盗賊が一目ぼれした件について
シロクマくん
一目惚れした件について
俺の名前はロイドだ。本当は俺だって盗賊なんてしたくはなかったんだ。でも、国で戦争が始まって主に魔物をかる専門の冒険者も招集されることになった。
俺は冒険者でそれなりのランクだったけど、戦争なんて絶対に嫌だった。貴族どもの踏み台にされていいようにこき使われるのが目に見えていたからだ。
俺は自分でも情けないと思いつつ逃げた。冒険者をやろうにもギルドは国の管轄だから仕事はできない。国外に逃げようにも、戦争をやる国だ。国内の人民という戦力を簡単に逃すようなことはしない。関所はガチガチに固められていて街間の移動すら商人じゃないとままならない。
国の比較的内側にいたこともさらに運が悪かった。このまま逃げてもいつか路銀がなくなって死ぬのは目に見えていた。だから似たような境遇の奴ら集めて盗賊で徒党を組んで荷馬車を襲うことにした。
俺等も人は襲うことはしなかった。荷馬車だけを略奪してあとは街に返したんだ。でも、そんなこと奪われた方は知ったこちゃない。街の兵士やらが俺たちを追い詰めて行くうちに、いつしか人の命を奪わないなどときれい事を言わなくなっていた。あと少しで道を踏み外しそうなそんなときだった。あの女性にあったのは。
その女性は街道の商人の荷馬車にのっていた。正直、不用心だと思った。この世の中に商人が付き添いで護衛も商人につけているとはいえ、襲われる可能性は大いにあるだろう。
仲間たちも普段なら護衛付きの馬車など、リスクを考えて襲わない。しかし、女がいるとなれば違ったようだ。なにせ、盗賊になってから少なくとも3ヶ月は女の顔すらみていない。まあ、溜まっていたんだろう。俺は当然止めたさ。でも、奴らは止まらなかった。
「ロイド、今さらそんな舐めたこと言ってんじゃねーよ。もう限界なんだよ。やるしかないんだよ。お前だって女を抱きたいだろ??」
そうだ。そうだ。仲間たちも同調し始めもはやどうしようもなかった。
馬車が近づいてくるに連れて、女の顔が確認できるようになった。頭が真っ白になって次第に体温も急上昇したように感じた。正直、一目惚れだった。盗賊が何言ってんだと思われるかもしれないがしちまったもんはしょうがない。
さっきは仲間を止めた分際で自分のものにしたくてしょうがない。しかし、今仲間に襲われ汚されようとしているのだ。
(どうする。どうする。どうする。どうする。どうする。)
学のない足りない頭を使って必死に考えたさ。俺は残酷なことを考えついてしまった。仲間に襲わせて、彼女が襲われそうなところを他の仲間を殺して助ければいい。そうすればすべてうまく行く。そんな考えをしてしまった。俺はあの女性を救うだけだ。そんな、偽善的な考えで決断をしたのだ。
ついに、仲間たちが待ち構えた場所に馬車は通過して襲った。あっという間だった。護衛は一瞬で不意を突かれたのもあり絶命、商人もすぐに殺して、女を説き伏せた。
「お前たちが悪いんだ。せっかく命だけは助けてもすぐに兵をよこしやがる。おれたちの温情をなんだと思ってやがる。」
完全な逆ギレだ。と同時にこんなクズどもなら元仲間でもやってしまっていいだろうなとと思ってしまう。
覚悟を決め、女に夢中になっている仲間たちに襲いかかり、3人は一瞬で殺した。
「ちょ、おまえ!」「やめろっ!」
残りの2人も何か言おうとしたが、いらないことを言う前に首を切り落とした。
女は怯え固まっていたが、優しく声をかけることにした。
「お嬢さん。大丈夫ですか。偶然通りすがったものですから。つい体が動いてしまいました。」
そんなわけないだろうってたぶんと思っているだろうが、今、俺を敵に回せばまた同じ目に遭うのかもしれないと考えたのか「ありがとうございます」と素直にお礼を言ってきた。
近くに隠れ家にしている家があったので一度そこに着て休むと言いとお誘いした。
もちろん断られたが、このあと目的地までの危険を力説してどうにか来てもらえることになった。
その後も、何度も帰ろうとしたが、「情勢が安定するまでいるといい」と言って強引にとどめた。これで、留まってくれるんだからこの子は押しに弱いんだろう。
その間に、何度も口説き何度も断られたが、やっと口説きおとした。彼女もあの盗賊共と何か俺があったことは気づいているのかもしれない。だが、彼女の内心なんてどうでもいいのだ。だって、彼女は私を受け入れてくれたのだから。
盗賊時代に隠れてためた資金を元手に自由に暮らそう。戦争から逃げて何もかも失ったけど、今は彼女が隣に居てくれるんだから幸せだ。
彼女がただの演出された救出劇を信じていようといなかろうと。
盗賊が一目ぼれした件について シロクマくん @sugarrr2
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