最強の孫の再建の旅、王女を添えて

ろうこう

第1話

◯朽ちた遺跡・門前(昼)

ボロボロと朽ち果てた遺跡。至る所にヒビが入っている。

遺跡を見る人物ルクス・アフォード(16)。顔のアップ。

ルクス「ここが予言の遺跡」


◯ルクスの家・リビング(夜)

ルクスの肩を掴み、話しかけるルクスの祖母マール・アフォード(85)。

マール「ルクス、王国の端に位置する朽ち欠けの遺跡に行きなさい」

とても苦々しい表情になるルクス。

ルクス「押しが強いんだ、ばあちゃんは」

遺跡の門前には異形の存在――魔族が見張っている。その様子を伺うルクス。

ルクス「やっぱいるか」

ルクスは右手の人差し指と中指を立て、目を閉じて詠唱を始める。

ルクス「幽幻の調べ。隠密(ハイド)」

ルクスは透明になり、そのまま見張りのいる門をくぐり抜けていく。


◯朽ちた遺跡・内部廊下(昼)

外見とは対照的に整備され綺麗な廊下。

透明になったルクスと魔族がすれ違う。

ルクス「こいつらにとって重要なものか」

上から俯瞰した遺跡の地図。ルクスの通った道を示す。

分厚い扉の前に待ち伏せている魔族二体を切り伏せるルクス。チキンと剣を納める音を入れる。


◯朽ちた遺跡・内部廊下・扉の前(昼)

頑丈な作りをしていて複雑な模様が刻まれている

そっと扉に手を触れるルクス。

扉から電撃が放たれ手を退けてしまうルクス。

ルクス「魔法!?」

ドタドタと騒がしくなる。後ろを振り向くルクス。

迫ってくる魔族と剣を抜き、懐から札を取り出すルクスの顔中心のアップ。

魔族A「いたぞ! 殺せ!」

ルクス「魔族を倒す 扉の魔法も解く」「同時だ!」

扉に札をつけると来た魔族を相手にする。

ルクス「神秘の灯火」

剣の一振りで魔族を二体斬るルクス。

ルクス「破邪の雷」

空中へ跳び、剣を空に振って真下にいる魔族を薙ぎ払う。

ルクス「禊祓(イクソーシズム)」

呪文を唱え終わると扉が独りでに開き始める。

ルクス「よっし、開いた!」

しかし、一瞬光を放つと閉じ始める扉。それに驚愕するルクス。冷静に指示をする魔族。

ルクス「ざけんな!? 急げ!」

魔族B「行かすな! なんとしても殺せ!」

駆けるルクス。なんとか道を塞ごうとする魔族たち。

ルクス「どけ!」

滑り込みつつ剣を横薙ぎして道を切り開く。


◯朽ちた遺跡・扉の部屋(昼)

ほのかな光が放たれている薄暗い部屋。部屋の中心には紋様が刻まれた宝石がある。

滑り込むルクス。

後ろの閉じた扉を振り返りつつ見るルクス。

扉からは何も音がしない。

ほっと一息つくルクス。

光のある方へ振り向くルクス。

ルクス「さてさて何があるかね」

そこには裸のまま宝石に封印されている少女――ルーナリア・スルイル・セントルレイア(14)がいる。見惚れてその場に立ち尽くすルクス。

ルクス「綺麗だな…」

ハッと正気に戻るルクス。

宝石の周りをぐるぐると回るルクス。

ルクス「扉と同種の封印か?」

懐からまた札を取り出すルクス。

ルクス「神秘の灯火」「破邪の雷」「禊払(イクソーシズム)」

宝石は粉々に砕け散る。

宝石から解放されたルーナリアを抱き抱えるルクス。

ルクス「おっと」

砕け散った宝石は徐々に光を失う。

ルクス「照らせ 光源(ルミナ)」

ルクスの指から手のひらサイズの光の玉が出る。再度照らされる室内。

ルクス「うーんと」

照らされた室内で背負っていた荷物を漁るルクス。目が覚め始めるルーナリア。

ルーナリア「う〜ん」

ルクス「女性用の服なんて持ってねえよ 俺の代えの服を着てもらうしかないか?」

完全に目が覚めたルーナリア。

辺りを見渡すルーナリア。ルクスを見つける。

ルーナリアはルクスに近寄る。

ルーナリア「なにをやっているんですか?」

ルクス「うおおお!? 起きたのか!?」

振り返るルクス。キョトンとしているルーナリア。

服を押し付けるルクス。

ルクス「とりあえず、それ着てくれ!」

自分の体を見て顔を真っ赤にするルーナリア。

ルーナリア「……わかりました」

荷物を再び漁るルクス。遠くでいそいそと服を着るルーナリア。

ルクスM「魔族どもに封印されていたにしてはこれといったものは感じないな」

ルーナリア「えっと」

荷物をガサガサしながら考え込むルクス。ルクスのことを見つめるルーナリア。

ルクスM「高貴な身分? いいや、連中がそこまで考えない。 信じ難いが警戒する何かがあるんだろうな」

ルーナリア「着替え終わりましたよ?」

ハッとするルクス。

ルクス「すまん、考え事をしていた。」

ルーナリア「大丈夫ですよ」

沈黙が訪れる。ルクスとルーナリアが目を合わせている。横からのアングル。

同じ構図。

ルクス「自己紹介でもするか」

ルーナリア「そ そうですね」

ルクスの上半身のアップ。胸に握り拳を当てる。

ルクス「俺はルクス・アフォード。旅の魔剣士さ」

ルーナリアの上半身のアップ。興奮しているルーナリア。

ルーナリア「魔剣士ですか!? 珍しいんですね。」「私の知っている限りでもそう多くないんですよ!」

頭を押さえるルクス。背後に鬼の形相をしている老人二人(男女別)の姿。

ルクス「ま、まあ、どっちも実践レベルにするには死ぬほどきついからな」

剣でボコボコにされるルクス。降り注ぐ魔法を避けるルクス。それらを頭で思い浮かべるルクス。それを奥で不思議そうに見るルーナリア。

ルクスM「手加減しないんだ、あの人たちは」

ルーナリアに目線を向けるルクス。

笑顔と頭に?マークを浮かべているルーナリア。呆れるルクス。

ルクス「自己紹介しないのか?」

ハッとするルーナリア。

ルーナリアは立ち上がって服の端を持ち一礼をする

ルーナリア「封印を解いてくださってありがとうございます」「私はルーナリア・スルイル・セントルレイア 由緒正しきセントルレイア王国の第三王女です」

手前にルーナリアの後頭部。奥に顎に手を当てて考え込んでいるルクス。

ルクス「マジ?」

ルーナリア「えっと、本当ですよ?」

横からのアングル。ルクスとルーナリアが目を合わせている。

ルクス「本当に姫様?」

ルーナリア「はい」

同じ構図。

二人「………」

腕を組んで目を瞑るルクス。

ルーナリア「ど、どうしました? 何か悪いことでも?」

ルクスM「マジ! こんなところで出会えるとか、それも当時の人間! 命からがら生き延びた人の孫とかじゃない!」

目を開いて屋上を見上げるルクス。

ルクス「早急にじいちゃんたちに報告しねえとだな あの人達なら判別がつくだろ」

再び向かい合うルクスとルーナリア

ルーナリアの口のアップ。

ルーナリア「王国は…どうなりましたか?」

目線を下にするルクス。

ルクス「王族は全滅 王城は完全に魔神の手に落ちた」

ルーナリア「やっぱり…ですか」

悲しむ表情をするルーナリア。腕を組むルクス。

ルクス「そっからもう50年は経った もう当時を思い返せる人たちも少なくなってきた」

涙を流すルーナリア。

ルーナリア「あの国を覚えている人ももう少ない…か」

儚げな笑顔でルクスを見つめるルーナリア。

頭を掻きむしるルクス。

ルクス「嘆くのは別に構わないがどうすんだ? この状況」

泣きながらもルクスを見つめるルーナリア。

ルーナリア「わかり…ません」

後ろの扉からドンドンと音がする。

立ち上がるルクスとルーナリア。ルクスは荷物を腰につけて。二人とも背中を見せる。

ルクス「とりあえず 魔族どもが来るみたいだから 抜けるぞ」

ルーナリア「あ… わかりました」

自分の背中を指差すルクス。

ルクス「背負う 乗れ」

ルーナリアは背中に捕まる。

ルクスとルーナリアだけの立ち絵。

ルクス「最速で突破するからな! 荒いが振り落とされるなよ!」

ルーナリア「え?」

揺れる扉のアップ。

片手に剣を持ち、走る体制をとるルクス。

扉が開き、魔族が飛び出す。ルクスが飛び出す。同じコマで。

フラッシュ。

魔族が体を両断される。ルクスは剣を振り抜いた後。ルクスの存在感を強めに。


朽ちた遺跡・遺跡内部(昼)

魔族を斬りながら走るルクス。

ルクス「王女様!」

ルーナリア「なんですか!?」

走るルクス。下からのアングル。

ルクス「やりたいことがわかんねんなら 一度俺の家に来ないか?」

ルーナリア「え…?」

壁を使い三角跳びをするルクス。壁に跳ぶ時に一体、壁で跳ぶ時にもう一体を倒す。二体目はルクスたちが小さめで。

奥に大量の魔族。手前のルクスはもう一度跳ぼうとする。

魔族「もう逃がさないぞ!」

魔族「おとなしく王女を渡せ!」

笑みを浮かべるルクスの顔のアップ。

ルクス「せっかく見つけた希望だ!」「お前らなんかに渡すわけねえだろ!」

天井スレスレに跳ぶルクス。下に魔族たちが上を見上げながら各々武器を持っている。

ルーナリアM「希望…」

一体の魔族を縦に斬るルクス。

ルーナリアM「何もできていないのに」

魔族の斧の攻撃を剣で受け止めながら手を前に突き出すルクス。

ルクス「火砲(フレア)」

ルーナリアM「誰かがいないと何もできない」

前方に火炎放射しながら斧を弾き返すルクス。

ルクス「数だけ多い奴らめ」

ルクスは剣を両手に持ち横薙ぎをする。

周囲にいた魔族は上半身と下半身が分かれている。中心に剣を振るった後のルクス。上からのアングル。

ルクスM「急がないとな 仮にあいつらがいれば面倒だ」

疾走をするルクス。


◯朽ちた遺跡・入り口前(夕方)

オレンジの陽光が入り口から差し込む。それに向かって走るルクス。後ろから。

足を止めるルクス。足が動く→止まるまで数コマ。

光の中に複数の黒い影が映る。

ルクスの顔を覗き込むルーナリア。横からのアングル。

ルーナリア「…? どうかしました?」

ルクス「ああ 面倒な奴らがきた」

ドシン、ドシンと歩いている影たち。

唾を飲むルーナリア。

魔族の姿がはっきりと見える。

魔族C「ここで貴様らを捕える」

魔族D「我ら上級魔族から逃げられると思うな」

魔族たちがエネルギーを身に纏う。ドラゴンボールみたいに

テロップ「魔族には魔力の質で最下級、下級、中級、上級、最上級の区分がある」

風が巻き起こる。それを全身に浴びるルクス。

テロップ「そして 上級以上の魔族はとある技術を使うことができる」

ルクス「初めて見るな」

魔族たちの体が黒くなる

テロップ「あらゆる攻撃に対する耐性を有する その名も」

魔族D「暗黒纏衣(くらやみまとい)…!」

ルーナリアを床に置き、剣を構えるルクス。

ルクスが詠唱する。ルーナリアが結界に包まれる。

ルクス「防御・結界(ディフェンド・バリア)」「ここで待ってろ」

剣と斧がぶつかり合う。火花が散る。

ルクスの後ろに武器を振るおうとしている魔族が現れる。

ルクスは横に跳び。攻撃を避ける。

激しい戦闘を見るルーナリア。

ルーナリアM「守られるだけ」

魔法を使うルクス。

ルーナリアM「あの時と一緒」


◯セントルレイア王国王城・謁見場(夜)

多くの兵士の死体が散乱している。大柄な甲冑の男性――マルクス・アフォード(36)と荘厳なロープを着た女性――マール・エクリシア(35)が背後を庇いながら前を見据える。

マルクスの倍ほどの体躯をした顔を隠した男――魔神が近づく。

魔神「我の部下をここまで倒すとは やはり人間も舐めたものではないな」

マルクスとマールの顔のアップ。

マルクス「ここは私たちが止めます。 マール 転移の準備を」

マール「わかったわ 長距離転移を使うから しっかり時間を稼ぎなさいよ」

マールは地面に杖をつく。下に魔法陣。マルクスは魔神に向かって飛び出す。

魔神「理解に苦しむ 我に逆らわねば 配下にしようというのに」

マルクス「俺の主はダイライド様だけだ!」

小声で詠唱を唱えるマール。

マルクスと魔神の戦闘を数コマ描く。

背後を振り向くマール。

マール「これで完成す…」

魔神の顔のアップ。

魔神「ぬん」

魔神を中心に衝撃波が発生。

マルクスは壁まで吹き飛ばされる。マールと背後の人物たちは床に転がる。

魔神「余興はこれで終わりだ」

魔神はマールの背後にいた人物を斬り殺す。

ルーナリアを刺そうとする魔神。

ルーナリアが光の結界でそれを防ぐ。

地面に倒れ伏すマール

マール「なんて強い聖なる力…」

真顔の魔神のアップ。

魔神「忌々しい聖神め」

ルーナリアにドス黒いエネルギーを注ぎ込む魔神。

宝石に封印される。ルーナリア

上下が分かれた男性――ダイライド・スルイル・セントルレイアのアップ

ダイライド「マール マルクス 娘を頼む」

目から正気を失うダイライド。

マールは立ち上がり、詠唱する。

マール「転移(テレポート!)」

視界が閉じる。光に包まれるマールとマルクス。


◯朽ちた遺跡・入り口前(夕方)

剣と斧がぶつかり合う。剣が折れる。

後ろに跳ぶルクス。

向かい合う魔族とルクス。

魔族「ここで諦めたらどうだ」

魔族「お前だけなら見逃してやろう」

魔族「王女だけは渡してもらうがな」

ニヤニヤと笑う魔族たち。

ルーナリアが座り込んでいる。

ルーナリア「ルクス 私はもういいから逃げて」

ルクスが目が見えない感じになって立っている。

ルクス「王女様 俺があんたをここまでつれてきたのは打算しかねえ」

ルーナリアの顔のアップ。

ルーナリア「え?」

頭を掻きむしるルクス。

ルクス「そんな聖人な人間じゃねえし 打算くらいはある」

真顔になるルクス。

ルクス「でもな 利用してやろうとかではねえ」

ルクスの背中にマルクスとマールの背中を重ねる。

ルクス「俺はあの二人の…」

左手に剣を抜き、右手には魔法を構えるルクス。

ルクス「セントルレイア最強の二人の孫だからなぁ!」

駆け出すルクス。

ルクス「じいちゃんもばあちゃんも王国に仕えたからな」

魔法を前方に放つルクス。

武器を構える魔族。

ルクス「あんた置いて行ったら合わせる顔がねえし!」

剣を振るうルクス。

魔族の武器が壊れる。

ルクス「俺は正式な騎士じゃねえけど 王女様を守るエセ騎士になってみようって思っただけだ!」

ボケっとするルーナリア。

ルーナリア「あなたがあの人たちの孫なら」

前を向くルーナリア。

ルーナリア「ここは信じてみたい」

三対一で斬り合うルクス。

ルーナリア「ルクス! これを」

剣に光が宿る。

ルーナリア「闇を退ける聖神の力 それで剥がせるはず」

剣を振るうルクス。魔族の一体がバラバラになる。

笑みを深めるルクス。

ルクス「これはいいな」

怯える魔族。チラリとルクスの剣が映る。

ルクス「付呪・雷光(エンチャント・サンダー)」

光と雷を纏う剣を振るルクス。

閃光に飲まれる魔族たち。


◯朽ちた遺跡・遺跡外(夕方)

電気がパチパチしながら焦げている地面。

ルーナリアを背負って歩くルクス。

ルクス「これからよろしくな 王女さん」

ルーナリア「こちらこそお願いします」



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

最強の孫の再建の旅、王女を添えて ろうこう @mayaten2

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る