物語の中くらい愛で全てが赦されてもいい。赦されなかったらもっといい

このお話はそんな腐血のサルヴァトーレという鬱ゲーの世界にTS転生した主人公がなんやかんやする話だ。
なんやかんやとは何かって? そりゃ原作から外れたり、起こり得る悲劇を回避しようと奔走したり……いろいろだ。そんないろいろを知りたいのなら、読んだ方がいい。

この作品はハーメルンにも掲載されており、ハーメルンの方では完結している。17万文字程度。カクヨムにいるあなたのことだから17万文字、文庫本1冊と少しくらいの文章量はすぐ読めるでしょう?
この話を50話くらいの構成で読んでみたい気持ちもあるが、番外込みで13話(ハーメルンと内容がすべて同じならば)という読みやすい長さにまとめきった作者の方の手腕を賞賛すべきだろう。おかげで非常に薦めやすい。

ただし注意点もある。主人公の楠木稚影は目的のために凄惨で、残虐で、目を逸らしたくなるような行為を幾度となく行う。主人公には高潔でいてほしい人や、グロテスクが極端に苦手な人には向かないだろう。でもだって悪役外道転生なんだからそこらへんは仕方がない。

しかし、なぜ主人公は悪役の外道と化したのか。
カクヨムのほうでは全話更新されていないので、直接的な言及は避けるものの。

愛なんですよねこれが。

物語のなかくらい、愛で全てが赦されたっていいと思うと、私は常々思っている。
現実では愛で全てが赦されることはないからだ。

ただ、現実と全てが同じ理屈とか、論理で構築される物語は不要だろう。人が物語に求めるのは現実ではなく物語だからだ。

では、愛で全てが赦されない、現実のような物語は不要か?
もちろんそんなことはない。

この腐血のサルヴァトーレには愛で全てが赦される物語にはない味がある。