第11話 希望

 達子と健文に可愛い娘と息子が生まれた。ただ、普通の子どもと違っていた。まあ、達子と健文の子どもだから、当たり前と言えば当たり前なのだが。

 小学6年生と4年生になった、ある日、娘と息子は「総理に会いたい。」と言った。

達子と健文は顔を見合わせた。私達の子どもだから、「本気なんだろうね。」と思った。「何を話すの?」と聞いたが、「総理に会ってから話す。」と言い返されてしまった。

 育明は、「達子と健文の子どもだから、まあ、あり得るよな。」と、笑いながら、総理との面会をセットした。

 内閣総理大臣、住忠茂治(すみただ しげはる)は、しぶしぶなのか、それとも達子と健文の子どもだから会ってあげようとしてくれたのか、『その時』は4月1日のエープリールフールだった。達子の脳裏に、あの日の記憶がよみがえった、「皆が命がけで頑張ってくれた。私はなんて幸せなんだろう。」。

 面会が始まった。娘が「総理を国民投票で決めましょう!」と言い、息子が「これが貴方の公約です。これを今日中に覚えてください。」と言って、公約10か条とその説明が書かれた書類を総理に渡した。娘は言った、「明日、記者会見しましょう。」。2人は真剣だった。総理はぶっ飛んだ。その書類は、予算の公明正大で迅速な決め方、無駄のない使い方など、国民にとってどんな政治が必要なのかを明確化したものだった。なぜ、今までこんなことができなかったのか、どうしたらできるのかが誰でも理解できるように道筋が明らかになっていた。総理は、素晴らしい政策提案に驚き、血の気が引いた。しかし、『どうせ、親が教えたに違いない。』と思って、達子と健文を見ると『何も知らないよ。』という涼しい顔をしていた。「本当に子供がこの政策集を作ったのか? 親が親なら子も子だな。世界を動かす親に、まずは日本を動かそうとする子供達。派閥政治で党を取り仕切って行くには限界がある。私が総理を続けるには、良いチャンスかもしれない。」。総理の脳裏に浮かんだ映像は、3年前、一衆議院議員だった住忠茂治が「総理になりたいです。」と達子に頼んだ瞬間に、公約10か条とその説明が書かれた書類を渡された記憶だった、『あの時と同じだ。私の考えは見透かされている、のではなく、私を導いている!』。

 育明は思った、『総理も総理か。子供の提案に乗る総理。金権政治にうつつを抜かす総理よりずっといいかもしれない。この子達が打ち出す政策で日本が良い方向に変わって行く様子をぜひとも見たいな。私は達子と健文に手一杯だから、この子達の専属の秘書を任命しよう。誰がいいかなあ。そうだ、彼女ならやれるんじゃないかあ。これは楽しみだ。ただ、彼女の彼氏になる人は大変だろなあ。彼女はハッカーだから、彼氏の電話やメールは全て彼女に知られてしまうからな。』と、余分なことまで妄想していた。


 達子と健文は星を見ながら、話し合った、「私達の子供達を誇りに思う。人類の宝だ。自由に守り育てよう。」。

 達子は思った、「この子達なら、全次元システムの重責を引き継げられるかもしれない。3.5次元世界を守るためには全次元システムが必要なこと、次元間の移動方法、無限のイメージと無限の意識がつながった素晴らしい8次元世界が存在すること、教えることがいっぱいある。『高次元世界』に興味を持って、自分達から聞いてくるまで、『今』は、そっと見守ろう。周りに協力者が集まるように。」。達子に穏やかな笑みが漂い、美しく光り輝くオーラが全身から世界へ広がって行った。達子の愛が世界中の人々を包み込むように。

 一瞬、全天の星がパノラマ映像のように美しいスペクトルで輝いた。

 達子の脳裏に、新たな別次元の扉が開こうとしていた、「愛情と喜びの世界を皆で創り上げていくために、人類は進化するべきだ。そして、人類はその先に進まなければいけない、『人類とは何か、どんな目的のために生まれて来たのか、何を目標とすればよいのか?』という問いに答えられる世界へ。」。

 達子のオーラが全天の星のスペクトルとつながり、達子は優しく力強いメッセージを受け取った、『先に進みなさい!』。


(この物語はフィクションです。実在の人物、団体、施設、建物等とは関係ありません。)

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次元のパノラマ ギフテッド達子 2 望豊多朗 @asuharedaro

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