船出のち暗雲Ⅲ

何となく感じる罪悪感で俯きながらため息を吐いていると、太陽の光を受けて星のように光る青い海が目に入った。

白いカンヴァスをただ見ているよりは有意義な時間だなと気を取り直していると葵がこちらに向かってきた。


「七星、島が見えてきたわよ!」


葵と連れ立って、デッキの先端にいた辰巳の方へ向かっていると、霧がでてきた。


「おーい、島が見えてきたぞ!」


辰巳の声は聞こえたが薄らとした霧がベールのように動き姿を隠している。


「あれだよ、親父の故郷!『比丘尼びくに島』だ!」


興奮して船の前に身を乗り出していた辰巳に、葵が怒っている姿にも目もくれずに、私は辰巳が指をさす先を凝視した。


まさかあれが?

目でもおかしくなったんじゃないかと疑うが見たものは現実の島だ。ゆっくり深呼吸し目を開ける。

しかし見たものは変わらなかった。


霧に包まれたその島は真っ青だったのだ。


海と一体化するほどの青と、波打つ白い筋を持つ島は非現実的で白昼夢を見ているようだった。


よく見たくて霧がかったなか目を凝らすと、見える範囲の全ての建物が青く染められていた。それが原因で島が青く見えたのだ。

波打つ白い筋は道だろうか?



この旅行は来て正解だったようだ、まだ島に降り立ってもいないがそう思わせる何かがこの景色にはあった。

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泡沫に囚われる ArY @meizen

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