第2話 深淵
今日、私は九歳になった。それと同時に、小型魔導杖と魔道書を渡された。魔道書には、賢王級魔術が描かれている。明日、魔力が尽きるまで魔術を使い、魔力上限の向上に向けて訓練する。
一週間後
深淵に完全に慣れると、魔力を作る臓器及び魔力を全身に送る神経、そして魔術や魔法を扱う際に使われる、魔力回路の質が向上するのだと云う。魔力濃度は濃ければ濃い程、魔術や魔法の質が安定し、その他諸々の質も上がるのだとか。
魔術は魔力が尽きるまで使えば上限の向上と、魔力を作る速度の質が上がるが、他の質は上がらぬ為、深淵のエネルギーを多量に経皮吸収する為に、今から深淵の奥深くまで行くのだと云う。
深淵への奥深くへ行くまでに、様々な物を見た。龍骨や魔力結晶や魔物の群、壊れた旧式の屋敷、魔道塔と呼ばれる建築物や深淵に適応したであろう龍。過去の大戦で生まれた遺物などがあった。
30分程歩いただろうか。すると、海へと突き出たうらさびしい、岬の様な場所に着いた。そこで師匠(エクリプス)にエストックを手渡され、腰に携えて崖の下の見ていると、「一年程度経てば迎えに行こう。死にはせんだろう。まぁ、気を付けたまえ」と云われ、蹴落とされた。
目が覚めると、そこは吐き気がするほどに鈍い空気が漂う程の場所である。クリーガーを召喚し、目を見張らせ、千里眼でも索敵するが、何も見えぬ。
気を付けながら進んでいると、突如、普段訓練している場所では見ぬ、深淵を我が物にしたかの様な魔獣が咆哮しながら走って来たのである。
私は驚き、何をすべきか、刹那にも満たぬ一瞬の間で艱苦すると、クリーガーが魔獣の左胸に槍を突き刺し、抑えながら「魔術を!! 我が抑えている間に!! 魔術を!!」そう云われ、「瑞雲の槍」《エトワール・ランス》に火力を一瞬の内に出せるだけ出し、回転を加えて加速させ、大砲の如く放つと腹を穿ち、魔獣の腹はがらんどうになったが、魔獣はそれでも止まらず、獅子奮迅の如く槍など構わず、開いた腹など構わず、私目掛けて右腕を振り回し、それが当たらぬとわかると、クリーガーの槍を握り、巨岩とて持ち上げる力を持つクリーガーの力を凌駕して槍を抜き、迫って来る。
——死ぬ。このままでは死ぬ。このままではこの骸同然の魔獣に殺される。——そう思い、火葬する勢いで、賢王級炎魔術「地獄の炎」《カルマ・オーロール》を放つと、魔獣の血肉は一瞬にして燃え尽き、骨は灰となった。そして、呼吸がいささかしづらくなりながらも呼吸を整え、クリーガーと共に進んだ。
一ヶ月が経っただろうか。現在は魔獣が掘った穴を拠点にしている。食事はここに落とされる前と同じ様に魔獣の肉を食い、風呂の代わりに水魔術を浴びて、毎日魔獣を殺す。これが最近の日課である。
深淵のエネルギーに慣れるのは存外早いもので、効果が顕著に出て来ている。
八ヶ月が経っただろうか。師匠は蹴り落とす直前に、「一年後に迎えに来る」と云っていた。その言葉が正しければ、あと三ヶ月で迎えに来てくれる、はずだ。
今日もいつも通り、魔獣を殺してその肉を食べるため、数匹の肉を取って拠点に戻った。
魔獣の肉は物によるが、基本的に硬く、焼いて食べると石の様に硬くなるため、基本的に生、又は表面を軽く焼いて食す。食べ始めた頃はあまり美味しくは感じなかったが、慣れてくると実に旨い。触感は脂身の少ないステーキ肉の様だが、うま味はどの肉も格別である。などと思い思いで食べていると、すぐそこで巨きな何かが着地でもした様な音が聞こえた。千里眼で覗くと、とてつもない速度で龍が拠点の穴に、顔を無理やり入れて私を食いたいのか、噛むような動きをしている。
クリーガーに「この龍を殺せるか?」と聞くと、「手を合わせれば可能です」と云われて、すぐさまクリーガーを顕現させた。
クリーガーは槍を龍の左の瞳に突き刺し、龍は暴れて顔を外に戻し、クリーガーは槍を手放してしまった。杖を持って外に出ると、そこには体の殆どを深淵に侵され、翼は半分程度無くなっていて、瑞雲の槍を三本放ち、体に当たったが、効いている様には見えぬ。
クリーガーは走ってジャンプし、槍を握りしめて引き抜き、赤身はあるものの随分と黒い鮮血が飛び散った。且つはその槍を力いっぱいに突き刺そうとしたが、暴れた龍によってクリーガーは地面に着地した。
龍は空気を吸い込み、口を閉じ、数秒経つと青白磁色に輝きだし、その刹那、巨きな光線状の魔力の塊がこちらに向けられたのだ。クリーガー紫電を放ちながら、槍を円を描くように回し続け、私はクリーガーに魔法を掛け、クリーガー「この攻撃が終わり次第、やつの心臓目掛けてこの槍を投げます!!」と云った。攻撃が始まり、十秒が経った頃、その光線は終わった。そして、クリーガーは剛毅果断の如く、力戦奮闘の如く、巨大な山さえも穿つ様な勢いで槍を投げた。その槍は、龍を大きくよろめかせて、龍は耳を劈く様に叫んだ。
龍は逃げ出し、私は肉体を炎に変えて、追いかけた。クリーガーもすぐに追いつき、クリーガーは槍を引き抜いて、背中に突き刺して抑えた。そして私は賢王級土派生魔術「鉄の神剣」《エクシティウム・グラディウス》を首を目掛けて落とした。
終
続く
一口解説「宗教」
帝国が始まり、ずっと皇帝崇拝。又は君主崇拝(ウィキペディアを見たものの、よくわからないため、皇帝崇拝又は君主崇拝)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます