ずるずる

エピローグ

エピローグ

　──なあ晴人、Ｔ町に幽霊屋敷あるだろ？

　え？　知らない？

　そうか、お前地方出身だもんな。

　Ｔ町の駅からニュータウンの方に向かうバスに乗るとさ、途中、小さい山みたいなとこのてっぺんにマンションあるだろ？

そこ、マンションが建つ前には映画のセットみたいな洋館が建ってたんだよ。

　でな、噂によると、確か五十年くらい前、そこに金持ちの家族が住んでたんだって。二人は、特に妻の方は子供が欲しくて仕方なかったらしいんだけど、まあなんだ、どっちが原因かは知らんが、金も時間もかけてもどうしても出来なかったんだと。そのせいで妻の方がおかしくなっちゃったんだ。人形に、まるで自分の子供かの様に話しかけたり、お乳をあげたり……。夫はもちろんどうにかしようとした。医者に診せたり、薬を飲ませてみたりな。でも、ダメだった。結局、妻は首を吊って自殺してしまったんだ。

　──いやいや、話はこれで終わりじゃないんだよ。

　その後、夫はその屋敷から引っ越して行ったんだが……、残ったんだよ。そう、妻の幽霊がさ。それでその屋敷はこの辺では有名な幽霊屋敷となったんだ。もちろん封鎖されてたんだけど、子供が忍び込んだりしてさ。心霊スポットというか、肝試しの定番スポットみたいになったんだよ。

　で、今から二十年前。俺の一回り上くらいの世代かな？　まあ例の如く子供達が肝試しに忍び込んだんだよ。それでそのうちの一人が……、死んだんだ。

　殺されたんだよ、妻の幽霊にさ！

　最初は行方不明事件として警察が捜査したんだけど……、いや、これはマジな話ね。ニュースにもなってたからね。

　え？　まあそりゃあさ……、俺は赤ん坊だったから覚えちゃいないけど……。でも事件があったのはマジだから。

　で、その後。表向きは子供が見つかったって発表されたんだけど、実際には見つかってなかったんだ。何でって？　そりゃあ、まあ……、何か見つからなかったって言えない事情があったんだろうよ。

　良いんだよ、細かい事はさ！

　でな、事件を受けて、危険だからってさ、屋敷は取り壊されたんだ。その後、しばらくは空き地になってたんだけど、十年前に今あるマンションが建ったんだ。

　そこにさ……、出るんだよ。

　何がって？

　そりゃ幽霊に決まってんだろ？　あのさあ、話の流れでわかるだろうよ。

　え？　で、どうやって化けて出るんだって？

　せっかちな奴だな……、あ、お前、実はビビってんだろ？

　あのな、よく聞けよ。しかも化けて出る幽霊は一体じゃないんだ。

　まずは女の霊だ。もちろん、あの気が触れた妻の霊だよ。それがさ「私の子供を知りませんか？」って、夜中廊下を徘徊するんだと。めちゃくちゃ怖いよな。

　でもこれだけじゃないんだ。

　──正解。そう、子供の幽霊も出るんだ。

「帰りたい……、お家に帰りたいよ……」ってさ。

　なあ、今から見に行ってみないか？

　なあ、良いだろ？

　なあ────。