第3話 深淵龍、併し龍人
鉄の神剣を処刑するかの如く落とすと、深淵の地にそびえるように突き刺さり、首は大量の鮮血と共に巨きな体から離れた。
「はぁ」と息を吐いて、ここに来てから、趣味程度で行っている魔術の創作の為に近寄ると、突如、血が龍の体に集まり始め、クリーガーは私の傍に来て、槍を構えた。恐らく十秒ほどで全ての血が集まり、球体を描いた。そして浮かび、光を得た。次第に血は魔力へと変遷し、数秒後には衝撃波を放った。私たちは防御魔術で身を何とか守ったが、大きく亀裂が入り、崩壊した。
生まれた塵煙によって人型の影しか見えず、風を吹かせて塵煙をどこかへ運ぶと、そこには長い腕をだらりと垂らして、よだれの様な物が大量に口から出ていて、体全体は真皮だけの様な状態であるからか暗赤色である。
又、背中には羽根でも生えてきそうな翼の様な物が、枯れた木の枝の様に突き出ている。背中は湾曲していて、髪は無く、眼は黄土色。さらには、十字が回転した様な光が明滅すると、一瞬で魔力の塊がやって来る。それを何とか防御魔術で防ぐと、ギリギリだったからか、少し吹き飛ばされてしまった。今ならどの様な攻撃をしても、ダメージを与えられると思われる。併し、ある程度時間が経つと、どうなるかは不明である。
深淵とは魔力の塊である。為に、魔力の有無によって肉体が大いに変わる、主に魔獣や龍なんかは、適応すれば理論上この世のものならざる存在になりうる。一例として神格。そしてこれは、龍人かと思われる。恐らく、深淵龍と呼ばれる存在だろう。
己に魔法を掛けて、左手で杖を持ち、右手は剣を握って、クリーガーと共に走った。クリーガーは右側、私は左側から。
クリーガーと共に攻撃し、肉を切り裂いたりしたが、すぐに再生する。そして、「ヴォァァァァァ」と叫び出した。すると、鎧の如き龍の鱗が隆起する様に生え始めたのだ。翼は生えていない。併し、すぐに生えて来そうである。
幾つかの魔術を放つと、龍人はそれを迎えた。併し、何事も無く翼が生えた。刹那に飛び立った。
又、十発の光が降り注いだ。クリーガーは避けきれず、肉体が消失した。もう一度顕現させるには、あと十分程が必要である。
賢王級混合魔術「万斛の焔天」《フロギストン・ルベド》を詠唱しつつ、飛んで攻撃を避け続けた。
詠唱が終わり、あとは放つだけ。併し、或る一撃を浴びて、地に墜とされてしまった。龍人が近づいて来て、魔力を溜めている様子である。このままでは死ぬ。賭けるしかない。
完全に復活しきっていないクルーガーを顕現し、攻撃させて龍人との距離を放して、クルーガーが消えた時に万斛の焔天を放つと、龍人は光を放ったが、消滅し、龍人の足が残って死んだ。刹那に足は芥となって消えた。
終
続く
一口解説
魔人・龍人
魔人は魔道士の成れの果てとも評される。常人の域を超えた魔力量、又は或る物と魔力とが坩堝と化してなる云われている。一例として、大仰な火を浴び、魔力が坩堝となって魔人になる。
龍人は魔力筋肉繊維と呼ばれる、主に魔獣や龍などが持つ特殊な筋繊維が以上に発達した事により、肉体が合理性を求めた結果龍人になると云われている。併し、火事場の馬鹿力などが起きると、龍人になる場合もある。
吹雪の国 国芳九十九 @Kabotya1219
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。吹雪の国の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます