第16話 編集後記


この物語を完成させるためには、長い月日を費やしました。多くの人々の支援があったからこそです。

決して一人で作り上げたわけではありません。

作業所の支援員や友人、ホンポートや新津図書館の学芸員、親戚、病院のスタッフ、近所の人々、そして最大の理解者である父の助けがありました。


私は貧しい家庭で育ち、玩具をたくさん買ってもらった記憶はありません。学校の図書室で「怪人二十面相」や「アルセーヌ・ルパン」を読むことが多かったです。

そのおかげで、少し変わった人間になったかもしれません。


自我が芽生え始めた頃、母は緑のハードカバーの「坊ちゃん」や「三四郎」、「二十四の瞳」を読み聞かせてくれました。

しかし、私には他の人とは違う点があります。精神障害の他に、身体的な欠損(内部障害)があるのです。それが原因で、子供の頃から母とは対立していました。

母は私の病気について何も教えてくれませんでした。病気に逃げ込むことでろくな人間にならないという、不公平な考えからでした。

成人して社会に出た時、内部障害を隠すことができず、多くの恥ずかしい思いをしました。

それにより、自分を責め、周囲を恨み、精神障害者になりました。

母は間違っていました。病気を理解し、受け入れなければなりません。


しかし、精神障害者になった後、母は交通事故で亡くなりました。

苦しみを訴える相手を失い、苦しみを訴えることが怖くなりました。

まるで、母に向けていた刃が自分に向けられたような、死にたいほどの苦しみでした。


そんな時、作業所のアルバイトの若い女性がくれた愛と、本の存在が支えとなりました。戦争、宗教、生態学、お金、侍、心理学に関する本に夢中になりました。

本を読むうちに、作業所の日常について創作小説を書きたいと思うようになりました。

幻聴に苦しみながらも、本を読むことに集中しました。


幻聴との戦いに疲れ果て、運動する気力もなくなりました。

できることは、ただ鉛筆を握ることだけでした。


それから16年間、鉛筆を握り続け、文章力を磨き、ついに本を完成させました。何かに秀でれば、誰かが見つけてくれると信じて頑張りました。

旅行もせず、遊びもせず、賭け事もせず、少しの酒とタバコで生きてきました。

それは、とてもつまらない人生でした。


今は、実家から独立し、アパートで暮らしています。生活は苦しいですが、父からの援助を受けるようになりました。

それは、とてもありがたいことです。


若い頃の苦労が、今、報われようとしています。

小説を完成させたことで、他人には理解できない安堵感を得ました。


これからも、文章を書き続け、作品を完成させ、多くの関所を越えていきたいと思います。

将来のことは分かりませんが、世の中に興味を持ち、挑戦していきたいです。

最後に、これまで優しく接してくれた多くの人々に、心からの感謝を伝えたいと思います。


では、縁があれば、また会いましょう。

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作業所「おとめさん」 あらいぐまさん @yokocyan-26

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