俺の傍らにはオットー監査官がいる。俺はオットー監査官を二人に紹介する。
「先ほども紹介したが、オットー監査官だ。俺の職務が適正か判断するために中央から派遣されてきた。皆にも説明するが、俺たちとは所属する組織が違う。なので、戦闘には参加しないし、彼には仕事を頼んだり指図は出来ない。あくまでも監視業務だけだ。その点、気をつけてくれ」
隊に所属しないオットー監査官だが、能力を見るととても優秀だ。身体能力は平均以上だし、魔法適正も高い。何より賢さの値が87と目を見張るものがある。優秀な人間を登用すると言ったが、流石に監査官を隊に所属させるわけにはいかない。惜しい限りだ。
「オットーです。テオドリック隊長からも説明がありましたが、私はテオドリック隊長の業務を監視するためにこちらに来ました。彼の業務を厳しく監視したいと思います。彼の発言、一挙手一投足を観察して中央に報告させていただきます」
よくもぬけぬけと嘘がつける。まあ、俺もだが。オットー監査官の本来の業務は二人に黙っておくことにする。流石に真実を知ったら二人は失望するだろう。
本日最初の訓練を開始する前に、俺はラディアンス島の重要性を隊員に教えることにした。他国と国境を接していないラディアンス島は、戦闘の機会に乏しく、危機感が欠如している。
ミスティカル王国が船で南西から、エーレシア神聖国が南東から攻めてくる可能性はある。実際そういうことはあるが、頻度は少なく、迎え撃つのは南方方面軍である。ラディアンス島部隊は後方支援しかしないので、敵と戦うことはない。
俺が話していても欠伸をしている者や、心ここに在らずといった様子だ。まあ、欠伸をしている者は論外だが、心ここに在らずといった者はしょうがないだろう。マルコム副隊長の件があったのだ。俺の思惑がわからず混乱している者もいるだろう。まだ就任したばかりだ。ここはゆっくり見守っていくことにしよう。
訓練の時間だ。
「どうした? そこまでか? 次!」
ダレンが隊員たちと戦闘訓練を行っている。彼は次々と隊員たちを倒していく。ダレンの副隊長就任に戸惑う様子もあったが、隊の皆は彼の実力を認めている。ここまで実力を示せば異論はないだろう。
そして、俺の実力も見せないとな。独断で副隊長を選んだり、元副隊長を解任したんだ。口だけとは思われたくない。
「ダレン、手合わせ頼めるか?」
「かしこまりました。隊長のお力拝見したいと思っておりました。鬼神と言われたその力を」
ダレンは俺の実力を実際に見たかったのだろう。噂が一人歩きしただけの可能性もあるから。彼に失望されないよう実力を証明しよう。
「では、まいります!」
ダレンは斧使いだ。彼の攻撃を掻いくぐって俺は彼の脇腹に木剣の一撃を叩き込む。
「ぐ……」
ダレンは倒れこむ。一瞬で勝負は決まった。
「全く攻撃が見えませんでした。流石です、隊長!」
ダレンは目を輝かせながら、俺を羨望の眼差しで見つめてくる。そして、俺の腕を掴んでぶんぶんと振ってくる。実力を認められたのは嬉しいが暑苦しいな。
「おい……ダレンさんが一瞬で……」
「ああ、隊長の実力は本物みたいだな……」
隊員も俺の実力を認めてくれたようだ。俺とダレンの実力が認められたのは嬉しいが、エイプリルの実力を認めてもらわねば。
「ダレン、俺と戦かったばかりですまないが、エイプリルと戦ってくれないか?」
「構いませんが、自分とエイプリルでは勝負になりませんよ」
ダレンはエイプリルを完全に見くびっている。
「エイプリルはどうだ?」
「軍人ですから。戦闘訓練を断ることなど出来ません。胸を借りるつもりで頑張ります!」
ダレンだけでなく、隊員の皆はエイプリルのことを見くびっている。ここで活躍して皆に認めてもらうことにしよう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます