――恭一くんやで、あんたのいとこ!
はじめに出てくる母親の一言は、最後の方でももう一度出てくるのですが、そこまで読み進めた時点で頭を殴られたような気持ちになりました。
子どもの頃に両親を亡くした恭一と、家庭環境に問題があるらしき和鷹の、いとこでもあり、年の離れた友人でもあるような、けれどそれだけにしてはやさしすぎる関係の後ろにあるもの。関係性のフルコンボで胸が苦しくなります。言われてみれば、と読後に頭から読み返したくなるふたりの思い出が美しくて切ないです。
淡い薄紫色の紫陽花をきっかけに話すようになったふたりの思い出の中には、青紫のあざ、ブルーアッシュの髪の色、青色で描かれた街の絵など、静かな印象の青色が何度も繰り返し形を変えて出てきます。
意味もない嘘をたくさんつく恭一が軽い調子で語った天国と自殺についての話は、嘘ではなかったというのがやるせなく、痛みが遅れてやってくる人間について語る文の美しさに、胸が痛くなりました。
ふたりの関係性も、ラストの終わり方も、雨と青色が目の前に浮かぶような静かで美しいお話でした。
この気持ちを何と表現したらいいのか分かりませんが、とにかくぜひ読んでください!